ギグワーカーの財務管理を支援するフィンテックアプリのPortifyが約10億円調達

Portify(ポーティファイ)は、英国ロンドンのフィンテックスタートアップで、ギグワーカーなどの柔軟に働く現代の「自営業者」に財務管理を支援するアプリや金融商品を提供している。同社は、シリーズAで700万ポンド(約10億円)を調達した。1年前にはシードで130万ポンド(約1億9000万円)を調達している。

今回のラウンドはRedalpineがリードした。RedalpineはN26、Taxfix、Finiataなどにもアーリーインベスターとして投資している。既存の投資家からはKindredとEntrepreneur First(EF)が参加した。

PortifyはEFの卒業生でCEOのSho Sugihara(ショウ・スギハラ)氏とCTOであるChris Butcher(クリス・ブッチャー)氏が2017年5月に創業した。経済的に不安定な形態で働く労働者が直面する問題に立ち向かう。柔軟な働き方をする、いわゆるギグエコノミーの労働者、商店やクリエイティブ業界などの自営業者が対象だ。

同社は、モバイルアプリからアクセス可能な独自の金融商品を多数提供する。また、オープンバンキングを利用して、現在の資産・負債・収入に関する情報を提供し、短期および長期の財務計画を支援する。最近まで、同社のマーケティング・営業戦略は主にB2B2Cで、Deliverooなどのギグエコノミープラットフォームとのパートナーシップによるものだった。現在はB2Cに手を広げている。

「労働者が特定のパートナープラットフォームで働いていなければ、アプリにアクセスできなかった」とPortifyの共同創業者兼CEOのスギハラ氏は言う。「ターゲットとなる現代的な労働者の特性に100%照準を合わせ、経済面で彼らを社会に包摂したかった。だが、初期のユーザーを観察してわかったのは、現代的な労働者の多くが「credit Invisible」「thin file」(いずれもクレジットカードの使用履歴などの信用情報が十分に蓄積されていない人々)で、基本的な金融商品が利用できないということだ」。

「信用情報が蓄積されていない理由はさまざまだが、主な原因は、収入パターンが不安定、最近英国へ移民してきたばかり、信用情報がないためにクレジット商品を使ったことがない、といったものだ」。

スギハラ氏によると、信用情報不足の労働者の多くはギグ(単発の仕事)や一時的な人材派遣プラットフォームで収入を得ているが、プラットフォームを頻繁に切り替えている労働者も多い。零細の商店経営者や、被雇用者だが一時的に副業に携わる労働者が含まれる。

「あらゆる信用情報不足の労働者を経済的な面で社会に包摂するという使命を果たすため、アプリをできるだけ使いやすくすることが重要だと思った」と彼は説明した。「つまり、ユーザーがアプリストアからアプリを直接ダウンロードできることが大事だ」。

Portifyは、調達した資金でマイクロビジネス向けに個人ローンを提供し、信用情報構築を支援する予定。すでに今年初めにアプリでクレジットサービスを始めた。

「当社のリボルビングクレジット枠は現在250ポンド(約3万6000円)が上限だ」とスギハラ氏は言う。「特定の要件を満たすユーザーについては、500〜1000ポンド(約7万3000円〜14万6000円)に引き上げる予定だ。現代的な労働者の多くが、小規模企業や個人商店であり、収入や売上高の変動などの中小企業に典型的な問題に直面している。大きめの中小企業のキャッシュフローの問題を解決する手段は数多くあるが、現代的な労働者向けには乏しい。消費者・ビジネスいずれにも当たらないということで見落とされてしまう。既存の金融機関は彼らにサービスを提供する最善の方法を知らないのだ。ここに大きなチャンスがあり、追いかけている」。

Portifyは主要な信用調査機関と協力して、ユーザーの同意を得たうえでアプリが生成したデータを共有し、ユーザーの信用度向上に役立てている。

「クレジットにアクセスできないことは、現代的な労働者にとってストレスが大きい」とスギハラ氏は説明する。「現代的な労働形態で週80時間以上働き、全国平均以上の収入を得ていても、フルタイムの仕事をしていないために、住宅ローンはもちろんのこと、基本的な個人ローンを組むのにも苦労することがある。単にフルタイムの仕事に就いておらず、既存の金融機関のチェックリストでチェックを入れられないからだ。ユーザーはこの問題を解決するために当社の支援を必要としている」。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。