クレイジーな1週間だった

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クレイジーな1週間だった

私が歳をとってしまったのかもしれないが、技術ニュースの勢いがトップギアに入りっぱなしになってしまったみたいだ。正気じゃないね。WeWork(ウィーワーク)がSPACで上場するというニュースが、どれだけ小さな扱いになってしまったかを考えて欲しい。この7日間に私たちをなぎ倒していったさまざまなニュースの中では、それは小さな出来事でしかなかった。

さて、Y Combinator(Yコンビネーター)のデモデイが行われてから、何週間も経ってしまったようにさえ思えるのに、実はあれは先週の出来事だったのだ。それでも、今回はそのことを読者と一緒に振り返ってみたい。アーリーステージのお披露目としてはおもしろかったといえるだろう。

1日限りのデモデイラッシュでは、数百のスタートアップたちが、自分たちのやっていることを1枚のスライドに凝縮して披露した。TechCrunchでもいくつかの お気に入り取り上げたものの、記事にできずに棚上げにしてしまったスタートアップの方がはるかに多かった。ということで、いくつかの名前をここに追加させて欲しいと思う。

フィンテック関連では、私が視聴できた時間帯では、いくつかの名前が目に留まった。Alinea(アリネア)は、Z世代向けのトレーディングアプリを作ろうとしている。Z世代は他のどの世代よりもはるかにクールだと思うので、私はそのアイデアを気に入っている。彼らには、彼らの世代特性に合わせたネイティブな投資体験をしてもらうべきではないだろうか?

Hapi(ハピ)のアイデアも似たようなものだが、対象はラテンアメリカだ。繰り返しになるが、私はそれを気に入っている。最近目にすることが多く、好ましいと思っている傾向は、米国で成功したスタートアップのモデルを新しい市場に適用し、地域に合わせた調整を加えて、より多くの人々に提供することだ。投資は長い間、不自然に高価なものだった。ここでの動きは、それをもっと低コストで行えるようにするものだ。

Atrato(アトラト)も、Affirm(アファーム)スタイルのBNPL(Buy Now、Pay Later:先渡し、後払い)モデルをラテンアメリカで展開している。個人的には、消費者向け貯蓄アプリに比べて消費者向けクレジットアプリは好きではないが、AffirmやKlarna(クラーナ)などが成長していることから考えると、そうした製品には実際の需要があるのだろう。Atratoが何を見せてくれるかが楽しみだ。

ラテンアメリカから東南アジアに目を向けてみよう。OctiFi(オクティファイ)は、同地域市場向けのBNPL製品を開発している。Demo Dayで見たスタートアップの中で、この地域で活動していたのは同社だけではない、BrioHR(ブリオHR)もその1つだ。

Bueno Finance(ブエノ・ファイナンス)は、欧米以外の市場向けのフィンテックというテーマによくフィットする会社だ。同社は「Chime for India」(インド向けChime)という製品を開発している。もしChimeやその他のネオバンクが、一般的に、裕福でない消費者たちに、低コストで質の高い銀行サービスを提供できるのなら、問題はない。もちろんほとんどのスタートアップは失敗するが、私は彼らが焦点を当てている場所は気に入っている(NextPayはフィリピンの中小企業向けデジタルバンキングに取り組んでいるし、その他にもいろいろある)。

私が注目しているもう1つのテーマは、自社のソフトウェアをマネージドサービスとしてではなく、API経由で提供するスタートアップだ。昔からThe Exchangeでも取り上げてきた。今回のデモデイの中では、Dyte(ダイト、ライブビデオのためのStripe)、Pibit.ai(パイビットAI、データの構造化を支援するAPI)、Dayra(デイラ、エジプト人のためのAPI利用の金融サービス)、enode(イノード、エネルギープロバイダーと電気自動車をつなぐAPI)などの名前が挙げられる。

他には、非ネット型中小企業向けのサービスに取り組んでいるスタートアップがいくつかあった。The Third Place(ザ・サード・プレイス)は中小企業向けのサブスクリプションサービスを開発しているし、Per Diem(パー・ディエム)はAmazon以外の企業たちに迅速な配送手段を提供したいと考えている。

他にもすてきな会社がたくさんあった(GimBooksRecoverWaspAxiom.ai!)、とても書き切れない。さて、これからの半年間で最も成長するのはどれかを、じっくりと見届けたい。しかし、私はこのデモデイを終えて、世界のスタートアップたちの活動に大きな希望を抱くことができた。3月23日の締めくくりは悪くなかった。

後期ステージのいろいろ

IPOやSPACのニュース(もしあまりご存知ないなら、これとかこれとか)の中に、私たちの時間を割く価値のある大きなラウンドがいくつもあった。そのうちの2つはインシュアテック分野からのもので、Pie(パイ、労災保険)が1億1800万ドル(約129億4000万円)、Snapsheet(スナップシート、請求管理)が3000万ドル(約32億9000万円)を調達した。

ServiceTitan(サービスタイタン)は、4倍となった評価額83億ドル(約9102億6000万円)で、5億ドル(約548億4000万円)を調達したことを、Forbesが報じている。約2年の間に、まるまると太った評価額となった。来年は彼らのIPOを取材することになると思う。また、会計に特化したPilot(パイロット)は、12億ドル(約1316億円)の評価額で1億ドル(約109億7000万円)を調達した。2021年のユニコーン誕生のペースは、決してスローではないと感じる。

また、UiPathのIPO申請書は、同社がいかにして恐ろしい損失を合理的な経済性に変えたかを示したという点で、非常に興味深いものとなっていると言わざるを得ない。少なくともGAAP的な意味で、Snowflakeの再現になろうと動いているように見える。

今月のニュースだけに絞って、さらに17段落を追加しても、数十億円、数百億円規模のラウンド全部についてはご紹介できない。正気じゃないね!確かに、2021年第1四半期のベンチャーキャピタルの数字は、ホットで刺激的なものになりそうだ。詳しくはデータを入手し次第、ご報告しよう。

その他のことなど

とはいえ、私はただマイルドな食べ物を提供するために来たわけではない。近い将来には、私の好きなスポーツと自分の仕事を絡めたストーリーの芽が出てきている。正確にいうならF1(カーレース)と技術のことだ。

最近、Cognizant(コグニザント)がAston Martin(アストン・マーチン)F1チームのスポンサーになった。Splunk(スプランク)はMcLaren(マクラーレン)と提携している。Microsoft(マイクロソフト)はRenault(ルノー)のAlpine(アルパイン)ブランドにちなんだ名前のチームと契約している。Epson(エプソン)、Bose(ボーズ)、Hewlett Packard Enterprise(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)の3社は、Mercedes (メルセデス)・レーシング・チームのスポンサーだ。そしてOracle(オラクル)はRed Bull(レッドブル・レーシング)のスポンサーだ。このリストはまだまだ続く!

そして先週、Zoom(ズーム)がF1ゲームにも参加することを発表した。これは私にとって楽しみであるだけでなく、ある希望にもつながっている。一部のハイテク企業が、F1チームを業界内競争の手段として利用し始めていることが明らかになってきた。だとすると、今まさに書いているように、仕事でF1について書くこともできるし、業績発表会の場で、なぜ貴社のチームは速くないのかという質問で責められるテック系のCEOも増えるだろう。すでに、SplunkのCEOであるDouglas Merritt(ダグラス・メリット)氏は、彼のオレンジ色のチーム(McLarenのこと)についての私からの質問にうんざりしていることだろう。もちろん、質問をやめるつもりはない。

ということで、私はこれから、もしあなたがテック系のCEOで、その会社がF1チームのスポンサーになっていないなら、あなたの会社は小さすぎて重要ではない企業か、もしくは退屈すぎて楽しくない企業だと考えることにする(というのは、ほぼ冗談だけどね)。

カテゴリー: VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangeY Combinator

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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