グーグルのAirTable対抗ワークトラッキングツール「Tables」がベータを卒業、Google Cloud追加へ

2020年秋、Google(グーグル)の社内インキュベーターであるArea 120は「Tables」というワークトラッキングツールを披露した。そして米国時間6月14日、同社は、Tablesが正式にArea 120を「卒業」してGoogleプロダクトの一員になり、2022年中にGoogle Cloudへ加わると発表した。

Tablesのプロジェクトは、長年のGoogle社員で今はTablesのゼネラルマネージャーであるTim Gleason(ティム・グリーソン)氏が始めた。彼はGoogleに10年間在籍しているが、それ以前から長くテクノロジー業界にいる。グリーソン氏によると、Tablesを思いついたのは彼自身、プロジェクトの追跡管理が苦手だったからだ。複数のチームが、さまざまなドキュメントに分散している複数のノートやタスクを共有して仕事を進めるが、それらのドキュメントはすぐに陳腐化してしまう。

1つのプロジェクトに関連するノートやタスクが、人間が手作業でアップデートするさまざまなドキュメントに記述されているという状態を脱してTablesでは、ボットを使ってプロジェクトのチームメンバーをガイドし管理する。例えば仕事が遅れているときには、スケジュールを調節するためのリマインダーをメールで送らなければならない。新しいフォームが届いたらチャットルームでそれを告知する。一部のタスクを他の人たちのワークキューに移動する。スケジュールが変われば、タスクをアップデートする。これらの雑多な仕事をすべてTablesで管理できるようになる。

Tablesのチームによると、それはいろいろなユースケースでソリューションになりえる。例えばプロジェクト管理はもちろんのこと、ITの運用やカスタマーサービスの追跡、CRM、求人、製品開発など、さまざまな部門で使える。

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このサービスは2020年9月にテストを始めたが、Googleによると、たちまちファンが増えたという。

Google Cloudの最上位管理者であるAmit Zavery(アミット・ザベリー)氏によると、初期の顧客からのフィードバックは好評で、しかもいろいろなプロジェクトで利用されていた。そのことからも、今後の成長性が伺われる。しかしザベリー氏は現在の顧客数を明かしていない。

ザベリー氏によると、パンデミックもTablesの採用の動機になっているだろうという。

彼は、誰もがあわててデジタル化に取り組むようになった現状に対して「新型コロナウイルスで起きたことを見てみれば、私が話を聞いた多くの顧客たちの中でワークトラッキングが大きな関心の的になったこともよく理解できます」という。

在庫管理、ヘルスケアのサプライトラッキング、住宅ローンのワークフローなどが最も多かったユースケースだ。しかし全体としてTablesは、チームが予想した以上に多様な業界で採用された。平均的な姿としては、およそ30名から40名の部、課、事業部などがTablesを使っている。

また、他のサービスからの乗り換えではなく、これまで手作業で行ってきたことをTablesで管理するというタイプのユーザーが最も多い。

「複数の文書に細切れ状態で分散していたり、それらの文書を複数の違う人が持っていたり、という状況はとても多いものです。またそういうところが最もテクノロジーのありがたさを感じてくれます。これからは中央の1カ所に情報が構造化されて集まり、それを確認したりアップデートしながら仕事を進めればいいのです。1つのユースケースやプロジェクトが15種類のスプレッドシートに分散し、それらの構造的関係を誰も知らない、という悲惨な状況が終わるのです」とザベリー氏は説明する。

Tablesの採用が急速に進んだのは、生産性が目に見えて向上したからだ。それには、既存のデータウェアハウスやその他のサービスを統合できることも大きい。現在、TablesはOffice 365やMicrosoft Access、Googleスプレッドシート、Slack、Salesforce、BoxそしてDropboxといった既存サービスをサポートしている。

Area 120からローンチしたプロジェクトは、有料サービスはとても少ない。Tablesはその少ない中の1つで、他にはチケットを販売するFundo、会話的広告プラットフォームのAdLingo、最近GoogleがローンチしたOrion WiFiなどがある。ベータのときは1人の個人がTablesを無料で利用でき、最大100テーブル1000行まで使える。有料プランは月額10ドル(約1100円)で最大1000テーブル1万行までの予定だ。有料になると大型のアタッチメントや、多様なアクション、履歴や共有、フォーム。自動化、ビューなどの高度化がサポートされる。

ただしGoogleによると、ベータ期間の課金はいっさいない。

TablesがGoogle Cloudの正規のプロダクトになれば、Googleのノーコードアプリ構築プラットフォームであるAppSheetと統合されるだろう。こちらも無料のティアがあるので、フリーミアムとしての利用は継続できる。高度な機能を使いたい人は、有料プランにアップグレードできる。AppSheetだけをスタンドアローンで使いたい、というニーズでもOKだ。

GoogleはTablesをWorkspaceにも統合して、ユーザー数をさらに増やすつもりだ。

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それについてザベリー氏は次のように述べている。「TablesはWorkspaceにも統合するつもりです。そのとても大きなユーザーコミュニティも、Tablesのような機能を欲しがっている人たちです。そのコミュニティには、大量のSheetsユーザーもいれば、大量のDriveユーザーもいる。しかも彼らが集めるデータは膨大です。Tablesは、彼らの仕事を自動化しその体験を強化できます」。

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現在、ノーコードでしかもデータベースをスプレッドシートベースで構築するという、企業デジタル化の1つのタイプがブームだ。Tablesは明らかに、このブームに乗ろうとしている。たとえばTablesがリリースされる数日前には、AirTableが1億8500万ドル(約203億7000万円)のシリーズDを完了した。そのときの投資前評価額は、25億8500万ドルだった。

TablesがGoogle Cloudの一員になっても、2022年に完全にCloudのプロダクトとして利用できるようになるまでは、ベータバージョンを無料で使える。Google Cloudプロダクトの正規化とともに、ユーザーはそちらへ移行することになる。

AppSheetの統合を皮切りに今後のTablesはさらに新しい機能を加えていく予定だ。だから今後必ずしも、他のプロダクトに乗り換える必要はない。また、使いやすさやモバイルのサポート、インターネット接続、バックエンドの充実などでも改善していく、と同社は言っている。

正価は未定だが、上述している現在発表されているプランと大きくは変わらないだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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