インド警察がカシミール地方でVPNを使った数百人の捜査を開始

インドが実効支配するカシミール地方の地元警察は、紛争が続くヒマラヤ地域でのソーシャルメディアの使用禁止措置を回避するために仮想プライベートネットワーク(VPN)を使った人たち数百人に対して捜査を開始した。この禁止措置は、人権やプライバシーを擁護する活動家たちから非難を浴びている。

スリナガル州警察サイバー部門を率いるTahir Ashraf(タヒール・アシュラフ)氏は、2月13日に警察当局はソーシャルメディアを悪用し「非合法活動と分離独立主義の思想」を宣伝した容疑者数百名をすでに特定し調査していると述べた。

2月17日、警察はインドのテロ対策法である違法活動防止法()のもとで「有罪を立証できる材料を数多く」押収したと述べた。この法律に違反した者は最高7年の懲役となる。

「ソーシャルメディアの悪用を深刻にとらえ、分離独立思想の宣伝や違法活動の扇動のために悪質な人間がソーシャルメディア・サイトを悪用しているという通報が絶え間なく届いています」と地元警察は声明の中で述べている。

この動きは、インド政府がAmazon IndiaやFlipkartなどのショッピングサイトを含む数百のサイトのブロックを解除した数週間後に始まった。Facebook、Twitterなどソーシャルメディア・サービスはいまだにアクセスできず、モバイル通信のデータ速度も2Gに制限されている。

あるアナリストの調査によれば、ブロックが解除されたサイトは301件中126件だが、「ある程度」しか使えないとのこと。ソーシャルメディアの検閲を回避してニュースサイトを見るために、700万人以上が暮らすこの紛争地帯の多くの人たちは、VPNサービスを使い始めたのだ。

インド政府は、カシミール地方の半自治権を取り消した2019年8月の頭から、ジャンムーとカシミールでインターネットへのアクセスを遮断した。この措置は、当地区の治安を維持するための正当なものだとインド政府は主張している。その数カ月後、無期限のインターネット遮断を広い範囲に強いている政府に対してインドの最高裁判所は苦言を呈した。

「政府は、その地域からどのような情報が発信されるかを、ほぼ完全にコントロールしています」と、人権擁護団体アムネスティ・インターナショナル・インド事務局長Avinash Kumar(アビナシュ・クマール)氏は言う。

「政府には国の法と秩序を守る責務がありますが、あいまいで漠然とした申し出をUAPAのようなテロ対策法を根拠に捜査したり、ソーシャルメディア・サイトをブロックすることでは解決になりません。インド政府に必要なのは、まず人権を重視し、カシミールの人々に自由に発言させることです」と彼は政府に促した。

ニューデリーを拠点とするソフトウェア・法律・自由センターの事務局長Mishi Choudhary(ミシ・チョードリー)氏は、当局はVNPを使った人を追いかける必要などなく、他のすべての民主的社会と同じようにインターネットを解禁すべきだと語っている。

「疑わしい噂には、同じソーシャルメディア・プラットフォームで正確な情報を数多く提供することで対処できます。内容に基づく発言の制限は、憲法で定められた制限の範囲内でのみ許されるものであり、その場しのぎで行われるべきではありません」と彼女は言う。

画像クレジット:Waseem Andrabi / Hindustan Times / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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