ウェディング情報アプリ運営のオリジナルライフが1.2億円調達、花嫁と共同で商品プロデュースも

結婚準備に関する情報を集めたソーシャルニュースアプリ「ウェディングニュース」を提供するオリジナルライフは1月18日、ベクトルファンコミュニケーションズ、個人投資家の千葉功太郎氏を引受先とした第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は1.2億円だ。また、グノシーやマネーフォワードなどのUIデザインを手がけた経歴をもつ貫井信隆氏が新たにCDO(最高デジタル責任者)に就任した。

ウェディングニュースは、結婚を決めたカップル向けに結婚式の準備やウェディングドレスなどの情報を提供するニュースアプリだ。同社は特に需要が高いと思われるトピックについては独自のコンテンツ制作も行うが、基本的には他社のメディアの記事を1か所に集めるという「NewsPicks」のようなモデルを採用している。

MAUなどの数字は非公開ということだが、ユーザーがアプリを利用する時間は月間平均で62分だという。また、ウェディング関連の情報は写真をベースにしたものが多いためにFacebookやTwitterよりもInstagramで拡散する例が多いというが、ウェディングニュースはこのInstagramでのフォロワー数を11万人にまで増やしている。

ところで、結婚関連のニュースアプリを手がけるオリジナルライフは、「消費者ジャーナリズムで産業の進化に貢献する」というミッションを掲げている。これは何か言うと、ニュースサイトの運営によって汲みとった顧客のニーズ(どんな記事が読まれているか、どんな商品に注目が集まっているのかなど)をウェディング業界にフィードバックすることで、産業の進化を促進しようというものだ。

そのため、結婚式を間近に控えている花嫁や式を終えたばかりの花嫁を約1000人集め、毎月1つのテーマでアンケートを集計しているという。最近では、そうした花嫁たちの意見を取り入れたウェディングドレスを共同でプロデュースするなどの実績があるようだ。

オリジナルライフ代表取締役の榎本純氏は、「暮らしの手帖社が発行する『暮らしの手帖』では以前、市販のベビーカーに赤ちゃんの重さのおもしをのせ、実際に100キロメートルの街道を走らせて耐久性をチェックするという商品テスト企画を行なっていた。電動ベルトを走らせるというテストしか行っていなかったメーカーは暮しの手帖の商品テストの結果に驚き、その後のベビーカーの性能向上に役立ったという例もある。そのように、消費者を巻き込んだフィードバックによってウェディング業界の進化の手助けがしたい」と語る。

結婚式は多くの人にとって(願わくば)一生に1回の大イベントだ。実際に数百万円規模の金額を支払う消費者にとって、経験者である先輩花嫁の声は貴重な情報元だ。だからこそ、そういった声を盛り込んだフィードバックは業界全体を良い方向に変えていく影響力を持つものだろう。

ただ、その“一生に1回”という特徴がビジネス的には足かせになってしまう可能性もある。一旦結婚してしまえば、花嫁たちがウェディングニュースを使う意味もなくなってしまうからだ。その対策としては、顧客のライフイベントの推移にあわせて各イベントをカバーする別メディアを水平方向に展開していき、顧客1人あたりのLTVを最大限に高めることなどが考えられるだろう。

例えば、ベネッセホールディングスは妊娠や出産をテーマにした「たまごクラブ」を刊行する一方で、子供の成長にあわせて顧客が離れていかないように、出産後の育児に焦点をあてた姉妹紙「ひよこクラブ」も刊行している(1〜3才児の育児を扱う「こっこクラブ」は2011年4月号をもって休刊)。

一方で榎本氏は「まずはウェディングだけに特化する」と話す。「ウェディングニュースは結婚準備期間である約1年間だけ使ってもらうアプリ。毎年、新たに成立する夫婦は約40万組いる。その半分を取ることができれば数百億円規模のビジネスを作ることが可能だ。だからこそ、ユーザーに深く刺さるようなアプリにすることに注力しなければならない」(榎本氏)

将来的には結婚後のライフイベントもカバーできるメディアを作る可能性はあるが、まずはウェディング関連事業を深堀するというのがオリジナルライフの方針だ。

オリジナルライフは2015年4月の創業。同社はシードラウンドで約3000万円を調達しており、今回を含む累計調達金額は1億5000万円となる。同社は今回調達した資金を利用して、自社コンテンツ配信のために編集チームを強化するほか、アプリの利便性を高めるための追加開発を行っていくという。

オリジナルライフのメンバー。後列右より、CDOに就任した貫井信隆氏、CEOの榎本純氏

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TechCrunch Japan

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