キーワードは“決済”——フリマアプリ「フリル」が楽天傘下での成長を選んだワケ

Fablic代表取締役CEOの堀井翔太氏

Fablic代表取締役CEOの堀井翔太氏

フリマアプリ「フリル(FRIL)」を運営するFablic。同社の楽天による買収が9月5日、正式に発表された。楽天では8月末にFablicの発行済み全株式を取得。買収額は非公開だが、数十億円規模だと見られる。

楽天はすでにフリマアプリ「ラクマ」を展開しているが、それぞれサービスを補完しつつも、独立した運営を続ける。Fablicの創業者であり、代表取締役CEOの堀井翔太氏は今後も同社のトップとして指揮を執る。同社のこれからについて堀井氏に聞いた。

成長には大きな資本が必要

Fablicは2014年にクックパッド、コロプラ、ジャフコを引受先とした第三者割当増資を実施。アプリは500万ダウンロードを達成。10代から20代の女性を中心にサービスを拡大してきた。そんな中で発表された今回の楽天の買収。堀井氏は次のように語る。

「7月から次の資金調達を目指して動いている中で三木谷さん(楽天代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏)と話した。(買収額は)正当な評価。2016年にあった買収の発表としてはかなりの金額ではないか。これからプロモーションなども含めてサービスを育てていく、資金調達的な側面も大きい」「サービスの成長は順調。だがそれ以上のところに引き上げるには大きな資本が必要だった」(堀井氏)

国内フリマ市場を見ると、後発サービスである「メルカリ」が月間流通総額100億円以上という数字を発表しており、事実上の独走状態が続いている。これに対して楽天では、若い女性に強いフリル、そして30〜40代男性や主婦層中心で、家電やガジェットなど高単価商品が多い(手数料無料であることが影響しているようだ)ラクマという2つの特化型のサービスをぶつけていく(日経新聞などの報道では2サービス合計での月間流通総額は30億円程度とのこと)。

すでにフリルの楽天ID対応や、楽天スーパーポイントを利用したキャンペーンの実施などが発表されているが、これに加えて、楽天の各種サービスからの送客なども検討中だという。また、テレビCMをはじめとしたマーケティングを実施するほか、フリルの手数料無料化も間もなく開始する。

楽天は海外事業を見直している状況だ。これまで積極的に海外に進出してきた同社だが、2016年に入ってシンガポールやインドネシアなどでのマーケットプレイス事業を終了。その他の地域でも一部の拠点を閉鎖した。一方でリソースをラクマに集中。3月には台湾でサービスを開始したほか今後の東南アジア展開も控える。ここに今後フリルが関わる可能性もある。米国での躍進が聞こえてくるメルカリをはた目に、アジア圏でのサービス拡大を狙っているようにも見える。(ただしCarousellShopeeといった現地のサービスが先行している)。

フリマアプリは「決済」に繋がる

堀江氏は今後の展開について、「日本で一番長い間フリマアプリをやっているからこそ思うが、フリマアプリは(機能的に)コモディティ化してきている。お金で殴り合うだけでなく(大量の資金を投下してマーケティングなどで競合と戦うという意味)、その次を作らないといけない」とも語る。ではその次とは何か?堀井氏と話す中で浮かび上がってきたキーワードは決済だ。

今、決済まわりのサービスが非常に活気づいている。例えばBASEがの「PAY.JP」を立ち上げ、コイニーが「coineyペイジ」、AnyPayが「AnyPay」といったスタートアップ発の決済サービスが多く登場しているし、LINEも「LINE Pay」をヤフーも「Yahoo!マネー」を提供している。

僕がこれらの決済サービスの話を聞いて思ったは、これらのサービスは「モノを買う」処理を自前で行うということだけを狙っているのではないということだ。当たり前のことながら決済をすれば売り手と買い手のお金が動くわけだが、今度はその動いたお金(=売上)を同じ決済プラットフォームで流通させる、要は「財布がなくても決済プラットフォームだけを使ってお金を電子的にやり取りする」ということを目指しているのではないか。

例えばBASE代表取締役の鶴岡裕太氏はPAY.JPでID決済を提供する際に「現金をリプレイスするプラットフォームを作る」と語っていたし、AnyPay代表取締役の木村新司氏は「デビットカードをリプレイスする」ということを語っていた。すでに中国ではAlipayやWeChat Paymentといったモバイル決済の利用が拡大している。日本では資金決済法の絡みもあってスタートアップが簡単にチャレンジできる領域ではないが、魅力的な市場があることは間違いない。Fablicも楽天と組んでこの領域にチャレンジするのではないか、ということだ。

堀井氏にそんな話をしたところ、具体的な回答こそ得られなかったものの次のように語ってくれた。「楽天はECの会社であると同時にFinTechの会社。資金移動業者であり、銀行も証券も持っている。ECはこの先、物流や決済と繋がっていく。そのとき(楽天は)強力な後ろ盾になってくれる」(堀井氏)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。