オール電化のアウディ2022年モデル「e-tron GT」と「RS e-tron GT」は未来ではなく今を見据えるグランドツアラー

ラグジュアリー、テクノロジー、そして豪華さは、しばしば密接に結びついている。億万長者が宇宙を旅する時代において、最新の質の高い一流のガジェットは、未来から来たように見えるものではないかと、多くの人が考えているかもしれない。

Audi(アウディ)の観点からはそれは当てはまらない。2022年モデルのAudi e-tron GTとRS e-tron GTは、2060年から来たもののようには見えない、高貴な雰囲気を持つオール電化のグランドツーリングカーだ。見た目は洗練されたガソリン車のようだが、その外観の下には、一見したところのデザインでは想像できないほどのパワー、技術的なポップさ、そして品格が秘められている。

2022年型Audi e-tron GTとRS e-tron GTは、低めのルーフライン、広いトラック、長いホイールベースを備えている。e-tron GTとRS e-tron GTはどちらもAudi R8と並行して生産されており(ルーフラインはR8よりも低い)、その象徴的なデザインからいくつかのものを拝借しているが、これらの電気グランドツアラーは、まったく独自の、1対の馬力のある車種といえる。

基本概要

Porsche(ポルシェ)のTaycanと同じ800ボルトのアーキテクチャーをベースにしたe-tron GTは、前後輪に動力を供給する永久磁石式同期電動機(PMモーター)により、総出力469HP(オーバーブースト時最大522HP)を生み出している。RS e-tron GTは同じモーターで590HP(オーバーブースト時637HP)を出力し、Audiによると3.1秒で時速60マイル(約96km)に達するという。

どちらのクルマも能力に優れ、信頼性が高く、スピードも速く、山道や長い高速道路のような長距離走行でも停滞しない。多くの電気自動車と同じように、加速はほとんどシームレスだ。

トルクベクタリングシステムを搭載したAudiの電動「quattro」によるAWD(全輪駆動)の効果で、両車とも、車輪がきしみ始めても、安定した走行性と適切な配分を実現する。このシステムでは、急なコーナリングや車線変更、滑りやすい状態での走行時に、スリップした車輪に可変量の動力を送ることができる。

筆者が試乗した車には夏用タイヤが装着されていた。そして、ロサンゼルスのダウンタウンから北東50マイル(約80km)にあるアグアダルシーエアパークの閉鎖されたスラロームコースで、急な車線変更のテストを最後に行った。RS e-tron GTを3回連続でコーンを通過させてシステムの感触を確かめ、そのたびにクルマは安全で、しっかりと接地し、制御されていると感じた。

ステアリング、スピード、航続距離

2022年型Audi RS e-tron GT(画像クレジット:Audi)

e-tron GTとRS e-tron GTには、後輪ステアリングもオプションで付いている。時速30マイル(約48km)以下では、後輪は前輪と反対方向に最大2.8度旋回し、e-tron GTとRS e-tron GTの旋回半径を小さくする。時速30マイル以上では後輪は前輪と同じ方向に旋回する。このシステムはPorsche Taycanのシステムに類似している(回転角度が小さい)。

エアパークの平坦な滑走路では両車両のオーバーブーストを試すことはできなかったが、RS e-tron GTの起動制御を使って0-100mph(0-160km/h)の加速を連続して行ったところ、ジャーナリストの集団の中で2番手につけ、0-60を3.24秒、0-100を7.29秒で記録した。39度の暑さの中、コールドタイヤでのこの数字はかなり印象的だ。滑走路の終わりまでに、速度が時速120マイル(時速193マイル)に近づいているのを確認した。これは電子的に制限された最高時速155マイル(約249km)より32マイル(約51km)短い速度だ(e-tron GTの電子的に制限された最高時速は152マイル[約244km])。その後ブレーキを踏んだ。フル充電されたRS e-tron GTは、連続して3回走行した後、20マイル(約32km)の航続距離を失っただけだった。

RS e-tron GTのEPAによる推定航続距離は232マイル(約373km)であるのに対し、e-tron GTの推定航続距離は239マイル(約384km)である。

充電性能

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

これらのEPAの推定航続距離は、低い位置に搭載されたの93kWhバッテリーパック(両車とも同じ)の成果であり、Audiによると270ボルトの充電器(DC急速充電)では23分で最大80%を充電できるという。

価格は、e-tron GTが9万9000ドル(約1088万円)から、RS e-tron GTが13万9900ドル(約1537万円)からとなっている(いずれも1045ドル[約11万円]のdestination charge[輸送費]を除く)。この価格には1回限りの限定特典が付いている。

AudiはElectrify Americaと提携し、3年間無料で無制限の公共充電サービスを提供する(時間制限がない)。Qmeritを利用した家庭用充電ステーションもある。e-tron GTとRS e-tron GTには、標準のデュアル充電ポートと、240ボルト対応の9.6kW充電システムを装備しており、オーナーはあらゆる場所で充電が可能となる。Electrify Americaは、Dieselgateのスキャンダルを受けて、Audiを所有するVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)が立ち上げた。

充電器を見つけるには「MMI」と呼ばれるインフォテインメントシステムと、センターコンソールに搭載された10.1インチのタッチスクリーンを利用する。ナビゲーションに進み、プラグと充電器のリストが表示されたアイコンをクリックすると、充電器の一覧が表示される。

筆者はワンデイドライブで充電器を探す機会はなかったが、Audiによると、同社のMyAudiアプリ(スマートフォンとデスクトップで利用可能)とMMIの両方を通じて、EA(Electrify America)の充電器とそのステータス、可用性を簡単に確認できるという。ドライバーは好みの充電レベル(レベル1からDC急速充電器)でソートし、Audiの車載インターフェイスを離れることなく充電器にアクセスできるとAudiは述べている。

ドライバーはEAのアプリやMyAudiアプリを使ってスマートフォンで検索を行い、現在利用可能なワイヤレスのCarPlayや、筆者が運転したe-tron GTやRS e-tron GTでは利用できなかったが、プロダクションモデルに搭載されるワイヤレスのAndroid Auto経由で車に道順を送ることができる。中央のアームレストにあるUSB-Cポートを介してスマートフォンに接続することも可能だ。

筆者はオーナーではないため、MyAudiアプリを使うことはできなかったが(プライバシー確保のために車両のVINをアプリに接続する必要がある)、ドライバーはMyAudiアプリでルートを計画することができ、システムが自動的に途中で充電停止を行い、十分なバッテリーを確保して確実に到着するようにするとAudiは説明している。

完全電動式の高級車にシームレスに移行するために、もう少しサポートを受けたいと考えている高級車購入者に向けて、Audiはe-tron GTとRS e-tron GTを含むEV向けのAudi Careをローンチする。参加ディーラーでは、オーナーは追加で999ドル(約11万円)と税金を支払うことで、ワイパーやブレーキパッドなどの消耗品、サービスアポイントメントのための係員の送迎、モバイルサービス(タイヤ交換、基本的なメンテナンス)の提供を受けることができ、オーナーが必要とすれば年に10回までAudiセンターに無料で行ける。Audiはまた、e-tron GTまたはRS e-tronを購入すると、Silvercar by Audiの7日間の無料レンタルも提供する。

バーチャルコックピットはもちろん優れもの

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

e-tron GTとRS e-tron GTは、e-tron (SUV) とAudi R8の両方の機能を融合させたもので、どちらのGTにもデュアルスクリーンが搭載されており、ドライバーと同乗者に多くの機能を提供する。ドライバーの前にある12.3インチのバーチャルコックピットは、現在の大部分の現代的なAudiに見られるように、高度にカスタマイズ可能だ。マップ・ビューからバッテリーステータスへのアクセスまで、ハンドルからのわずかなインプットで提供される。

このシステムはナビゲーションを簡単にする。ドライバーや同乗者はステアリングの操作ボタンを押すだけで目的地を音声で設定でき、クルマに住所や目的地、都市を伝えることができる。

この音声システムは驚くほど堅牢で、筆者が使ったときにはやや遅れ気味だったものの、自然言語のインプットを認識し、特定の言葉を発するよう話者に促す。ルートをキャンセルして目的地の変更を入力する操作を運転しながら行うか、一時停止するかという2つの選択肢にさらされるような時に使える。自分の意図をシステムに認識させるために、何度も試さなければならなかったことは一度もなかった。

センターコンソールに搭載された10.1インチのインフォテインメントシステムは、ドライブモードの選択から特定のAudiアプリ、ナビゲーションオプション、オプションのマッサージ、ヒートおよびクールシートなど、あらゆるものを提供する。

Audi MMIの中央画面はタッチ式静電容量方式で、ユーザーはアイコンをドラッグ&ドロップして自由にホーム画面をカスタマイズできる。同乗者が望む場合(そして適切な機器を持っていれば)、シートヒーター、クーラー、マッサージをすべてMMIから同時に実行することも可能だ。

豪華さはそれほど必要ない?

2022年型Audi e-tron GT(画像クレジット:Audi)

どちらのGTも10万ドル(約1100万円)程度を提示しており、そのためにもう少し華やかなものを求める買い手もいるかもしれない。

発売年は、高価だが特別なオプションとしてRS e-tron GTのワンイヤーパッケージを提供する。2万350ドル(約224万円)の「カーボンパフォーマンス」パッケージには、カーボンファイバー製のトリム、照明付きドアシル、黒のバッジ、後輪のステアリングの他、21インチの特殊ホイール、赤のセラミックブレーキキャリパー、赤のシートベルト、内側の赤のステッチなどが含まれている。

高級ブランドとしての名声、パワー、そして先進テクノロジーを手に入れたい方に、豪勢なものは一切搭載していない(必ずしも必要ではない)が、高貴な雰囲気を持つ電化されたグランドツアラーとして、2022 Audi e-tron GTとAudi RS e-tron GTは最適といえよう。どちらも現在販売中である。

関連記事
EUがBMWとVWに約1110億円の制裁金、90年代からの排ガスカルテルで
アウディの全電動クロスオーバーQ4 e-tronはダイナミックARディスプレイを搭載
フォーミュラEドライバーがアウディチームから追放、バーチャルレースで替え玉

カテゴリー:モビリティ
タグ:AudiEVレビュー

画像クレジット:Audi

原文へ

(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。