オンライン食品デリバリー市場には2100億ドルの可能性

A day's worth of meals from a raw-vegan delivery service, ready for a cleanse or detox. Includes: crepes, berries, collard green wraps, sushi, salad and pizza.

編集部注著者のEric Kim氏は、LA拠点のモバイル食品オーダースタートアップRushOrderの、共同創業者兼CEOである

昨年私は、広範囲にわたるオンライン食品オーダリングへの長期的シフトについての記事を書いた。その時には、対象領域に大量の資金が流入しているのを目撃した。それから1年が経ち、私たちは今や、非常に異なる資金調達環境を目にしている。調査会社のCB Insightsによれば、食品デリバリーカテゴリーへの国際的な資金の流入は、16年第1四半期に69パーセント減少し、そして更に第2四半期には49パーセント減少している。

Source: CB Insights

出典:CB Insights

ファイナンスの視点からは流れは間違いなく後退している一方で、オンライン食品デリバリー業界が示すマーケットの可能性は、相変わらずの大きさを誇っている。実際、今年6月の最新業界レポートのMorgan Stanley Researchの指摘によれば、(デリバリー業界からの)アプローチ可能なコアとなるレストランは年間2100億ドルを売り上げているのに対し、オンライン食品デリバリーはわずか100億ドルを計上しているのに過ぎない。5%以下である(Morgan Stanley Research: Restaurants and U.S. Internet)。この金額は「電子商取引の2分の1、オンライントラベルの8分の1」に過ぎない。これらのメトリクスが示しているのは、オンライン食品デリバリーは明らかに「いまだに成長待ち段階」ということだ。

Source: Public Company Filings, AlphaWise, PhocusWright, US Census Bureau, ComScore, Forrester, Euromonitor, Morgan Stanley, and Wall Street Research Reports

出典:Public Company Filings、AlphaWise, PhocusWright、U.S. Census Bureau、ComScore、Forrester、Euromonitor、Morgan Stanley、そしてWall Street Research Reports

あまり頻繁に議論されていない統計は、この2100億ドルのアプローチ可能なマーケットの60パーセントがピザだと見積もられていることだ。これ自身は興味深いデータであるが、一方AlphaWiseが4月に行ったサーベイの結果が示すのは、消費者はピザ以外のデリバリーオプションを欲しているという事実である。

5000人以上の米国の消費者を対象とした彼らの調査では、回答者のほぼ3分の2がそれ以前の半年の間にレストランでテイクアウトの注文を行っている;こうした、容易にデリバリー注文に置き換え可能なテイクアウト注文が、ピザの代わりに頼めるオプションとして使われているのだ。調査ではさらに、こうした需要の高まりが「都市や、郊外、そして農村のマーケットを問わず」一貫して起きていると述べている(Morgan Stanley Research: Restaurants and U.S. Internet2016年4月のAlphaWiseの調査)。

そしてオンライン食品デリバリーサービスが急速に拡大し続けるにつれ、これまでデリバリーを提供できなかったレストランが、ますます多くデリバリー向けにアクセス可能になって来ている。以上のことが意味することは、これまで歴史的にピザの領域であったパイの一部の1260億ドルが、急速に手に入れやすくなってきたということだ。

Source: Morgan Stanley, AlphaWise

出典:Morgan Stanley、AlphaWise

この考慮すべき2100億ドルマーケットの可能性が、固定された数字ではないということも忘れないようにしよう。もし消費者たちが全体としてレストランでの外食時間を減らし、より多くの時間をオーダーに使ったならば、全体のパイは大きくなる。実際に、市場調査会社のThe NPD Groupは、次の10年間の店外フードサービスの成長は、レストラン業界全体の成長の速度を上回るだろうと予測している。

もし私たちが外食産業全体を広く眺めれば、そのマーケット規模は4900億ドルとなり、食品デリバリーの可能性(アプローチ可能な部分)はそのうちのちょうど43パーセントとなる。この角度から眺めれば、このマーケットの半分以上はまだ技術的に追求可能である。そこでは、ただの1パーセントの成長が、ほぼ50億ドルのデリバリーマーケットの機会拡大につながる(Wall Street Research Reports)。

Source: Public Company Filings, Morgan Stanley, Technomic

出典:Public Company Filings、Morgan Stanley、Technomic

とは言ったものの、メディアから流される膨大なノイズのために、ここで追加された視点は容易に見過ごされてしまう。長期的傾向は時間をかけて生まれるものであることを忘れてはならない ‐ しばしば、かなりの数の上下する投資サイクルを経て。そして、これらのサイクルを通じて、歴史上常にそうであったように、企業は栄えたり没落したりしていく。覚えておくべき重要なことは、発生の頻度は低いものの、広範で長期的なシフトは、それを活用できた幸運な者たちには並外れた機会を与えてくれるということである。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。