クラウド化の進展が要求する接続の高性能化に応えるファブレスチップAstera Labsが約55.6億円調達

クラウドへ移行する企業が増えるとともに、アプリケーションの数も気楽に増やせるようになり、その結果、ワークロードとストレージのニーズが複雑化している。現在では、機械学習をはじめとする人工知能のアプリケーションが、複雑性をさらに増えている。そこで、その移行を高速化し効率化する技術を開発する企業が新たな資金調達ラウンドを発表し、進化する企業のニーズを支えようとしている。広帯域アプリケーションにつきもののボトルネックを取り除き、企業のデータのためのリソースの割当を改善するファブレス半導体メーカーAstera Labsが、5000万ドル(約55億6000万円)を調達した。

同社によると、このシリーズCでは、同社の投資後評価額が9億5000万ドル(約1056億3000万円)だったという。

Fidelity Management & Researchがこのラウンドをリードし、新たな投資家としてAtreides ManagementとValor Equity Partnersが参加した。以前からの投資家であるAvigdor Willenz GroupとGlobalLink1 Capital、Intel Capital、Sutter Hill Ventures、およびVentureTech Allianceも参加している。

2020年に最初の投資をしたIntelにとっては、それは戦略的投資であり、資金を投資するだけでなく、同社はAsteraの重要な顧客でもある。AsteraのチーフビジネスオフィサーSanjay Gajendra(サンジェイ・ガジェンドラ)氏によると、チップ業界の超大手企業が同社とコラボレーションするのはPCI ExpressとCXL(Compute Express Link)の技術および製品の開発のためであり、それにより「次世代のサーバーとストレージインフラストラクチャの、帯域と性能とリソースの可利用性を上げようとしている」。

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特にAIのユースケースがIntelの次世代の成長戦略の中核にあるため、これらの目標はIntelのプロセッサーをベースとするAIシステムを構築するために不可欠だとガジェンドラ氏はいう。さらに氏によると、Intelの複数の参照設計と商用プラットフォームにはAsteraのリタイマーであるAries Smart Retimers for PCIeが組み込まれている。その他、TSMCやWistron、Samsung Electronics、Western Digitalなども同社の顧客だ。

これまでサンタクララに拠を置くAsteraは、3年間で調達した資金がわずか3500万ドル(約38億9000万円)で、それ自身同社の優秀な事業効率を物語ると同時に、収益も堅調であることを示している。

Astera LabsのCEOであるJitendra Mohan(ジテンドラ・モハン)氏は、今回の資金調達に関する声明で次のように述べている。「Fidelity、Atreides、およびValorと力を合わせて、インテリジェントなクラウドコネクティビティソリューションにおける当社のリーダーシップを確固たるものにして、Astera Labsを次の成長フェーズへ向けて誘うことには心踊るものがあります。今回の投資と、製造パートナーとのコラボレーションにより、弊社はその世界的なオペレーションを急速にスケールして、すばらしい顧客たちの要求を満たし、複数の新製品系統をローンチして、当業界のもっとも喫緊たるコネクティビティの課題を解決していけるでしょう」。

この最新の資金調達ラウンドは、より具体的にいうと、同社がパンデミックの最中でも比較的堅調を維持し、企業がクラウドへの移行を急ぐ中で行われた。

ガジェンドラ氏はTechCrunch宛のメールで次のように述べている。「自宅で仕事や勉強をするためクラウド上のSaaSアプリケーションに依存する人びとが徐々に増えているため、スケーラブルなハードウェアの展開が加速しています」。彼によると、そのソリューションは同じインフラストラクチャ上で、最大で従来の倍の帯域を提供している。「これにより私たちの、世界最大のクラウド事業者たちからの購買需要も推定25%から30%増加しています」。

Asteraはファブレスであり技術のスケールアップも比較的速く、帯域増を求める競争の中で、しかも限られた費用とリソースによりその需要に応ずることが比較的容易だ。しかしシステムの効率を改善するソリューションを構築している既存勢力の企業に対しても、市場と投資家の注目が増している。しかもこの問題は、エンタープライズITのさまざまな局面へと延伸している。たとえばFireboltは、ビッグデータ分析が必要とする帯域のニーズを抑える、アーキテクチャとアルゴリズムを構築している。

Avigdor Willenz(アビグドール・ウィレンズ)氏は、Astera Labsの創立投資家であるだけでなく、他にも有力なスタートアップを支援している。それらは後にAmazonが買収したAnnapurna Labsやインテルが買収したHabana Labsなどになる。そのウィレンズ氏は声明で「多様で混交的なコンピューティングと構成可能な非集積型インフラストラクチャという重要なニーズに対応する、複数の革新的なプロダクトのポートフォリオを開発するという、強大な仕事をAstera Labsは成し遂げました」という。現在のところ、Astera Labsは上場が目されているだけでなく、すでにその路線に乗っているともいえる。ただし、今後の大手たちの競争如何では、別の結果になるかもしれない。ウィレンズ氏は続けて「Astera Labsが作り上げた強力な実績と迅速な価値創造はたいへん喜ばしい。同社の前には複数のオプションが開いており、今後のIPOもその1つです」という。

Sutter Hills VenturesのマネージングディレクターでAstera Labsの取締役でもあるStefan Dyckerhoff(ステファン・ディッカーホフ)氏は「Astera Labsの成長と拡大はすばらしいものであり、同社の長期的なポテンシャルについても強力な楽観性を維持できます」と述べている。

画像クレジット:imaginima/Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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