オンライン秘書「Kaori-san」を起業したのは「FON」の共同創業者だった


「Kaori-san」は「出張先のホテルを探してほしい」とか「競合他社のサービスをリストアップしてほしい」といったリクエストに答えてくれるオンライン秘書サービスだ。TechCrunch Japan読者なら、このサービスの存在にしばらく前から気付いていた人もいるかもしれないけど、気になるのは、Kaori-sanを運営しているのはどんな会社なのかということだよね。サイトには社長と思われるスキンヘッドのいかついアフリカ系アメリカ人の写真が、「I am Kaori-san」というコメント付きで掲載されていたりする。意味が分からない。誰が、かおりさんだって?

Kaori-sanさんにメール取材を申し込んでみたところ、創業者であるイジョビ・ヌウェア氏から回答を得ることができた。

それによれば、Kaori-sanの母体となる会社はアメリカにあり、日本法人は2013年7月に設立。ヌウェア氏は先述したスキンヘッドのアフリカ系アメリカ人で、ニューヨーク出身。実は無線LAN共有サービス「FON」の創業者の1人で、ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出されている。日本では2008年6月にオンラインマーケティングに特化したランドラッシュグループ株式会社を設立し、その後オンライン秘書サービスKaori-sanをスタートしたのだという(参考:CrunchBase

Kaori-sanの運営チームはすべてオンラインで仕事をしていて、オフィスは郵便物の受け取りや打ち合わせのためだけに使用している。オンライン秘書の人数は非公開とのことだが、8割は日本人、残りの2割は中国人、台湾人、韓国人が占めている。現在のアクティブユーザーは数百人。売上については非公開だそうだ。

日本でKaori-sanを始めたきっかけは、有能で「使える」スタッフを雇うのはコストがかかり、特に中小企業がバイリンガルのスタッフを探すのが難しかったからだ。「企業のスタートアップ時期に好ましくない人物を誤って採用してしまっては、会社にとって大きなダメージ」という問題を解決するために日本でKaori-sanを始めたのだと、ヌウェア氏は僕に説明した。

接待で使えるメイド喫茶を教えてください

実はメール取材の前に、Kaori-sanを試してみたので使用感もお伝えしたい。今回利用したのは、3件のリクエストを依頼できる「バイトプラン」(月額2490円)。このほかには、リクエスト数が6件までの「部長プラン」(月額4980円)、15件までの「社長プラン」(月額8980円)、25件までの「会長プラン」(月額1万4980円)がある。プランごとに営業時間が異なり、バイトプランは午前9時から午後5時までの対応だが、会長プランだと24時間対応してくれる(現実の会長秘書が24時間付き添ってくれるのかどうかは別として)。

実際にリクエストしたのは以下の3つだ。

・7月の山口・萩旅行のお土産を教えてほしい
・彼女の誕生日に贈るものを考えてほしい
・接待で使えるメイド喫茶を教えてほしい

内心、最後の質問は無茶振りかなと思ったりもしたが、果たしてKaori-sanはこれらの質問に答えてくれるだろうか。

それではまず、「7月の山口・萩旅行のお土産」の結果から見てみよう。返信は依頼から2時間で来た。これを早いと見るか、遅いと見るかは人それぞれだろうけど、そんなに急ぎの用件ではなかったので特に不満はなかった。

Kaori-sanのオススメは「夏蜜柑丸漬」「ブランデーケーキ 夏蜜柑」「萩焼(茶の湯で使うための陶器)」「萩のカマボコ」「萩のチクワ」。萩についていくばくかの知識しかない僕にとっては、夏蜜柑やカマボコ、チクワが名物であるなんて思いもしなかった。さすがに職場の同僚に陶器をプレゼントするのは躊躇するが、美味しそうなお土産を買って来ることができそうだ。1つ注文を入れるとすれば、「どこで購入できるのか」「駅の売店で買えるのか」といったところまでカバーしてくれればなお良かった。

次は、「彼女の誕生日プレゼント」だ。Kaori-sanはNAVERまとめをソースとして5つのプレゼントを提案してくれた。5位はバック、4位は時計、3位は花、2位はネックレス、そして1位は指輪という結果に。ふだん、ネットで記事を書いている僕からすると、「おいおい、ソースがNAVERまとめかよ。『彼女 誕生日 プレゼント』で検索してトップに出てくるようなページをおすすめされてもなあ……」と思わなくもなかったが、「検索するのも面倒」と言う人にはいいかもしれない。

最後は、「接待で使えるメイド喫茶」の結果だ。そもそも「ビジネス用メイド喫茶」を探す依頼自体が無理難題っぽいが(存在するかも含めて)、案の定、Kaori-sanは困っているらしく「どちらの場所でお探しいたしましょうか? 個室等ご希望でしたら、詳細も合わせてご連絡ください」とのこと。そこで「秋葉原で、個室」という追加情報を記入したところで、回答は次の日に持ち越しとなった。僕が選んだバイトプランは、午前9時から午後5時までの「定時」以外は対応しないからだ。

翌日に届いた返信でKaori-sanは、5カ所のメイド喫茶をオススメしてくれた。ちなみに個室の件だが、「ゲームをしたり、写真撮影をしたりするお部屋はございましたが、接待に適した個室のあるメイド喫茶はございませんでした」との返信。こちらの無茶振りにもしっかりと答えてくれ、まさに”ご主人様”になった気分(若干Sっ気が出たのは事実)であった。

最後のメイド喫茶のリクエストはさておき、職場へのお土産については解決してくれたKaori-san。ネットリテラシーの高い人にとっては「自分でネットを使って調べたほうが早いのでは?」と思う人もいるだろうが、ネットで調べること自体が面倒とか、時間がもったいないという人もなかにはいるはず(僕もその一人)。そういう意味で、忙しい人にはおすすめのサービスと言えそうだ。

また、今回は「調べ物」を依頼してみたが、サイト上には「代理でアポイントやレストランの予約を取る」「カスタマーサポートへの問い合わせに対応する」「競合他社等の企業リストを作成する」といったリクエストにも対応してくれるそうだ。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。