クリス・サッカ氏の気候変動対策ファンド「Lowercarbon Capital」が880億円を集める

クライメートテックに特化するファンドのLowercarbon Capital(ローワーカーボンキャピタル)が8億ドル(約880億円)の調達を完了したと8月13日にサイト上で発表した。同ファンドは、長年の投資家であるChris Sacca(クリス・サッカ)氏とその妻Crystal Sacca(クリスタル・サッカ)氏が設立した。

サッカ氏によると、資金調達は非常に早く、「わずか数日」で完了した。「未曾有の熱波の中で、そして火事の煙が立ち込める中で、気候変動対策ファンドの募集を行ったことは、おそらく悪いことではなかったと思います。それどころか、そうした全ての汚染は、私たちのズームコールに温かく美しいもやを運んだのかもしれません。Incendiary Doom Glowインスタフィルターのように」

関心が寄せられていることは驚くべきことではない。気温の上昇により、人類の生命が危機に瀕していることを示す、かなり明白な証拠が積み重なっているからだ。西ドイツと中国の洪水、ギリシャとカリフォルニアの山火事、そして太平洋岸北西部の人々が現在備える更なる熱波に先立ち、国連の気候科学研究グループが8月9日に発表した新しい報告書は、現状を明確に示し、「人類にとっての非常事態」を宣言した。

確かに、Lowercarbonの投資家の中には、こうした傾向を少しでも変えようとする技術に興味を持っている人もいるだろう。しかし、サッカ氏が言うように、彼らが注目しているものが、気候変動に取り組む技術がもたらす金銭的な報酬であって構わないだろう。

「私たちは、多くの投資家が気候危機の緊急性を理解し、真の解決策のために資金だけでなく時間も捧げていることに感激しています」とサッカ氏は投稿で語っている。「しかし、率直に言うと、実際には地球のことをそれほど気にせず、金銭的なリターンだけを追い求めている投資家の方々にも心を動かされました」

Lowercarbonが掲げる仮説は、「大規模な変化が起こるのは、ビジネス上の理由だけでそうした投資が回収されるから」というものだと同氏は付け加えている。

サッカ夫妻に加えて、Lowercarbonを運営するのは、ニューヨーク州ブルックリンを拠点とするパートナーのClay Dumas(クレイ・デュマス)氏だ。ファンドは同氏をLowercarbonの中で最も積極的な投資家だと説明している。ハーバード大学を卒業した同氏は、ベンチャーの世界に長く身を置いていたわけではない。2017年にサッカ氏と合流し、サッカ氏の前のファンドであるLowercase Capital(ローワーケースキャピタル)にパートナーとして参加したのが最初だった。デュマス氏は「伝統的」なVCとは異なり政治の世界を理解している。

2008年にBarack Obama(バラク・オバマ)氏の選挙運動のために現場事務所を開設した後、ホワイトハウスで当時の副参謀長の補佐官を務め、その後(再びホワイトハウスの)デジタル戦略室で勤務した。

Lowercarbonがこれまでに行った数十件の投資には、Heart Aerospace(スウェーデン・ヨーテボリを拠点とし、地域間輸送電気旅客機の開発に取り組む創業3年目のスタートアップで、Lowercarbonがシート資金を投資し、最近では追加投資も行った)、Holy Grail(米国カリフォルニア州マウンテンビューを拠点とし、大気から二酸化炭素を取り込む小型でモジュール式の機器の試作品開発に取り組む創業2年目のスタートアップで、6月にシードラウンドを発表した)、Cervest(ロンドンを拠点とする創業6年目の気候リスクプラットフォームで、事業会社と政府機関に対し、複合的な気象リスクが所有資産に与える影響について、現在や過去の、さらに予測的な見解を提供していおり、直近では5月に3000万ドル=約33億円=を調達した)などがある。

サッカ氏は、Twitter(ツイッター)やUber(ウーバー)への初期の巨額投資で有名になった。人気テレビ番組「Shark Tank」の審査員を数シーズン務めたが、2017年に番組を、そしてベンチャーキャピタルを辞め、「40歳で引退するつもりだった」と語った。当時、彼は42歳だった。

サッカ氏は、気候変動への関心が高まり、政治家が気候変動を食い止められるという確信が持てなくなったため、自身の決断を見直すことにした。3月、同氏はフォーブス誌にこう語った。「私たちは、市場が地球を救う鍵を握っているのではないかと考えています」

昨年6月のAxiosの報道によると、Lowercarbonは当初、数千万ドル(数十億円)の資金を投入するファミリーオフィスとして設立された。昨年半ばの時点で外部から受け入れてた資金は「サッカ氏が以前に運営していたファンドの機関投資家といくつかの特別目的会社」だけだったという。

新たに得た8億ドル(約880億円)の投資資金を4つのファンドに分け、Sacca & Co.は完全に仕事を再開したようだ。来月開催のTechCrunch Disruptで実際にサッカ氏に話を聞く予定だ。

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画像クレジット:Chris Sacca

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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