ギフト特化EC「TANP」が5億円調達、豊富なオプションと独自のロジスティクス軸に事業拡大

「TANP」を運営するGraciaのメンバーと投資家陣。前列左から4番目が代表取締役CEOの斎藤拓泰氏

ギフトプラットフォーム「TANP」を展開するGraciaは8月28日、グロービス・キャピタル・パートナーズなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により、シリーズBラウンドで総額5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

Graciaにとっては2018年10月に1.2億円を調達して以来の資金調達で、本ラウンドを含めた累計の調達額は6.4億円になる。同社では今後も引き続きギフト体験に特化したプラットフォーマーとしてTANPのアップデートを行っていく方針。調達した資金を活用しながら人材採用と事業拡大を計るという。

今回同社に出資した投資家のリストは以下の通り。なおGraciaでは資金調達と合わせて、グロービス・キャピタル・パートナーズの⾼宮慎⼀氏が社外取締役に就任したことも明かしている。

  • グロービス・キャピタル・パートナーズ
  • スパイラルベンチャーズ
  • 福島良典⽒
  • 有安伸宏⽒
  • ⼤湯俊介⽒
  • 遠藤崇史⽒
  • ANRI(既存投資家)
  • マネックスベンチャーズ(既存投資家)
  • ドリームインキュベータ(既存投資家)
  • SMBCベンチャーキャピタル(既存投資家)

ギフトならではの豊富なオプションはユーザーの8割以上が活用

冒頭でも触れた通り、TANPはギフトに特化したECサイトだ。誕生日や結婚祝い、母の日などギフトを贈るシチュエーションや相手の性別・関係性に合わせて、豊富な品揃えの中からぴったりな商品を探しやすい仕組みを構築。そこにギフトならではの幅広いオプションを組み合わせ、良質な購買体験の実現を目指している。

この「オプションのバラエティ」とそれを支える「独自のロジスティクス」はGraciaが前回の調達時からさらに磨きをかけてきたポイントだ。

TANPでは複数種類のラッピングや紙袋を始め、メッセージカード、ドライフラワー、名前の彫刻、熨斗(のし)サービス、ダンボール内の装飾など豊富なオプションを用意。商品ごとにその数は異なるが、たとえば「誕生日や女子会で使えるバルーン」「結婚用のご祝儀袋」などユーザーの要望に合わせて細かいオプションを選択できるようになっている。

ギフトを購入する手段自体は百貨店や専門店のほか、既存のギフトECやAmazonのような総合モールECなどすでに複数の選択肢が存在するが「ギフトに特化することで実現した商品探しの体験やオプションの充実度」はTANPの大きな特徴だ。

Gracia代表取締役CEOの斎藤拓泰氏によると購入時に何らかのオプションを選択するユーザーは8割を超えているそうで、TANPが選ばれる要因の1つになっているのはもちろん、コアなファンを形成するきっかけにもなっているという。

TANPで選べるオプションの一部。商品ごとに種類は異なるが、オプションを組み合わせることで手軽に凝ったギフトを作ることができる

またギフトに特化してユーザー体験を作り込んでいることは、コンシューマー側だけでなくギフトを販売するメーカー側にとっても大きな意味を持つ。

TANPでは現在the body shop、gelato pique、DEAN&DELUCAなどの有名ブランドを筆頭に約300社ほどと取引をしている。斎藤氏の話では多くのブランドからは「(ギフト商品のみが掲載されているため)ブランドが毀損されるリスクが少ないことと、ギフトに特化したロジスティクスの仕組みを築いていること」が評価され、取引に至っているようだ。

現在はブランドの拡大に伴ってTANPで購入できる商品数も増え、色違いなども合わせると3000〜4000種類の商品を掲載。中には他のサイトには出品していないようなメーカーもいるため、TANP以外では手に入りづらいものもある。

「一見ギフトは自家需要とそこまで違いがないようにも見えるが、実際はメッセージカードを含む同梱物やラッピングなど専用のオペレーションが不可欠だ。メーカー側もギフトの取り組みを強化したい意向を持ってはいるが、どこに出店するべきかわからなかったり、ギフト用のオペレーションに自社で対応するのは難しいといった悩みを抱えていた。ロジスティクスの部分からしっかりと支援してもらいたいというニーズは大きい」(斎藤氏)

裏側のシステムはフルスクラッチで開発、ロジスティクスが強みに

GraciaはTANPの性質上ギフトにフォーカスしたECの会社に見えるが、実際はロジテックの会社と言っても過言ではないくらいロジスティクスの仕組み作りに力を入れている。

TANPを裏側で支えている在庫管理や発送管理、CS管理などに関する各システムは基本的にフルスクラッチで開発。それらを軸に社内のオペレーションを最適化することで「オプションのバラエティを増やしながらもビジネスとしてスケールできる体制」(斎藤氏)を時間をかけて構築してきた。

「テック企業ぽくないと言われることも多いが、実は表からは見えない裏側のシステムの部分でテクノロジーをフル活用している。ロジスティクスを効率的に回す仕組みなどは意外と難易度が高く、そこをフルスクラッチでやってこれているので開発力にもそれなりに自信を持っている」(斎藤氏)

ロジスティクスの体制は前回調達時に比べてさらに洗練されてきているそうで、1日あたりの最高発送数は1200件まで拡大。前回は「最も多い時で800件」という話だったから、オプションの数が増えたにも関わらず1日に対応できるキャパシティは400件分増えたことになる。

このような裏側の仕組みが整ってきたことに加えて商品数の増加などの要因も合わさり、事業規模も成長。売上の年次成長率は約400%ほどだという。

細かいアップデートにも日々取り組んでいて、最近ではAmazonのAPIを繋ぎ込み、地域のコンビニで24時間受け取れる機能を作った。ギフトは「いつまでに送らないといけない」という明確な期限があるからこそ、ユーザーからも好評のようだ。

「オペレーションの効率化が進んだことで対応できるオプションも増え、今まではあまり多くなかった『結婚』や『出産』のようなセミフォーマルなギフトの利用も増加してきている。ロジスティクスは作り込むのに相応の工数はかかるが、一度確立できればそうそう壊れない。この仕組みがTANPの競合優位性にもなるし、今回の調達では(トラクションなどだけでなく)ロジスティクスの部分を評価して頂けたと思っている」(斎藤氏)

今後は購入データの収集や活用も一層強化へ

Graciaでは今回調達した資金を用いて人材採用を強化するほか、マーケティングへの投資も行っていく計画。現在の強みにもなっているオプションやロジスティクス周りを引き続き磨いていくほか、年内にはアプリ版のリリースも予定している。

中長期的には「『ギフトを買うならTANP』という、ギフト市場における第一想起を獲得することが大きな目標」(斎藤氏)であり、それに向けて取引先のブランドや商品数の拡充なども含め、プロダクトをアップデートしていく方針だ。

特に斎藤氏が今後のポイントの1つに挙げたのが、TANPを通じて収集されたデータを活用した最適なギフト選びのサポート。現在もLINEを通じてユーザーにぴったりのギフトを提案する「プレゼントコンシェルジュ」を提供しているが、サービス上で自動でレコメンドできるような仕組みまでは構築できていないという。

「そもそも何を選んだらいいのかわからない」という問題はギフトを選ぶ際に多くのユーザーが抱えている根本的な課題だ。Graciaとしては購入データの収集や活用にも今後力を入れながら、ユーザーとメーカーを繋ぐプラットフォーマーとしてギフト市場でさらなる成長を目指す。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。