クローラー対応でインバウンド需要に手応え、サイト多言語化のWOVNが伸びてるらしい

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ちょうど1年ほど前、JavaScriptを1行追加するだけでサイトを多言語化できる「WOVN.io」(ウォーブン)について記事を書いたが、WOVNを提供する日本のスタートアップ、ミニマル・テクノロジーズが売上を伸ばしているようだ。有料プランを開始して2カ月で、すでに年商5000万円程度は見え始めているほか、今日リクルートと包括的業務提携も発表し、リクルートが持つ多くのメディアサイトへ順次WOVNを導入していくことが決まったという。

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伸びているのは月額1000ドル以上の上位プラン

WOVN.ioの何が良いのかというのは、詳しくは以前の記事を見てほしいが、これは簡単に言うと既存サイトを手軽に多言語化するクラウドサービスだ。オリジナルの日本語に加えて、英語や中国語、スペイン語、韓国語などと多言語でサイトを表示するのはコストがかかるし、変換(翻訳)や運用が複雑になりがちだ。

そこで「多言語切り替えボタン」を自サイトの右下などに表示できるようにするというのがWOVN.ioだ。企業はもちろん、自治体やECサイト、学校法人などが利用している。管理画面からボタンを押すことで指定ページを機械翻訳することができるほか、プロの翻訳者に依頼も可能だ。機械翻訳でなく人間を選んだとしても、翻訳に要する時間以外の面では管理画面の使い勝手が変わらないのがポイントだ。ミニマルテクノロジーズ創業者でCEOの林鷹治氏によれば、実際の翻訳者は翻訳プラットホームのGengoの契約者。英語だと1ワードあたり5円程度とか。これは別料金で、WOVNの売上の25パーセント程度が、このプロ翻訳の利用によるものだそうだ。

有料版の提供を開始して2カ月で、現在70クライアント程度の有料顧客がいる。WOVNの全ユーザーが4500クライアントというから、もう少し有料顧客がいて良さそうにも思えるが、これは途中から料金体系を変更したことによる結果。本来有料プランとなるユーザーにも、今のところ無料で提供し続けているそうだ。有料版と無料版の主な違いは、翻訳対象となるページ数の上限、翻訳言語数、それに電話サポートなどだ。

B向けのSaaSを提供しようというスタートアップにとって有用な知見かもしれないと思うのは、有料ユーザーの分布だ。

フリープラン(無料)をのぞく、スタートアッププラン(19ドル)、ビジネスプラン(120ドル)、エンタープライズプラン(1000ドル〜)という3つのプランは、現在だいたい同じくらいの契約数となっている。だからWOVNでは今後、「エンタープライズ」のみにフォーカスしていく方針という。フリーミアムモデルの常で、フリー版利用者の裾野を広げる必要がある。それなりにトラフィックのあるサイトで無料で導入してもらうことでWOVNボタンとデモを広く見せることができる。だから下位の有料プランの機会損失はマーケティング予算と割り切るほうが良いという判断だそうだ。B向けSaaSの価格体系トレンドとして、「Optimizelyの料金体系もFreeとEnterpriseしかなく、そういう流れに来てるのかなという気がしている」(林氏)のだといい、上位プランを使う層は「規模が小さいところよりも、もっと大きい需要があることに気付いた」ということだ。

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もう1つ、リクルート・コミュニケーションズと包括的業務提携を決めたこともWOVNにとって良いニュースだ。リクルート・コミュニケーションズは同グループが発行する媒体の制作会社なので、リクルートが持つ多数のWebサイトの他言語化にはWOVNを使われることになる。リクルートにはインバウンドの旅行客を抑えたいというような需要があり、この場合はデータベースはすでにリクルート側が持ってるものを使うことになる。たとえば、日本の旅館の住所の多言語データベースなんかをリクルートは持っている。

懸案のクローラー対応で中国語の検索エンジンにも対応

JavaScriptを1行書くだけでサイトを多言語化できるというのは手軽だったが、問題は検索エンジンのクローラーから「見えない」こと。つまり、せっかく多言語でページを用意できても、それはあくまで人間のユーザー向け。検索エンジンにインデックスされないという課題があった。

これは原理的に解決できない問題だと想像していたのだけど、意外な方向から解決策がでてきた。HTMLを1行書き換える代わりに、サーバ側のアプリケーションを5行ほど書き換えてしまうのだ。

WOVNでは「WOVN++」と名づけたPHPとRuby(Gem)のライブラリ提供を開始した。サーバ管理者やアプリ開発者がいる組織であれば、特に問題なく5行程度でWOVNを組み込める。つまり手軽さ優先で多言語化する小規模サイトならJavaScriptで、インバウンド需要を取り込むためにECサイトをまるっと多言語化したいというようなニーズならサーバ側を変更するという2つの方法になったのだ。サーバ側のライブラリはテンプレートエンジンの1種になっているので、HTML生成直前(ブラウザへの表示の直前)にWOVNのAPIが間に入るというシンプルな構成だ。

「GemとPHPのライブラリは重要な役割を持っています。実はGoogleだけにインデックスされても意味がないんです。(日本の)WOVNの利用者は中国人向けにサイトを中国語にすることが多い。ところが中国人や韓国人はGoogleを使っていないんです。WOVNではBaiduやNAVERのSEOも大事にしていて、ライブラリではここをサポートしています」

「Baiduはクローリングがすごく遅くて、更新に2、3カ月かかることもある。だから明示的にAPIを叩いてページを拾いに来てもらう必要があります。そういうことを皆さんご存じないのですね。知っていたとしても、中国語なのでインデックスの登録ができない。そこも含めてWOVNでサポートしていきます」

中国人の爆買いで、日本の免税店や量販店が賑わっているが、当面はWOVNでもインバウンド系の需要を取りに行くという。そして最近の気付きは、WOVNのような多言語化の強い需要は、海外への情報発信というよりも、その土地にすでに来ている外国人向けの翻訳にあるのでは、という興味深いもの。

「ウォンツ(wants)じゃなくて、ニーズ(needs)が高いのは飲食とか購買です。すでに、その土地に来ている人たちにモノを売るほうがニーズが高いからです。これは世界各国で同じことが言えます。アメリカ国内なら移民のニーズがある。英語が読めないけどアメリカにいる人たちに対して、アメリカのお店はモノを売りたいわけです。言葉の問題でサービスを提供できず、自分の横を販売チャンスが通りすぎているのを見ている人たちなので、ここの翻訳ニーズはとても強い。だから、今はWOVNにとって日本が一番良い市場じゃないかと感じています」

【追記】Wovn.ioは昨年秋のTechCrunch Tokyo 2014のスタータアップバトルの決勝戦に残り、PayPal賞、マイクロソフト賞を獲得している。今年秋もまたスタートアップバトルを開催するので、これからローンチする、あるいは最近ローンチしたばかりのプロダクトを持つスタートアップ企業には、ぜひご応募いただければと思う。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。