オンデマンド配達のGlovoが超即配のB2Bロジスティックを準備中

スペインのオンデマンド配達アプリGlovo(グロボ)は、B2Bロジスティックによりさまざまな商品を30分以内に配達できるよう準備を進めている。この計画は、今後12カ月でかなり数を増やす予定の市中心部に立地する倉庫のネットワークに頼っている。

同社はB2Bサービスの開発を加速すべく、Q-Commerceという新部門の立ち上げを発表したばかりだ。Qは「quick」を意味している。このB2Bサービスでは、サードパーティのプロダクトをGlovoの倉庫に保管し、他の事業所のために配達するオンデマンドプラットフォームに配達人を抱える。これについて同社は、あらゆる規模の事業者が自社オンラインストアを支えるための「ターンキー(一括受注契約)」ロジスティックソリューションと称している。

同社はすでにUnilever(ユニリーバ)やNestle(ネスレ)、L’Oreal(ロレアル)といった小売ブランドやWalmart(ウォルマート)、Carrefour(カルフール)、Kaufland(カウフラント)などのスーパーマーケットと協業し、そうした企業の商品を「ダークストア」と呼ばれるネットワークで保管・販売している。そうしたダークストアは現在、バルセロナ、マドリッド、リスボン、ミラノにあり、特定のグローサリー商品や他のアイテムを「Glovo Market」ブランドでユーザーに迅速配達している(現在は無料の24時間配達と最低利用額なしというニンジンをぶらさげている)。しかしGlovo Marketをさらに多くの都市で展開し、他社のオンラインストアを支えるためのB2Bサービスを立ち上げることで守備範囲を広げようとしている。2021年末までにダークストア100店以上を展開する計画だ。

Q-Commerceのグローバルディレクターを務めるDaniel Alonso(ダニエル・アロンソ)氏は声明文の中で、「世界中で店舗が閉鎖しロックダウンが行われるなか、消費者はこれまで以上に玄関先まで商品を届けて欲しいと思っています。新たな需要が生まれていて、配達に24時間、48時間も待つのはもはや考えられません。消費者は分単位で考えています。GlovoはQ-Commerceで提供する全プロダクトを30分以内に届けることを約束します。当社はこの洗練されたサービスを引き続き拡大していて、今後12カ月でスペイン国内の他のエリアや欧州、東欧、アフリカでQ-Commerceを立ち上げるこを楽しみにしています」。

Glovoはレストランやスーパーの食事や食品だけでなく、おもちゃ屋や音楽用品店、本屋、花屋、美容院、薬局などで売られているものなど、さまざまな種のプロダクトの配達をQ-Commerceで支えたい、と話す。

ただし、ここに明らかに含まれていないものもある。例えば衣料品店だ。そうした店はすでに独自のオンラインショッピングインフラを持っている。加えて、衣類のショッピングはアイテムのサイズが合わなかったり自分に似合わなかったりしたときに返却があるためにより複雑だ。しかしGlovoは多くの商品を網羅しているようだ。

アロンソ氏は、Glovoは現在、22のダークストアを運営していると話した。「人気のアイテムは青果、飲料、花、パーソナルケア、家庭用品、ペットフード、またUnileverやNestle、P&Gのような企業の日用雑貨です」と同氏はTechCrunchに語った。

「Glovo Supermarketでは現在、2000ものアイテムを管理していますが、ダークストアにも頼っています。Glovo Supermarketよりも品を揃えているところもあればそうでないところもあり、その数はカバーする人口や立地にもよります」。

Glovo Marketサービスは5万人以上のアクティブユーザーを抱え、1分あたり2件のオーダーを配達しているとGlovoは話す。またこれまでに世界中で「複数カテゴリー」オーダー1200万件超を配達し、スペインではグローサリー配達の数は2020年倍増して100万件を超えるとする。2019年の成長率は前年比300%超だった、とも付け加えた。

ライバルのDeliveroo(デリバルー)やUber Eats(ウーバーイーツ)も常に自らを「何でも配達する」アプリと称している。というのも、(自転車で運べるものなら)何でも配達人が玄関先まで運ぶことをリクエストできるオプションをユーザーに提供しているからだ。ただ、そうした配達事業者の大半は食品の配達で街を駆け回っている。

食事の配達は、2020年初めの時点で売上高の4分の3を占めていた。しかしGlovoはあらゆるものを本当に迅速に配達するという都市部の利便性を競うゲームでAmazon(アマゾン)を負かすという野望を抱いている。こうした計画に投資家も集まっている。2019年、同社はシリーズDで1億6900万ドル(約178億円)を、その後すぐにシリーズEで1億6600万ドル(約175億円)を調達した。

同社はまたパンデミックの今年、LatAm事業を切り離した(欧州のライバル企業であるDelivery Heroに2億7200万ドル、約286億円で売却)ことで財務を強化した。LatAm売却は、Glovoが南欧と東欧のマーケットに照準を絞っていることを意味する(わずかながらサハラ砂漠以南の地域、ケニアとコートジボワールでも事業を展開している)。

おそらく同社は倉庫を、「いますぐ荷物を配達」の利便性がQ-Commerceと市中心部の倉庫のネットワークの組み合わせを推進するのにうってつけのものとしてとらえている。ただ2019年、同社は今後数年内の黒字化達成に向けて取り組みたいと述べており、南米での競争激化によって同社がそうしたマーケットから撤退することになったようだ。

Glovoは現時点で900万人超の月間アクティブユーザーを抱え、そしてグローバルでは5万5000人の「関連パートナー」、つまり同プラットフォームのために実際に配達を行うギグワーカーがいると話す。

「glovers」(配達人の名称)を「自営業者」と分類していることをめぐり、同社はスペインで訴訟を抱えている。スペインの最高裁判所は最近、配達人はGlovoと労使関係にあるとの考えを示し、Glovoがスペインで頼っている何千という配達人を再分類することを強制する動きは、同社の収益化に向けた取り組みを大幅に変えることになるかもしれない。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Glovo

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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