クアルコムが新たなAR開発プラットフォームを発表、ハンドトラッキング技術のClay AIR買収も

Qualcomm(クアルコム)は米国時間11月9日、頭部装着型AR(拡張現実)体験を構築するための新しい開発者プラットフォーム「Snapdragon Spaces XR Developer Platform(スナップドラゴン・スペーシズXRディベロッパー・プラットフォーム)」の提供を開始した。このプラットフォームでサポートされているハードウェアは、現在のところ、Lenovo(レノボ)のスマートグラス「ThinkReality A3(シンクリアリティA3)」(Motorola[モトローラ]のスマートフォンと組み合わせて使用する)のみだが、2022年前半にはOppo(オッポ)やXiaomi(シャオミ)製のハードウェアにも拡大する予定だ。

Qualcommは、このソフトウェアエコシステムを構築するために、Epic Games(エピック・ゲームズ)の「Unreal Engine(アンリアル・エンジン)」、Niantic(ナイアンティック)の「Lightship(ライトシップ)」プラットフォーム、Unity(ユニティ)、Viacom CBS(バイアコムCBS)など、幅広いパートナーを揃えた。Deutsche Telekom(ドイツテレコム)とT-Mobile U.S.(TモバイルUS)もQualcommと提携し、hubraum(フブラウム)プログラムを通じて、Snapdragon Spacesを利用するスタートアップ企業を支援する。

画像クレジット:Qualcomm

現在のところ、このプログラムにアクセスできるのは、ごく一部の開発者に限られる。現在参加しているのは、Felix & Paul Studios(フェリックス&ポール・スタジオ)、holo|one(ホロ・ワン)、Overlay(オーバーレイ)、Scope AR(スコープAR)、TRIPP(トリップ)、Tiny Rebel Games(タイニー・レベル・ゲームズ)、NZXR、forwARdgame(ファワードゲーム)、Resolution Games(レゾリューション・ゲームズ)、TriggerGlobal(トリガーグローバル)など。一般提供は2022年の春に開始される予定だ。

また、Qualcommは同日、ハンドトラッキングとジェスチャー認識ソリューションのために「HINS SASおよびその完全子会社であるClay AIR, Inc.(クレイ・エア)のチームと一部の技術資産」を買収したと発表した。これは2019年のWikitude(ウィキチュード)買収に加え、同社のARへの取り組みを飛躍させるためのもう1つの動きだ。

「私たちが、スマートフォン向けのVIO(visual-inertial odometry、視覚・慣性を使った自己位置推定)のようなアルゴリズムで、拡張現実を検討する研究開発プログラムを始めたのは、2007年にまで遡ります」と、Qualcommのバイスプレジデント兼XR担当GMであるHugo Swart(ヒューゴ・スワート)氏は、今回の発表に先立つプレスブリーフィングで述べている。「2010年代にはODGのようなデバイスも可能にしてきました。2014年に仮想現実や拡張現実に特化した新しいチップを開発しましたが、私たちは長期的な視点で取り組んでいます。目指す場所にはまだ達していないことが、私たちにはわかっています。没入型と拡張型の両方の体験を可能にするARグラスという至高の目標を実現するには、まだまだ投資が必要です」。

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今回発表されたプラットフォームは、ローカルアンカーとパーシステンス、ハンドトラッキング、オブジェクト認識およびトラッキング、平面検出、オクルージョン空間マッピング、メッシュ化などの機能をサポートすることができる。

Qualcommはこのプラットフォームで、開発者がARエクスペリエンスを構築する際の障壁を低くしたいと考えている。開発者は基本的なARアプリケーションを迅速に構築するためのドキュメント、サンプルコード、チュートリアル、追加ツールを利用できるようになる。このエコシステム構築を希望する企業をさらに支援するために、QualcommはPathfinder(パスファインダー)と呼ばれる追加プログラムも開設する。このプログラムでは、ソフトウェアツールやハードウェア開発キットへの早期アクセス、プロジェクトへの追加資金、Qualcommとの共同マーケティングやプロモーションなどが提供される。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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