クックパッドに雑誌掲載の「プロのレシピ」、月額360円で見放題

レシピサイト「クックパッド(COOKPAD)」が1日、オレンジページやレタスクラブなどの料理雑誌に掲載されるレシピが月額360円(税抜き)で見放題のサービス「プロのレシピ」をスタートした。これまでユーザーの投稿が主体だったクックパッドだが、新たな月額課金サービスでは出版社や有名料理家と提携し、料理雑誌やレシピ本のジャンルでプラットフォームになろうとしている。

各雑誌のレシピを同じフォーマットで

プロのレシピは、料理・生活雑誌や書籍のレシピを閲覧できるサービス。最新号やバックナンバーに掲載されるレシピ約1万品が対象。食材名や料理名で横断的な検索が可能となっている。月額360円の有料ユーザーは見放題で、お気に入りのレシピを3000件まで保存できる。無料ユーザーは毎月3品まで閲覧可能だ。クックパッドの有料ユーザーでも、プロのレシピを利用するには別途、月額料金を支払う必要がある。

クックパッドと提携するいくつかの出版社は、独自にレシピを公開している。プロのレシピはこれらのレシピや、雑誌のみに掲載されているレシピを同一のプラットフォームで閲覧できるのが特徴だ。各社の雑誌は写真やレイアウトでレシピ内容を伝えることがあるが、プロのレシピでそれを再現するのは難しい。そこで、誌面のレシピを出版社の意向を損なわないよう、クックパッド側で編集しているそうだ。「慎重に言葉を選んで編集するのが地味に大変な作業だった」と、同社執行役員の加藤恭輔は振り返る。

通常のクックパッドの写真と比べると、プロのレシピの写真は随分と洗練されているのにも気づく。素人のユーザーが投稿するレシピの中には、いわゆるメシマズ写真が掲載されていることもあるが、プロのレシピは雑誌や書籍と同様に、写真を見て「これ作ってみたい」という気をそそられそう。クックパッドが「冷蔵庫の材料ありき」のプル型でレシピを探すサービスだとすれば、プロのレシピにはプッシュ型でレシピを提案する一面もありそうだ。

月額課金でプロのレシピを見放題にした理由

「生活者の料理実態に目を向けると、料理を作る人が365日クックパッドだけを見ているわけではない。雑誌のレシピも参考にしている」。プロのレシピは、ユーザーの利用シーンを網羅するために作られたサービスだと、加藤は語る。それに加えて、料理の腕が上達した利用者にとっては、クックパッドの必要性が低くなる課題もあったと指摘する。プロのレシピは、クックパッドを卒業した料理上級者に向けて、彼や彼女らが挑戦したくなるレシピを提供する側面もあるのかもしれない。

従来もクックパッドは、「レシピストア」という有料サービスで有名料理家のレシピを提供してきた。しかし、「20品500円」といった都度購入形式では多くのユーザーに利用してもらいにくかったことから、月額課金で見放題のサービスを開始するに至ったのだという。

出版社のメリットは2つある。1つは、のべ月間利用者数4400万人に上るクックパッドユーザーにリーチする機会が得られることで、雑誌や書籍の認知度や売り上げの向上が見込めること。もう1つは、クックパッドとレベニューシェアするプロのレシピ経由の売り上げだ。

「本は紙からウェブに移行されつつあると言われるが、こと、レシピの分野は紙に勝てない部分もある。例えば、料理写真のシズル感はウェブよりも紙に分がある。実際、クックパッドのレシピ本は60万部以上も売れ、改めて紙の強さを実感した。だったら、手を組めばいいというのが今回の新サービス。レシピの魅力だけでなく、雑誌や本そのものの魅力も伝え、パートナーの出版の市場も拡げることを目指したい。」

クックパッドと提携した出版社は以下の通り。今後も随時、提携先を増やしていく予定だ。

クックパッドは、レシピの人気順検索などが可能なプレミアム会員サービスを月額280円(税抜)で提供している。2014年4月末時点の会員数は130万人を突破。純増数は前年比2倍の36万人と、順調に推移しているようだ。2014年4月期の会員事業の売上高は39億6800万円に上るが、プロのレシピが会員事業の新たな収益源になるか注目だ。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。