オンライン会話の気疲れを減らすビデオコミュニケーションツール「Around」

コロナ禍でオンラインコミュニケーションでのコミュニケーションが増えた。プライベートでも「Zoom飲み」なども行われ、広く利用されているが、その一方で「Zoom疲れ」という言葉も生まれている。オンラインとはいえ、お互いに顔を表示させるコミュニケーションは気疲れしてしまうことが多いものだ。現在、Clubhouseといった音声のみのボイスチャットも人気だが、顔を映し出しながらも気疲れしにくいビデオコミュニケーションツール「Around」にも注目が集まっている。

Aroundは、2021年に行われたシリーズAでWing、Forerunner VenturesおよびSlack Fundから1000万ドル(約10億9000万円)、総額1520万ドル(約16億6000万円)を調達した。CEOであるDominik Zane(ドミニク・ゼーン)氏のブログによれば、複数人が遠隔で共有ドキュメントをわかりやすく作成、編集、管理できることで人気のMiroNotionがそうであるように、コミュニケーションについても、シームレスで同時接続的にしたいと考えているという。また同社自体、米国とヨーロッパに拠点を置くリモートチームであり、自らそのコンセプトを体現しようとしている。

AroundはGoogle、Slack、Appleのアカウントまたはメールアドレスでサインアップでき、パソコンで利用可能(MacOSとWindowsに対応済み、Linuxは追って対応)だ。アプリも用意されており、Google Chromeもサポートしている。モバイル版も今後リリース予定とのこと。ちなみにSlackと連携しておくと、Slackでコマンドを打つだけで起動できる。

顔は見えても気疲れが少ない

自社ホームページでも「創造性を阻害する疲労感を減らそう」というキャッチコピーを掲げるAroundだが、そのツールは顔を映しながらも気疲せずに会話できる工夫を盛り込んだ設計になっている。

まず特徴的なのは、基本的に映し出されるのはユーザーの顔だけで、表示範囲が非常に狭い点だ。Clubhouseのアイコンのように小さな丸に囲まれて顔のみ表示されるので、散らかった部屋、膝に乗ってきた猫、話しかけてくる子供たちなどは映り込まない。また、Instagramのように簡単にカラートーンも変更できるため、起きぬけでメイクをしていなかったとしても、フィルタを変えてしまえばそれもわからない。

小さな丸い切り抜きであれば映り込む背景が絞られ、どんな状況下からもミーティングに参加しやすい(ホームページのスクリーンショット)

また、参加者の顔が一覧表示されるタイプのビデオ会議ツールの場合、それらが共有中の資料や他作業のウインドウの邪魔になることもあるが、Aroundでは丸い顔アイコンのみが表示され、かつその大きさも簡単に変えられるため、煩わしさもない。

作業画面を邪魔せず、顔も確認できる(ホームページのスクリーンショット)

仕事でも使える必要十分な機能

Aroundには、画面共有の他に、ノート機能や共有画像をストックしておける機能がある。画像ストック機能は「Image Sharing」メニューから利用可能で、都度画面共有を切り替えたり、過去のチャットを遡って共有されたリンクを探したりしなくても、会話の中で登場した資料や画像をすぐに一覧で確認できる。

顔の表示方法や機能の切り替えがメニュー化されていてスイッチしやすい

ノート機能は「Notes」メニューから利用でき、従来、ZoomやWebEXで使ってきたチャット機能よりも長い文章を表示できるため、会話の流れを追いやすい。全員にメモを見せながら会話の流れをテキスト化することもでき、テレカンが終わったら自動メールでその内容を送ってくれる(今まではGoogle DocksかWordをわざわざ立ち上げ、Zoomで画面共有しなければならなかったあの作業だ)。

マイクは全員そのままで

また、これまでのビデオコミュニケーションツールでは、同じ部屋にいる者が同じビデオ会議に参加するとハウリングが発生してしまう。そのため発言時以外はミュートにしたり、1台のPCを複数人で使ったり、外づけのスピーカーを用意する、もしくはわざわざ別の部屋に分かれて参加するといった手間があった。

しかしAroundは、近くで同時にマイクオンにしていてもハウリングを起こさない(EchoTerminatorというソフトウェアを特許出願中とのこと)。また、人間の声とその他の声を識別し、私たちを悩ませてきた消防車のサイレンや犬の吠える声も抑えてくれる。

加えて、昨今問題視されがちなユーザーの個人情報やチャット、音声データの保有方法についても配慮されている。サービス提供者がそれらを保有し続けていることに対する気持ち悪さや、サイバー攻撃による個人情報流出を懸念する人も少なくないが、同社の公式FAQによれば、ビデオのストリームのみユーザーに転送し、処理はユーザー自身のデバイスで実行されるとのことだ。

Aroundは現在、パブリックベータ版で無料で利用できる。2021年後半にチームライセンスプランについて公表するとのこと。現状でも一度に30人まで参加可能であり、ベータ版でも十分に活用できそうだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Aroundビデオチャットレビュー

投稿者:

TechCrunch Japan

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