ウェブサイトをネイティブアプリに変える 「Joren」、フラーが国内版を提供開始

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スマホ節電アプリ「ぼく、スマホ」や企業向けのアプリ分析プラットフォーム「App Ape」を手がけてきたスタートアップ、フラー(2016年11月にFULLERより表記を変更)。耳に覚えがあるという読者も多いかもしれない。そんな同社は1月23日、ウェブサイトのURLを入れるだけでスマートフォンアプリ(iOS/Android)を作成できるサービス「Joren(ジョーレン)」を国内法人向けに提供開始した。

ユーザーはアプリ化したいウェブサイトのURLさえ用意しておけば、Joren側でウェブサイトのコンテンツを自動で取得し、アプリのプレビュー版を生成。それを基にユーザーは管理ツールから、デザインのカスタマイズやプッシュ通知の設定などを行う仕組みだ。今までもアプリ上のブラウザでウェブページを表示するといういわゆる「ガワアプリ」や、ネイティブアプリをノンプログラミングで作成するサービスはあったが、Jorenはサイト情報を自動取得してネイティブアプリを作ることができるのが特長だ。

プログラミングやデザインの知識は必要なく、ウェブサイトを更新すればアプリ側も自動更新されるため、運用コストも抑えられる点が特徴。初期費用の100万円(先着50社は半額の50万円)と、プランに応じた数万円の月額料金で利用できる。

ただし現時点では全てのサイトに対応しているわけではなく、会員登録が発生するサイトや決済機能を持つサイトなどはアプリ化できないという。そのため、現在中心となっているのはニュースメディアやイベントの公式サイト、スポーツチームのメディアなどだ。

Jorenは2016年の7月から一足先に海外版がローンチされており、すでに70カ国以上の顧客から4000件を超えるアプリ作成依頼が届いている。検索流入など”一見さん”が多いウェブサイトに比べ、プッシュ通知などを活用することで”常連さん”を増やせるのがアプリの利点であることから、Jorenと名付けられた。

導入企業であるプロスポーツクラブの事例では、アプリを利用したユーザーの翌月継続率が9割に達するなど成果が出始めている中で、国内企業向けに正式なサービスローンチへと至った。

今後はECサイトや決済機能を持つサイトへの対応に加え、集客や広告をサポートする機能も順次追加予定。長期的には法人だけでなく、個人でも使えるようなプランを検討しているという。

「Joren」で作成したアプリの例

「Joren」で作成したアプリの例

アプリ分析支援サービスの提供を通じてサービスを構想

フラーは2011年11月に筑波大学出身の代表取締役・渋谷修太氏らが茨城県つくば市で立ち上げたスタートアップ(現在オフィスを構えるのは千葉県柏市)。冒頭でも触れたぼく、スマホやApp Apeなどのサービスを提供してきた。

App Apeを通じて様々な企業のアプリ分析をサポートする中で、「アプリを作って欲しい」という依頼が100件近く寄せられたことから、開発スキルやリソースがない人でもアプリを制作できるサービスの可能性を感じ、Jorenの構想が生まれたという。

「アプリを1から作ろうと思うと、まずプログラミングやデザインといった開発の壁があります。そして意外と手間がかかるのが更新や運用といった管理コストです。これらを極力取り除き、開発の知識がないマーケティング担当者や広報担当者でもアプリを制作・運用できるサービスがあれば役に立つのではないかと考えました」(渋谷氏)

リリース当初はウェブサイトのコンテンツ取得やアプリ化に加え、必要な条件を整えてアプリストアへ申請するまでの工程をなかなか自動化できず、苦戦していたという。現在では8〜9割の作業を全て自動化することに成功し、早い場合だとURLを準備してから30分ほどでストアへ申請できる状態になっている。

もちろん凄腕の専任担当者が作ったアプリと同じレベルのものが作れるというわけではないが、「アプリ制作におけるWordPress」のような位置付けで、スキルはなくても気軽にアプリを作ってみたいというニーズに応えていくことが狙いだ。

また、アプリが簡単に制作できるサービスであることに加え、これまでに培ったノウハウを生かして、ユーザーに使ってもらえるアプリを作れる点がJorenならではの強みだと渋谷氏は話す。「App Apeを運営することで蓄積されてきたアプリのデータを分析していくうちに、成功しているアプリの特徴や傾向のようなものが見えてきました。そのナレッジを最大限に生かし、どんな人でも最適なアプリを作れるようなサービスになっていると思います」(渋谷氏)

開発や運用のハードルを下げ、世の中で提供されるアプリの数を1億個以上にすることを長期的なミッションに、まずはJorenを通じて年内に1万個のアプリを制作することを目標として掲げている。並行して、会社全体では既存のApp Apeとも合わせ、アプリに関わる悩みであれば開発から分析までトータルで解決できる「アプリの総合商社」を目指し、各サービスの改善を行っていくという。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。