ガン治療の改良からミツバチの保護、髪に似た植物由来の繊維までIndieBio最新クラスの参加企業を紹介

超正確なガン治療!植物から人間のもののような毛を生やす!ミツバチを救う!

IndieBio(インディーバイオ)の参加企業の幅は、いつだってワイルドだ。今回の顔ぶれも、決して期待を裏切らない。

SOSVのアクセラレータープログラムであり、アーリーステージのバイオテック企業に特化したIndieBioは、参加企業に25万ドル(約2700万円)以上の資金、メンターシップ、そしてアイデアを実現させるために自由に使える生物学研究室を提供する。

創設者のArvind Gupta(アルビンド・グプタ)氏は2020年このアクセラレーターを去り、ベンチャー投資企業Mayfield(メイフィールド)に移ったのをきっかけに、MayfieldとIndieBioは共同でGenesis Consortium(ジェネシス・コンソーシアム)を結成し、IndieBio参加企業に、オプション投資としてさらに25万ドルを提供している。

当初、IndieBioはサンフランシスコだけで運営されていたが、2020年にニューヨークでもコホートを募集するまでに拡大し、現在は並行して運営されている。サンフランシスコは執行取締役Po Bronson(ポー・ブロンソン)氏が、ニューヨークは執行取締役Stephen Chambers(スティーブン・チャンバー)氏が率いている。

デモデーはまだ先になるが、IndieBioは現在プログラムに参加している企業について少しだけ教えてくれた。断っておくが、IndieBioは多くがその基盤となる科学的概念の実現性がまったく白紙の状態の、非常に初期段階の企業に限って投資を行っている。「私たちのプログラムは、私たちの熱意です」とブロンソン氏は私に話した。目標は、数百万ドル(数億円)ではなく数百、数千ドル(数万、数十万円)の投資で各企業のコンセプトを実証し、大きなビジネスにつなげる道を探ることだ。「私たちはリスクを削り取り、次に構える投資家たちのためにディリスキングしているのです」。

ここに、ニューヨークとサンフランシスコ双方のプログラムに参加している企業をアルファベット順に紹介しよう。

ニューヨーク

Beemmunity(ビーミュニティー):人類が生き延びるためにはミツバチが必要だが、その数は激減している。大きな原因の1つに神経毒系農薬があるといわれている。「ミツバチのための農薬防護策」という触れ込みのBeemmunityは、ミツバチがそれを摂取することで、神経毒系農薬を吸収し、老廃物として排泄させる「マイクロスポンジ」の開発を進めている。間もなく実地試験を行う予定。

Brickbuilt Therapeutics(ブリックビルト・セラピュティクス):歯周病や口腔ガンジダなどの予防と治療を助ける生物療法のど飴。

Bucha Leather(ブシャ・レザー):バクテリア・ナノセルロースから培養される動物由来ではない合成皮革。同社の製造方法なら、数週間で「分厚いマット」素材を作れるという。

Free To Feed(フリー・トゥー・フィード):赤ちゃんに母乳アレルギーが出たとき、どの成分に反応しているかを探し当てるのは、大変な時間と根気のいる作業だ。Free to Feedは、母乳に含まれる食品タンパク質の種類を特定する試験紙を開発している。これにより母乳を赤ちゃんに与えている母親は、どのタンパク質がアレルギー反応を起こしているかを理解しやすくなる。

Gypsy Basin Genomics(ジプシー・ベイジン・ジェノミクス):HIVが原因の早期口腔ガンを、歯医者でうがいをするだけで簡単に検査できる方法を開発している。

Harmony Baby Nutrition(ハーモニー・ベイビー・ニュートリション):「乳成分不使用の、アレルギーを起こさない、環境に優しい唯一の乳児用粉ミルク」を謳うHarmonyは「ヒトの母乳にほぼ近い」乳児用粉ミルクを作っている。

MicroTERRA(マイクロテラ):ウキクサを使って養魚場の排水をタンパク質に変換する。ウキクサは、その発育過程で養魚場の排水を浄化する。成長すると、そこから採れる「ウキクサのタンパク質濃縮物」は動物の餌のタンパク源として利用できる。

Nyoka Design Labs(ナイヨカ・デザイン・ラブズ):生物発光を利用した、毒性のない、生分解性の、リサイクル可能なグロースティック。

Sequential Skin(シーケンシャル・スキン):同社の肌の検査キットで顔を拭い同研究所に送ると、その人の肌の微生物に適した製品に関する詳細なレポートを受け取ることができる。

Stembionix(ステムバイオニクス):個人的な幹細胞バンクを念頭に、扱いが複雑になり成育能力に悪影響を及ぼすこともある冷凍解凍の手順を踏むことなく、幹細胞を輸送できる「郵送可能な生物反応器システム」を開発する。

サンフランシスコ

Aja Labs(アジャ・ラブズ):「ヘアエクステのビヨンドミート」を売り言葉に、見た目も感触もヒトの髪の毛とよく似た繊維を植物から育てる。化学薬品を大量に使用する合成技術も人毛も使わずに、ヘアエクステンションを作れる可能性がある。

Avalo.ai(アバロ・エーアイ):解釈可能性のある機械学習を用いて、優れた作物の開発に役立つ植物の遺伝子(および遺伝子の働き)を高速に特定する。

California Cultured(カリフォルニア・カルチャード):実験室で育つカカオ。苦みが少ないため、少量の砂糖でもおいしく加工できるカカオを栽培できるという。

Canaery(キャネリー):「マシンビジョンが視覚に対して行うように、匂いに対して行う」ことを目指す同社は、対象物の「匂いの指紋」を分析するニューラルインターフェイスを構築し、港や検査場などで、X線やカメラを使わずとも(またはそれらと併用して)危険な化合物の特定が行えるようにする。

Capra Biosciences(キャプラ・バイオサイエンセズ):発酵過程で発生し、通常は邪魔者となる生物膜を、エンジンオイルや化粧品用のレチノールなどの製品に変換する方法を探る。

Lypid(リピド):動物の油と同じ温度で溶け、同じ食感を持つ動物の脂質のように振る舞うビーガン用のオイルを開発し、植物由来代替肉の品質向上を目指す。

OncoPrecision(オンコプレシジョン):患者から採取した細胞に薬剤を投与することで、ガン専門医が無数にある治療薬の中から迅速に最適なものを見つけられる手段を構築する。目標は7〜14日で最適な薬を探し出すこと。

Ozone Bio(オゾン・バイオ):死細胞培養(ゾンビザイム)を使い、グリーンな方法でナイロンを作り出す。

Panacea Longevity(パナシア・ロンジェビティー):断食せずに断食と同じ健康効果を再現する方法を探る。「断食時の体の自然な反応を模倣」する栄養素を特定し、サプリの開発を目指す。

Prolific Machines(プロリフィック・マシーンズ):細胞分化を高精度でコントロールする。たとえば培養肉では、この技術を使えば、ステーキ肉の赤身と脂身をそれぞれどこに作るかを決められる。

Proteinea(プロテイニア):ハエの幼虫を使い、医薬品用の「医薬品品質のタンパク質」を安価に早く作り出す。

Sundial Foods(サンダイヤル・フーズ):植物由来のチキンに「皮」を付ける。まずはそれをコーティングすることで、植物由来の鶏の手羽を作る。

Vertical Oceans(バーティカル・オーシャンズ):垂直農法の考え方をシーフードに応用し、積み重ねが可能なタワーで、高効率、低廃棄物、持続可能なエビの養殖を可能にする。

カテゴリー:バイオテック
タグ:IndieBioアクセラレータープログラム

画像クレジット:IndieBio

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(文:Greg Kumparak、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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