オンライン商談ツールのベルフェイスが5億円調達、セールスビッグデータの活用目指す

ブラウザだけでオンライン商談ができるウェブ会議システム「bellFace」を提供するベルフェイスは8月7日、総額5億円の資金調達実施を発表した。引受先は、グロービス・キャピタル・パートナーズSMBCベンチャーキャピタルYJキャピタルキャナルベンチャーズが運用する各ファンド。

増資に伴い、既存株主のインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏とグロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナーの仮屋薗聡一氏が社外取締役に就任する。

セールスに役立つ機能をさらに強化したbellFace

2016年9月の記事でも紹介したが、bellFaceはブラウザさえあれば使えるウェブ会議システムだ。SkypeやGoogleハングアウトと異なり、相手にソフトウェアのインストールやアカウント登録を強いる必要がなく、離れたところにいる社外の顧客と商談するインサイドセールス用途に使いやすくできている。

ユーザーはベルフェイスのページで発行される“接続ナンバー”を顧客と電話でやり取りするだけで、ブラウザの種類やバージョンは問わず、プラグインも不要で使える。クラウド上に保存された資料を表示して、相手と確認しながら話をすることもできる。

2015年のリリース以降、プロダクトのアップデートも進んでいる。PCだけでなく、iPadやiPhoneのブラウザにも対応したほか、画面共有機能、セールスパーソンを美肌と細見え効果できれいに見せるビューティーモード、動画プレゼン機能や50MB以下のファイル共有機能、名刺プロフィールの表示など、さまざまな機能を搭載してきた。

ベルフェイス代表取締役の中島一明氏は「画面共有機能はSaaS系企業のデモにも最適で、利用が伸びている。相手側がPCであれば、双方で画面共有ができるため、テクニカルサポートでも活用してもらっている」と話す。

中島氏によれば「これらの機能強化が導入企業増につながった」とのこと。「2018年7月現在で有料での導入企業が700社、13000ユーザーを超えた。特にマーケティングをしていないが、月に350〜360件ほどの問い合わせがある」という。

「メールアドレスやFacebookのアカウントなどが分からなくても、やり取りができて、資料も共有できる。接続の簡単さが導入企業には喜ばれている。特に営業では身内よりも顧客との間のほうが、コミュニケーションする機会が多い。BtoB営業のためのツールとして機能を追求し、そこに2年間注力してきた成果が現れたと考えている」(中島氏)

同じような機能を持つブラウザベースのウェブ会議システムには、URLを発行するだけでビデオチャットが可能なAppear.inZOOMなどもある。これらと比較したときに、bellFaceが「オンライン商談、インサイドセールスに特化したツール」たるゆえんは、その「商談データの扱い方」にある。

bellFaceでは、どの資料をどのような順番で、どれくらいの時間見せたかを秒単位で取得して営業ログを記録する。また、共有メモに双方で書き込みを行うことができ、議事録を作りながら話せるので認識の齟齬も生じにくい。さらに双方のビデオ画像を録画し、変換したファイルがクラウド上に残る。商談の最後には、顧客へのアンケートも実施できる。

これらの情報をSalesforceなどのCRMツールに紐付けて保存することで、営業内容を成果と結び付けて確認することが可能。社員へのフィードバックに生かすことができるという。

日本でのインサイドセールス普及を目指す

ベルフェイスは2015年4月の創業。2016年8月にはインキュベイトファンドほか数社から1.6億円の資金調達を実施している。

中島氏は現在の状況について「既存ユーザーの継続率も高く、導入も増えている」と説明する。マーケターや広報の専任者はいないそうだが、問い合わせを月300件以上受けるまでに至ったのは、「カスタマーサクセスに力を入れたから」という。

bellFaceではユーザーが顧客に接続ナンバーを発行してもらうことから商談が始まるが、その時に顧客に必ず「ベルフェイス」と検索してもらうことになる。また、そのほとんどがBtoBの商談で利用されている。

「“お客さまのお客さま”が商談でbellFaceを利用し、『うちでも使えるのではないか?』と思ってもらうことができた。導入企業の顧客がユーザーになるケースが多く、サービスの利用頻度が高くなればなるほど、ユーザーが増えた。つまり、ユーザーを成功させればユーザーが増えるという状況。カスタマーサクセスに投資してよかった」(中島氏)

前回の資金調達から約2年。「大手から小規模までさまざまな企業に使ってもらって、今は実績・プロダクトともに充実したところ。土台ができたと考え、2度目の資金調達を行うことにした」と中島氏は述べる。

今回の調達資金について中島氏は「カスタマーサクセスに引き続き投資する」と話している。「きれいごとでなく、それが一番効率がよいから」だという。解約したくないと思われるようなプロダクト強化と実績づくり、Salesforceなどの外部CRMツールとの連携機能強化や、ユーザーコミュニティ醸成にも力を入れるそうだ。

「ユーザーコミュニティについては、現在月1度、ユーザー会を実施しているが、貸し会議室を利用している状態。スタートアップによくある『おしゃれなオフィスに引っ越して……』というよりは、ユーザーイベントを安定して開催するために、オフィスの移転を計画している」と中島氏は説明する。

米InsideSales.comの調査によれば、米国において2017年に営業利益ベースでフィールドセールスが占める割合は71.2%で、リモートまたはインサイドセールスの28.8%に比べれば依然として高い。だが2018年にはリモートおよびインサイドセールスの比率は30.2%に伸びると予測されている。

また米国の小売業を除いたセールスパーソン570万人のうち、43.5%はインサイドセールス専任、56.5%がフィールドセールス担当で、その差は縮まってきている。しかもフィールドセールスの担当者もいまや約半分の時間をリモートセールスに充てているという。その割合は2013年時点に比べて89.2%増加している。

日本でも働き方改革が進む中、効率のよい時間の使い方、生産性向上が求められることもあって、訪問営業で費やされる移動時間やコストに目が向けられ、インサイドセールスへの注目が集まっている。

「日本ではまだ普及しきっていないインサイドセールスという新しい営業スタイルを、マーケットに浸透させるため、広告などのマーケティングにも投資していく」と中島氏は話している。

さらにベルフェイスでは、蓄積される商談データを「セールスビッグデータ」として活用することも検討している。中島氏は「大量のセールスログとアンケートの分析を人が行い続けるのは非効率。人工知能を活用することで、例えば画像解析による“笑顔率”とCRMで見える成約率との関連性を分析するなど、非言語コミュニケーションの解析を行い、数字で分析可能にしたい」と述べる。

「今までは企業と顧客の間で、マーケティングやCRM、MAなど企業に近い部分にはデータがあってツールがあり、デジタル化が進んでいたが、顧客との接点であるセールスの効果については、ブラックボックスで分析が進んでいなかった。既存のツールに加えて、セールスもデジタル化し、蓄積されたデータをマネジャーが使えるようにすることで、営業に必要なサジェストを出せるようにしていきたい」(中島氏)

笑顔率の分析やセールスパーソンへのフィードバックについては、社内で実際にbellFaceを使って実施してみているそうだ。「営業担当によっては『笑っていないほうが数字が取れる』ということもあるはず。それぞれの適性に合わせた提案ができるようになれば。また自部署では不要と顧みられなかった営業情報が、実は隣の部署では必要だった、というケースも企業ではよくあること。そうしたデータを拾い上げて、適切な部門にサジェストするような機能も用意したい」(中島氏)

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TechCrunch Japan

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