オーティファイがノーコードAI利用ソフトウェアテスト自動化プラットフォーム強化で11.2億円のシリーズA調達

写真左からCEO近澤良氏、CTO松浦隼人氏、COO清水隆之氏(画像クレジット:Autify)

Autify(オーティファイ)のCEOで共同創業者の近澤良氏は、過去10年間、日本、シンガポール、サンフランシスコでソフトウェアエンジニアとして働く中で、ソフトウェア開発業界には「ソフトウェアテストに時間がかかりすぎる」という共通の問題があることに気づいた。

近澤氏と共同創業者の山下(サム)颯太氏は2016年にサンフランシスコで、ソフトウェアテストの自動化を開発し急速に変化する市場において開発者が高品質なソフトウェアを顧客に迅速に提供できるようにするために、Chaloを立ち上げた。

Chaloのソフトウェア・テスティング・オートメーションは、コード不要のプラットフォームを使って、人手不足と技術的困難の問題を解決する。

日本時間10月6日、Chaloはモバイル向けネイティブアプリテストのローンチやグローバル展開に向けた新製品開発のために、1000万ドル(約11億2000万円)のシリーズAラウンドを行ったことを発表した。

今回の資金調達によって、Chaloの調達額は1220万ドル(約13億6000万円)に達したと近澤氏はいう。完全なリモートカンパニーであるChaloは、全世界に30名の従業員を抱えている。

シリーズAを主導したのはWorld Innovation Lab(WiL)である。新規投資家としてUncorrelated Venturesと個人投資家のJonathan Siegel(ジョナサン・シーゲル)氏が参加した。既存の出資者であるArchetype Ventures、Salesforce Ventures、Tablyも今回のラウンドに参加している。

グローバルな同業他社の大半は、ローコードのテスト自動化ソリューションを提供しており、さまざまなコーディングスキルを持つソフトウェア開発者が作業を迅速に行えるようにすることを目標としている。しかし、日本を含むいくつかの国では、ローコードアプローチでは解決できない深刻な開発者不足の問題に直面していると、WiLのパートナーである久保田雅也氏はTechCrunchのインタビューで述べている。

久保田氏はTechCrunchの取材に対し「ローコードのソリューションは、技術に精通した企業では有効かもしれませんが、ノーコードは世界中のさらに大きなマスマーケットを獲得することができるでしょう」という。

「これまでソフトウェアのテスト自動化は、コードを書ける人しかできませんでしたが、ノーコードソリューションとしてのChaloを使うことで、誰でもテストを自動化できるようになるので、開発者にも非開発者にもメリットがあるのです」と近澤は続ける。

ウェブとモバイル向けのChaloの主な機能は、クロスブラウザかつマルチデバイスでの並行テスト、AIによる自動修復、ビジュアル回帰テストの3つだ。声明によれば、ChaloのAIは、ソースコード/UIの変更を検知し、実行に際してテストシナリオを自動的に修正する一方で、ビジュアル回帰テストでは変更を自動的に検知し、ユーザーがメンテナンスなしでテストを実行することを可能にするという。

世界の多くの企業でリモートワークが標準となりつつある中で、ソフトウェア開発者やQAチームは、手動テスト用のモバイルデバイスを準備・管理することがますます困難になっている。Chaloのモバイル用ノーコードテストシステムを使うことで、プログラミングの知識や自動化のスキルがなくても、ウェブブラウザ上でモバイルアプリを操作するだけで、誰でも簡単にソフトウェアのテストシナリオを作成、実行、自動化することができる。近澤はこのことで、OS、画面サイズ、ネットワーク事業者、ユーザーシナリオなどの異なる組み合わせの実際のモバイル機器を用意する必要がなくなるという。

今回ローンチされた「Autify for Mobile」は、モバイル・ネイティブ・アプリケーションのテスト効率を向上させるもので、ウェブアプリケーションとモバイル・ネイティブ・アプリケーションのテストを同一プラットフォーム上で管理することにより、QAの生産性を飛躍的に向上させることを目的としている。

近澤氏によれば、Autify for Webは2019年10月にサービスを開始し、日本、米国、シンガポールの他、欧州も含んで、Unity、DeNA、ZOZOなどの、B2CおよびB2BのSaaS顧客が多数存在しているという。

現在は、米国と日本の2つの市場に集中しているが、今後はさらにグローバルな展開を進めていく予定だと近澤氏はいう。

久保田氏はTechCrunchの取材に対し「Chaloは最初からそうしたグローバルビジョンを持っていて、それはよく考え抜かれた市場戦略に裏付けられています。グローバル展開が難しくなることが多い日本のユーザーだけに向けたソリューションをカスタマイズするのではなく、Chaloは本当の最初からグローバルスタンダードで設計を行うことにしたのです」と語る。

Global Market Insightsの調査によれば、ソフトウェアテスト市場は2027年までに600億ドル(約6兆7100億円)の増加が見込まれている。

近澤氏は「世界の企業の75%がソフトウェア開発のテストを手動で行っている中で、Chaloは自動テストのためのノーコードアプリケーションを提供することを通して、1兆3000億ドル(約145兆2800億円)規模の世界のテスト市場をディスラプトしたいと考えています」という。「『ノーコード』、『AI利用』、『カスタマーサクセス』という、テストの自動化に対するChaloの3つのアプローチは、労働力不足、高い保守費用、技術的な難しさなど、とても長い間テスト市場を悩ませていた課題の解決に役立ちます。何よりもすばらしいのは、Chaloが開発のどの段階でも製品の品質を犠牲にすることなく、問題に対処できていることなのです」。

久保田氏は「Chaloがテスト市場で勝てる理由は、開発者不足が日本だけの問題ではないからです。たとえば米国でも、労働統計局の発表によれば、2026年にはエンジニアの不足数が120万人を超えると言われています」という。

Chaloは、技術系企業だけでなく、技術者が十分にいないような地域や業界の企業でも、ソフトウェア開発の改善を可能にできると久保田氏は述べている。

Sensor Towerのデータを引用した同社の声明によると、モバイルアプリに対する世界の消費者支出は、2019年には前年比30%増で2020年には1110億ドル(約12兆4000億円)に達しており、市場は急速な成長を続けている。

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(文:Kate Park、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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