インド通信大手AirtelがAxis Bankと提携クレジットカードの提供開始

Airtel(エアテル)はインド時間3月7日、クレジットカードの発行を開始すると発表した。これは、Google(グーグル)が投資するインドのテレコム事業者である同社が、世界2位のインターネット市場で提供するサービスを拡大するために、金融サービスへの進出を試みる最新の試みだ。

ビリオネアのSunil Mittal(スニル・ミタル)氏が経営する同ネットワークは、国内3位の民間銀行であるAxis Bank(アクシス銀行)と戦略的パートナーシップを結び、両社が「これまでに例のない試み」と謳うクレジットカードを共同発行すると発表した。

Airtel Axis Bankクレジットカードは、事前承認済みの即日融資やBNPL後払いサービスを顧客に提供し、Airtelサービスの請求書の支払いや、Airtelアプリでの取引に対してリワードを与えると両社は述べている。

このカードはAirtelの加入者のみに提供され、インドの小規模な市町村の顧客にリーチすることを目指しているとのこと。Airtelは、インドで3億4千万人以上の加入者を集めている。

このパートナーシップの一環として、Axis BankはAirtelのC-PaaSプラットフォーム(ストリーミング、通話マスキング、コンタクトセンターソリューションなどのサービスを含む製品スイート)、さらに「さまざまな」サイバーセキュリティサービスを利用開始する予定だという。また、両社はクラウドやデータセンターサービスでの協業も検討するとのこと。

Airtelが金融サービスへの参入を試みるのは今回が初めてではない。この急成長分野にはライバルの大富豪Mukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏のJio Platformsも注目し、同レベルの成功を収めたことがある。

Airtelはデジタル決済銀行を運営しているが、なかなか市場に浸透していない。同社は近年、ARPU(ユーザー1人当たりの平均売上高)を改善するためにプレミアムサービスの拡大も推し進めており、この件に詳しい3人の関係者によると、2年前にPaytm(ペイティーエム)に決済事業の売却を持ちかけたという。

インドのクレジットカード市場は、深刻なレベルでサービスが行き届いていない。同国には10億近い銀行口座が存在するにもかかわらず、クレジットカードを持つインド人は3000万人にも満たない。

Tiger Global(タイガー・グローバル)が支援するSlice(スライス)やSequoia Capital India(セコイアキャピタル・インド)が支援するOneCard(ワンカード)など数多くのスタートアップが、インドでより多くの人にクレジットカード機能を提供しようと試みている。Flipkart(フリップカート)やAmazon(アマゾン)、そしてライドヘイリングのスタートアップOlaなど多くの大企業も、それぞれの顧客向けに提携クレジットカードを立ち上げている。ちなみに2022年2月にTechCrunchが報じたように、OneCardは、シンガポールのTemasekから、プネに本社を置く同スタートアップの評価額が10億ドル(約1153億円)以上になると思われるラウンドで資金調達の交渉中であるとされる。

フィンテックのベテラン経営者であるHimanshu Gupta(ヒマンシュ・グプタ)氏はこう述べている。「このようなクレジットカードでの提携は、基本的にパートナーの流通を活用するもので、この場合、Airtelがそれにあたります。Airtelは大規模なプレミアムユーザーベースを抱えており、Viのシェア低下により、その力はさらに強まっています」。

「ユーザーがカードを取得した後、他の場所での買い物のほとんどをこの方法で支払うようになれば、インターチェンジや延滞料からも収益を上げる機会があります。ですから、これは成功する提携カードになると期待できます」。

しかし、その成功のためには、いくつかの課題に対処する必要があると彼はいう。

「Airtel-Axisのような銀行提携クレジットカードの課題は、銀行のクレジットカードスタックが比較的古く、若い世代のニーズにはあまり柔軟でないことです。また、Airtelは大きなユーザーベースを持っていますが、ほとんどのユーザーは3カ月に一度、プリペイドチャージをするためにAirtel Thanksアプリを利用していると思われるので、ユーザーの生活における表面積は非常に限られています」。

「そのため、現実には、Airtelがそのような商品をクロスセルする機会は限られています。最近の新しいフィンテックカードのスタートアップは、より消費者のニーズに合った製品を作ることができ、一般的に銀行やテレコム事業者が得意でないユーザー獲得のために、よりスマートなマーケティングを使うことができます」。

7日の発表は、Googleが2022年初めに、Airtelに10億ドル(約1153億円)もの投資を行い、キャリアである後者と協力して「革新的なアフォーダビリティプログラム」を開発し、スマートフォンメーカーとの提携を模索し、安価な携帯電話を生産するとした発表に続くものだ。

Bharti Airtel(インド・南アジア)の社長兼CEOであるGopal Vittal(ゴパール・ヴィッタル)氏は声明の中でこう述べた。「Airtelは、ワールドクラスのデジタルサービスを顧客に提供する努力の一環として、強力な金融サービスポートフォリオを構築しています」。

このエキサイティングな旅でAxis Bankと力を合わせることができ、大変うれしく思っています。このウィンウィンのテレコム事業者と銀行の提携により、Airtelのお客様はAxis Bankのワールドクラスの金融サービスポートフォリオと限定特典を利用でき、Axis BankはAirtelの強力なデジタル機能と深い販売網から利益を得ることができます」。

画像クレジット:Debarchan Chatterjee / NurPhoto / Getty Images

原文へ

(文:Manish Singh、翻訳:Den Nakano)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。