クッキーは死んだ: ユーザベースのアトリビューションにしか未来はない

[筆者: Christian Henschel ]

編集者注記: Christian HenschelはadjustのCTOでファウンダ。同社はモバイルアプリのアトリビューションとアクセス分析を提供している。

インターネットを利用するマーケティングでは、クッキーが顧客や見込み客を追尾するための主な方法だ。しかしモバイルの利用が増えている昨今では、モバイルのブラウザがサードパーティのクッキーをサポートしていないため、クッキーは廃(すた)れつつある。というか、クッキーはすべてのモバイル機器が普遍的にサポートしていない。だからそれを複数のデバイスにまたがって利用することもできない。

昨年、クッキーによるユーザ追尾をやめる計画を発表したMicrosoftGoogleFacebookはクッキーに代わるものを開発したが、そのためますますクッキーの将来性は危うくなった。FacebookやTwitterなどの大手がすでに使っているハイブリッドモデルは、基本的にユーザベースの技術だ。やがてこれらの企業は、このアトリビューションによる広告の形式を決めることになるだろう。モバイルはあまりにも急速に支配的な勢力になってきたので、企業やマーケターはこのポストクッキーのオンラインマーケティング方式にまだ十分に習熟していない。

今市場は現実に、クッキーを使えない世界におけるユーザ追跡方法として、広告のためのユニークなデバイス識別子(Device Identifier for Advertising(IDFA))やそのほかのデバイス識別方法を使う方法へ移行しつつある。また、モバイルとそのほかのプラットホームで共通的に使える方法として、ユーザベースのアトリビューションモデルへのシフトが必要になっている。俗に言われる“人間ベースのマーケティング(people-based marketing)”(すなわちユーザベースのアトリビューション)とは、各ユーザを各人の出自や、アプリ内でやってることにアトリビュート(attribute, 帰属・帰因・結びつける)させることだ。そのための複合的な技術集合によって、アトリビューションの精度が大きく向上する。

今、アクセス分析をSaaSで提供するサービスが伸びているのも、新しいアトリビューションの普及の表れの一つだ。それらCustomer.ioWoopraなどのSaaS企業は、クッキーの有無でビジターの再訪/新規を判断するGoogle Analytics的なユーザ追跡方法に別れを告げている。これらの企業は主に、JavaScriptとユーザベースのアイデンティティ(ユーザの本人性を表す・帯びている何らかの識別子…デバイスの特徴、電話番号など)を使って、複数のプラットホームやコンテキストにまたがるユーザ追跡を行っている。〔参考記事。〕

アプリとそのユーザを追跡するために必要な技術は、プラットホームやストアによってまちまちなので、その技術集合にはいろんな追跡方法をブレンドし、またデバイスの識別方法も含めなければならない。とりわけ、リターゲティング広告がモバイルにもやってきてから以降は(AdRollも最近このゲームに加わったが)、ますますクロスプラットホームな方式が重要になり、クッキーは完全に廃れる。

その方法とは

デバイス識別子は、広告がクリックされたデバイスを識別する。オペレーティングシステムのバージョン、画面サイズ、言語、時刻など、さまざまな非個人データを集めて、識別子を構成する。ユーザが多機能なSDKでアプリをインストールし開いたとき、そのSDKに追跡機能があれば、やはり同じ処理が行われる。

IDベースのアトリビューションのためのアトリビューションの窓は7日間通して開いている。つまり最大7日間、インストールされたアプリ上のクリックとソースのマッチングが行われる。その7日が終われば、そのインストールはオーガニックなトラフィックとみなされる(人工的にクリックを稼ぐボット等でない)。クリックのソースのデバイス識別子が5時間後にも同じなら、95%の確信度でまともなソースとみなされる。そのあとは、データポイントが変わって、何らかのアトリビューションがもはや得られないかもしれない。

得られるアトリビューションが正確であるためには、複数の技術をブレンドすることが重要だ。中でもとくに、アトリビューションの再取得や、より高度な追跡方法を使用するときほど、技術の複合化が重要になる。たとえばGoogle Playのリファラーはほとんどの場合インストールしたアプリのリファラーと同じだが、そこでわざわざデバイス識別子を調べることは、必ずしも無駄ではない。それによって精度が向上することは、確かだ。デバイス識別がなければ、アジア地区に多いサードパーティのストアを追跡できない。そういうストアではクリック時のデバイスIDがないから、リファラーの情報もない。

業界全体が、クッキーはあと数年で廃れるからなんとかしよう、という意思で統一されたのは、わずか1年前のことだ。モバイルデバイスとクロスプラットホームなマーケティングの氾濫によって、デバイス識別(“デバイスの指紋採取”)の方法が発達し、クッキー離れが急速に進んでいる。今度教会へ行ったら、クッキーの冥福を祈り、ユーザベースのアトリビューションの長寿を神様にお願いしよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


投稿者:

TechCrunch Japan

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