オンライン学習塾の「アオイゼミ」をZ会が買収——市場の拡大にらみ

写真右から、Z会 代表取締役社長 藤井孝昭氏、葵 代表取締役社長 石井貴基氏、栄光 代表取締役社長 山本博之氏

中高生向けオンライン学習塾「アオイゼミ」を運営するは12月7日、Z会グループのZ会ラーニング・テクノロジによる買収を明らかにした。Z会ラーニング・テクノロジは11月30日付で葵の全株式を取得し、完全子会社化。買収額は公開されていない。葵はZ会グループの元で継続してアオイゼミの事業を行う。

葵は2012年3月の設立。2013年9月から12月まで実施されたインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」の第5期に参加している。2014年8月にはジャフコから1.2億円を調達、2015年11月にはKDDI Open Innovation Fund、マイナビ、電通デジタル・ホールディングスなどから総額2.8億円を調達している。

代表取締役社長の石井貴基氏は、葵の創業前にはリクルートで広告営業、ソニー生命保険でも営業を経験。生保営業で低所得層から高所得層まで、家庭の生活費のアドバイスを行っていく中で、子どもの学習塾費用が高いこと、所得の低い家庭でも低価格のものが選択できない構造に疑問を感じたという。そこで、ITでより安く、より便利な学習塾のサービスを提供しようと考えた石井氏が立ち上げたのが、アオイゼミだ。

2012年6月にサービス提供を開始したアオイゼミは、現在会員数が40万人を突破。無料で見られるライブ授業に加えて、いつでも無制限で授業動画が再生でき、テキストダウンロードや講師への個別質問などが可能な「プレミアムプラン」でも、月額3500円〜5000円と一般の学習塾よりはかなり低価格で利用でき、主力の課金メニューとなっている。プレミアムプランの会員数は非公開だが、新規申込者数は昨年対比で300%以上となっているそうだ。

Z会グループは、学習塾の栄光ゼミナールをグループに取り込むなど、老舗の通信教育事業者としては積極的に買収を行ってきている。また、EdTech(教育系テクノロジー)スタートアップにも、資本業務提携などの形で投資をこれまでにいくつか行っている。

石井氏は「オンライン学習塾は黒船として、既存の学習塾などのプレイヤーからは警戒されてきた。だが最近では他社でも提携が進み、融和が始まっているのではないだろうか」と話している。今回のM&Aについては「今後、オンライン学習市場は通信教育はもとより、学習塾の領域まで広がると見ている。栄光ゼミナールも傘下に持つZ会グループで、グループを代表するようなオンライン学習サービスの提供をしていきたい」と、まずはZ会グループ内へのサービス提供を進めたい意向を表明。その上で「Z会グループの豊富な教材やノウハウを投入して、No.1オンライン学習サービスを目指す」と意欲を見せる石井氏は「アオイゼミの旗振りで新規事業の準備もスタートしている。来春ごろにはリリースを予定している」と明かした。

また、Z会代表取締役社長の藤井孝昭氏は「葵のグループ参入を心より歓迎する。アオイゼミが培ってきたオンライン学習サービスの技術・ノウハウにZ会グループが保有するコンテンツ・リソースを組み合わせることで、アオイゼミ事業の一段の強化を図るとともに、両社の力を結集することにより、新しい価値を提供したい」と述べている。

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TechCrunch Japan

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