オフィス再開に向けて大手テック企業はそれぞれ柔軟なワークモデルを検討中

先週、Apple(アップル)は、2021年9月以降社員を週3日のペースでクパチーノのキャンパスに出勤させる予定だと発表した。自宅で仕事をするという柔軟性に慣れてしまった社員の中には、それに反対する者もいた。

パンデミック以前には、一部の例外を除き、ほとんどの社員が毎日オフィスに出勤していた。しかし、2020年3月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し、従業員が在宅勤務を余儀なくされると、企業はすぐに同じ建物の中に座っていなくても、スタッフの高生産性は維持できることに気がついた。今やこの流れを押し戻すことは難しいように思える。

個々の企業にとって完全なリモート勤務と、個別に定義するハイブリッド(たとえばAppleのように、オフィスにいる日もあれば自宅にいる日もある)勤務とのバランスを取るのは決して簡単ではなく、一律の答えは存在しない。実際、今後は流動的になっていくのかもしれない。

そこで、各社のアプローチの違いを知るために、Apple以外の大手テクノロジー企業5社に、オフィス再開についてどのように考えているか聞いてみたところ、各社とも何らかのハイブリッドワークを採用しようとしていることがわかった。

  • Google(グーグル)はAppleと同じように、オフィスで3日、家で2日というアプローチをとっている。「私たちは、ほとんどのGoogler(グーグラー、グーグル従業員)が約3日をオフィスで過ごし、2日を自分の好きな場所で過ごすハイブリッドなワークウィーク体制に移行します。オフィスに来ている時間はコラボレーションに集中するため、製品分野や機能によって、チームがオフィスに集まる日を決めることができます。もちろん仕事の性質上、週に3日以上現場にいなければならない役割もあるでしょう」と、GoogleとAlphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)は、最近のブログ記事の中で書いている。
  • Salesforce(セールスフォース)は、社員の役割に応じて幅広い選択肢を用意している。ほとんどの社員は、ほとんどの時間を自宅で仕事をし、週に1~3日、同僚との共同作業や顧客とのミーティング、プレゼンテーションのためにオフィスに出社することができる。また、オフィスの近くに住んでいない人はフルリモートで、自ら選択した人や仕事でオフィスにいる必要がある人は週に4~5日出社することもある。
  • Facebook(フェイスブック)はリモートワークを拡大しており「6月15日より、Facebookは会社全体のすべてのレベルにリモートワークを開放し、リモートでできる役割の人は誰でもリモートワークを申請できます」と従業員に書面で伝えている。
  • Microsoft(マイクロソフト)はこの件をマネージャーに任せているが、ほとんどの役割は少なくとも部分的にはリモートで行うことになるだろう。最近のアナウンスでは従業員に対して「私たちは、現場にいることが必要な従業員もいれば、職場から離れた場所で働くのに適した役割やビジネスもあることを認識しています。しかし、ほとんどの職種では、マネージャーとチームがうまく機能していることを前提に、一部(50%未満)の時間の在宅勤務を、現在の標準だと考えています」と伝えている。
  • Amazon(アマゾン)は当初、ほとんどオフィス内での勤務という方針を検討していたが、今週従業員にもっと柔軟なワークスケジュールを提供することに決定したことを発表した。「当社の新しい基準は、週3日のオフィス勤務(具体的な勤務日はリーダーチームが決定)とし、週2日まではリモートで勤務できる柔軟性を残します」と、同社は従業員へのメッセージで述べている。

大手のテック企業は、ほとんどの社員が出社時間をある程度自由に決められるようになっているが、ポストパンデミックに向けてスタートアップ企業はどのように仕事を捉えているのだろうか。私が話を聞いたスタートアップ企業の多くが、オフィス中心のアプローチを想定しておらず、リモートファーストのアプローチをとっている。Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が最近、ポートフォリオのスタートアップ企業226社を調査したところ、ポートフォリオ内の企業の3分の2が、大企業と同様のハイブリッドなアプローチを検討していることがわかった。実際に、87社が週に1〜2日程度の出勤を考えており、また64社はオフィスをまったく持たず、集まりは社外で行うだけだった。一方「自宅での仕事は一切行わせない」と答えたのはわずか18社だった。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストで、長年にわたり分散型勤務を研究してきたDion Hinchcliffe(ディオン・ヒンチクリフ)氏は、テック企業はパンデミックの最中にその効果を確認できたことで、柔軟なワークモデルを採用する可能性が高まっていると述べている。

そして「多くのハイテク企業は、オフィスを再開するに当たりある程度の柔軟性を維持するでしょう。これは特に多くの従業員からの評判が良いからです。また、心配されていた生産性の低下も、ほとんど杞憂に終わったのです」と語る。しかし、彼はそれがすべての企業に当てはまるわけではないことも強調した。

「ある種の企業、特に保護すべき知的財産をたくさん持っていると考える企業や、その他の機密性の高い仕事をしている企業は、自宅で仕事を続けることには消極的になるでしょう」と続ける。しかし、そうした企業の多くは、この15カ月間、そのような活動を続けてきたのだ。Appleのようにハイブリッド化することは、その議論をさらに混乱させるだけだろう。

「その中にはもちろん、以前から在宅勤務を推奨していないことで有名なAppleも含まれています。週に3日はオフィスに出勤するという新しい方針は、彼らに少しは安心感を与えるでしょうが、実際には本当に安心することはできません」とヒンチクリフ氏はいう。

もちろん、企業はポリシーを設定することができるが、従業員からの反対がないとは限らない。Appleは今回それを確実に学んだ。労働者たちは、雇用主に指定された場所ではなく、自分で働く場所を選びたいと考えているようだ。特に、労働市場が逼迫しており、力が従業員側にシフトしているような状況では、在宅勤務のオプションを提供することが、競争上の優位性となる可能性がある。

これがどのように進んで行くのか、また従業員がどれだけ企業に対してより柔軟な働き方の実現を促す力を持っているのかを観察することは、興味深い。今のところ、ほとんどの企業はパンデミック以前に比べてはるかに大きな柔軟性を持っているものの、すべての企業がいつまでも従業員に完全に自宅で仕事をして欲しいとは思っているわけではないだろう。また企業は自社と従業員にとって何が最適かを判断していく必要がある。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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画像クレジット:Susumu Yoshioka / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

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