クラウドキッチンがラテンアメリカで大流行、フードデリバリー競争が激化

クラウドキッチンがラテンアメリカで大流行している。フードテックのスタートアップであるMuyは、1500万ドル(約16億3000万円)のシリーズBを調達して、本拠地のコロンビアからメキシコと、もうすぐブラジルにも進出しようとしている。

ある投資家は「MuyはクラウドキッチンのChipotle(チポトレ)だ」、と言う。同社自身によると、Muyは仮想キッチンとスマートシェフのシステムであり、AIを利用して需要を予測し、それに基づいて料理を作るから食材の無駄が少ないという。スペイン語の「muy」は英語の「very」に相当し、顧客は同社の実店舗やモバイルアプリから自分の好みに基づくオーダーをする。Muyのやり方を他社のおよそ20の実店舗レストランが早くも採用して、早くて作りたてで個人化された料理を顧客に提供している。Muyの創業者であるJose Calderon(ホセ・カルデロン)氏によると、同社は1か月に20万食以上を顧客に提供している。

このラウンドをリードしたのはメキシコの投資家ALLVPで、これまでの投資家であるSeayaも参加した。これでMuyの資金調達総額は2050万ドルになる。

カルデロン氏は、テイクアウト分野の新人ではない。前にはコロンビアのオンラインフードデリバリーサービスのDomicilios(ドミシリオス)で4770万ドル(約51億8400万円)を調達し、その後それはDelivery Heroに買収された

デリバリーのアプリは大流行のため顧客を奪い合う競争も激しいが、それは米国だけでなくラテンアメリカにも飛び火している。サンパウロやメキシコシティ、ボゴタなどの渋滞したハイウェイには、RappiやUberEATSなどデリバリー企業の配達員のバイクがたくさんいる。

カルデロン氏によると、クラウドキッチンによって過密都市におけるオンデマンドのオーダーとデリバリーがより効率的になる。それぞれの国で増え続けている中間層は、通勤時間が長いので家にいない時間が12時間を超えている。食事はデリバリーに依存せざるをえないが、それもできるだけ短時間ですませたい。というわけで、フードデリバリーの進化形であるクラウドキッチン(職域地区にある共用キッチン)の利便性が歓迎される。

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MUYの顧客はコロンビアの実店舗で注文している様子

本格的なレストランは高いし時間を浪費する。軽食レストランは料理の質がいまいちだ。カルデロン氏によれば、そこで昼食市場の大部分、およそ40%は職場へのデリバリーだ。でも彼によると、今後可処分所得が増えれば多くの人が家で料理をしなくなり、Muyのような早くて高品質なサービスを利用するだろう。

クラウドキッチンは、複数のレストランオーナーが共用する本格的な業務用キッチンだ。それに対して米国の投資家はまだ迷っている。ジャーナリストたちはこの仮想スペースのことをゴーストキッチンと呼び、個人経営のレストランにとって脅威と見ている。TechCrunchライターのDanny Crichton(ダニー・クリクトン)は、「クラウドキッチンはレストランのキッチンのWeWorkだ」と書き、「この共用型のキッチンの登場によって突然、フードデリバリーサービス間の戦争が起きている」と言っている。どのサービスもクラウドキッチンで配達品を気軽に調理できるから互いに市場拡大が生じているようだ。

一部の批判にもめげず、米国とラテンアメリカではクラウドキッチンとそれを利用するデリバリーサービスが急増している。カルデロン氏によると、ラテンアメリカのフードサービスの市場機会は2021年に2700億ドル(30兆円)に達する。

ラテンアメリカの市場は小さな企業同士がしのぎを削っているという。上位10社のチェーンを合わせても、そのマーケットシェアは5%だ。米国ならそれは24%に達している。「米国では大手による吸収合併が進み、中小企業が押されている」と彼は語る。

そしてその既存大手が、クラウドキッチンに手を出そうとしている。今年の春にAmazonは、2018年に初めての共用キッチンをパリに開いたDeliverooに5億7500万ドル(約62億5000万円)を投資した。CloudKitchensの持株会社であるCity Storage Systemsは、Uberの創業者で元CEOのTravis Kalanick(トラヴィス・カラニック)氏から1億500万ドル(約114億円)の支配株で支援された。

良くも悪くも米国とアジアと、そして今度はラテンアメリカで、デリバリーサービスとクラウドキッチンは食事に革命をもたらしている。グローバルなデリバリーサービスやクラウドキッチンの勝者や、市場を支配する既存大手はまだ登場していないが、私たちが知ってるのは、昼食を食べることは誰にとっても必要ということだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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