オーストラリア拠点の注目スタートアップ6社

オーストラリアではスタートアップのエコシステムが急速に発展しつつあり、TechCrunchもここ数年、オーストラリアのスタートアップシーンに注目するようになった。その最たる例として、2017年にはTechCrunch Battlefield Australiaを開催している。オーストラリアのスタートアップシーンが成長しているもうひとつの証拠として、先日メルボルンで開かれたPause Festがある。このイベントは近年ますます勢いをつけていて、国内外の注目を得たいオーストラリアのスタートアップにとって、たちまち参加マストな場所となった。

私は、そのスタートアップ・ピッチコンペを仮想的に訪れ、事業の売り込みを行ったいくつもの参加者にインタビューすることができた。中でも際立ったスタートアップ企業を上位から順番に紹介しよう。

Medinet Australia

第1位となったのは、Medinet Australia(メディネット・オーストラリア)。患者がアプリで医師の診察を受けられるようにして、オーストラリア人の医療の利用をもっと便利に手軽にすることを目指すハイテク系スタートアップだ。Babylon Healthなどのアプリにどこか似ているが、Medinetの「telehealth」アプリの場合は、遠く離れた総合診察医から臨床的なアドバイス、処方箋の取得、薬の配達、病理検査の結果の閲覧、雇用主への診断書の電子メール送付、専門医への紹介状(料金、待ち時間、患者の評判などの率直な事前情報を含む)といったサービスが受けられる。彼らはエンジェルからの支援で300万ドル(約3億3000万円)を調達し、いずれは機関投資家からの投資も期待している。オーストラリアは広大で、便利なtelehealthアプリへ人々が流れてゆくことを想像すれば、投資に相応しい分野と言える。

Everty

第2位は、Everty(エバーティー)。企業の電気自動車充電ステーションの管理、監視、収益化を簡単にしてくれる。だが、これはインフラではない。職場と会計システムをEV充電ネットワークとリンクさせるというもの。「EV充電版のSalesforce」といったところだ。これは、商用と自家用の両方の充電の監視ができる。エンジェルラウンドから資金を調達していて、さらなる資金調達の準備を進めている。

AI On Spectrum

第3位は、AI on Spectrum(AIオン・スペクトラム)。自閉症患者は統計的に長生きしないという悲しい事実がある。残念なことに、自閉症を患う人の自殺率が極めて高いのだ。AI on Spectrumは、自閉症児とその両親が生きる力を得られるよう、支援環境探しを身近なアプローチで手助けする。このゲームで、自閉症児が自分の感情面を探求できるようになり、辛いときに気を紛らわす手段が得られる。ユーザーをアシストするプロセスには、AIと機械学習が使われている。

HiveKeeper

Hacker Exchange特別賞を受賞したのはHiveKeeper(ハイブキーパー)。プロの養蜂家は、素早く、信頼性の高い、簡単に使える蜂の記録方法を求めている。それを叶えるのがHiveKeeperだ。さらに同社は、事故や問題をいち早く知らせるための、より正確な分析を可能にするソフトウェアとセンサーシステムの開発も行っている。将来この技術は、蜂の行動の変化から山火事の接近を警告するといった使い方もできるだろう

Relectrify

シンギュラリティ・ユニバーシティ特別賞を受賞したのは、Relectrify(リレクトリファイ)。自動車などの充電式バッテリーは再利用できるが、それを上手に使うための鍵は、どれだけ寿命を延ばすかだ。Relectrifyのバッテリー制御ソフトウェアは、すべてのセルの性能を最大限に引き出し、充電サイクルの回数を増やす。これはまた、新品でも再生品でも、バッテリーインバーターは使わず、コンセントの電源を使えるため、保管コストも削減する。その高度なバッテリー管理システムは、出力と電気のモニターを結びつけることで、どのセルが強く、どのセルが弱いかを迅速にチェックし、バッテリー寿命を30パーセントも向上させる。さらにバッテリーの二次利用も可能にする。これまでのところ、同社は日産とAmerican Electric PowerとのプロジェクトでシリーズA投資450万ドル(約5億円)を調達している。なお。シンギュラリティ・ユニバーシティは、米国シリコンバレーを拠点するスタートアップ企業を支援する企業だ。

Gabriel

悲しいことに、高齢者や入院患者は、長い間ベッドに寝ていると床ずれを起こす。床ずれが原因で命を落とす人もいる。しかも、床ずれが元で病院が訴えられることもある。求められるのは、床ずれを予防すると同時に、患者のどの部分に床ずれができやすいかを予測する技術だ。Gabriel(ガブリエル)はそれに取り組んでいる。マルチモーダルな技術を使い、ベッドからの転落や床ずれを予防する。家庭でも病院でも使えるパッシブなモニター装置で、センサーを内蔵した抵抗シートがベッド上の圧力を認識できるシステムに接続されている。米食品医薬品局の認可を得ていて、特許を出願中。すでにハワイの一部の病院で使われている。これまでにエンジェルから200万ドル(約2億2000万円)を調達し、現在も資金調達中だ。

Pause Featの雰囲気は以下の動画で確認してほしい。

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(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。