ゲーム業界に注力する投資会社Bitkraftが2号ファンドを立ち上げ、ゲーマーで元GS副社長も参加

eスポーツ、ビデオゲーム、そしてそれらを支えるイノベーションたちは、現在テクノロジーの世界の文化的および商業的構造の中心を占めている。

投資会社Bitkraft Esports Venturesにとって、こうした関心の高まりは、コンソールとコントローラーの世界を遥かに超越する可能性を持つ、娯楽の変革や技術の開発を行うビジネスへの投資を行う、巨大なチャンスであることを意味している。

投資家たちも徐々に、その流れに一緒に乗ろうとしている。同社の計画に精通する筋からの情報によれば、2017年に4000万ドル(約45億円)の1号ファンドを立ち上げた同社は、およそ1億4000万ドル(約157億円)の新しいファンドをほどなく立ち上げる予定だ。

Bitkraftは、広報担当者を通して、2019年中にはeスポーツとデジタルエンターテインメント関連で25の投資案件に5000万ドル(約56億円)を投資したことを認めた。そのうち21件は同社が主導したものである。

Bitkraftの今回のはるかに大きい新ファンドの立ち上げは、同社の関心がゲームやeスポーツをはるかに超える技術やサービス(もちろん出発点は似たような場所だが)を網羅し始めたために行われている。

新しい資本プールの立ち上げに加えて、同社はまた、ゴールドマンサックスの投資銀行部門の元副社長であり、2003年にはBlizzardのDiablo II PCゲームの第1位にランキングされたeスポーツプレーヤーでもあるMoritz Baier-Lentz(モリッツ・ベア=レンツ)氏を新しいパートナーとして迎えた。

ゴールドマン在職中、ベア=レンツ氏は、Dellによる670億ドル(約7兆5000億円)でのEMCの買収や、IBMによる340億ドル(約3兆8000億円)でのRedHatの買収に取り組んでいた。

ベンチャーキャピタル、特にゲームの場合には、数字はそこまで大きくはならないものの、投資家たちがその可能性を認識するにつれて、ゲーム業界周辺ではますます大きなベットが行われるようになっている。Esports Observerによれば、2019年にeスポーツ業界に行われた投資は約20億ドル(約2200億円)で、その前年である2018年に投資された45億ドル(約5000億円)という驚くべき数字に比べれば半分にも満たなかった。

Bessemer Venture PartnersのEthan Kurzweil(イーサン・カーツワイル)氏は、2018年に TechCrunchに対して次のように語っている。

「ゲームは現在、米国で最大のエンターテインメント形態の1つで、年間1000億ドル(約11兆円)以上が支出されていて、これはテレビなどの他の主要なメディアを上回っています。ゲームはソーシャルネットワークの新しい形態で、『ゲームに勝つ』という構図以外でも、友人や家族と時間を過ごすことができるのです」

1000億ドル(約11兆円)以上という数字は、特にeスポーツ投資の定義が補助領域やより広い分野へと広がる中では、成長しているカテゴリーとして決して見劣りするものではない。

Bitkraftにとって、それは「インターネットとゲームの中で生まれたが、それ以上の適用範囲を持っている」投資を意味している、とベア=レンツ氏は言う。「私たちがより広いレベルで本当に見ていること、そしてチームとしての勝負所として考えているのは、合成現実(synthetic reality)の出現なのです。(その場所こそが)将来性と成長、そして私たちの投資家へのリターンを期待している場所なのです」。

Bitkraftの新しいパートナーであるモリッツ・ベア=レンツ氏

ベア=レンツ氏は、この合成現実を物理的世界とデジタル世界のほぼシームレスな融合と呼んでいる。これには、仮想現実と拡張現実を可能にするテクノロジーと、それらの周りに構築されるゲームや、没入型のあるいはインタラクティブなストーリーが含まれている。

BITKRAFT Esports Venturesの創業ジェネラルパートナーであるJens Hilgers(イエンス・ヒルガース)氏は声明で「モリッツには私たちの文化、情熱、そして野望を共有してもらっています。そして世界で最も優れた投資会社の1つから、とてつもない投資経験を持ち込んでもらえました」と述べている。また「さらには、彼は真のコアゲーマーであり、多様なBITKRAFTチームに最適な人物なのです。ニューヨークにおける彼の存在によって、私たちはまた、ゲームとeスポーツのための今日最もエキサイティングで発展している都市の1つで、地理的拡大を行うこともできるのです」と述べている。

ゴールドマン在職中に、ベア=レンツ氏は、同社のグローバルeスポーツとゲーム関連事業開発を手助けしていた。彼は頻繁に、個人顧客や大企業からのeスポーツ現象に投資する方法についての問い合わせを受け続けていた。

興味深いことに、eスポーツに焦点を当てた投資会社として、Bitkraftが投資しない分野の1つはeスポーツチームそのものだ。その代わりに彼らは、ゲームを可能にするすべてのものに焦点を当てている。「私たちはより幅広いアプローチを取っています。そして健全なeスポーツ業界のバックボーンで成功するものに投資しています」とベア=レンツ氏は述べている。

さまざまなゲーム開発スタジオへの、多数の投資に加えて、同社はインタラクティブオーディオ環境を作成するSpatial、ゲーム用に最適化されたプライベート高速ネットワークを開発するNetwork Next、そして触覚技術開発のLofeltも支援している。

「ゲームは技術革新の推進力で、ゲームが人間と機械のより良い相互作用を可能にしてくれるのです」と、ベア=レンツ氏は語る。「私たちは、ゲームとゲームコンテンツを、合成現実のより広い波の原動力と考えています。それはゲーム、スポーツ、そしてインタラクティブメディアに及びます。(しかし)私たちはそれをただエンターテインメントとしてだけ見ているのではありません。そこには、私たちが物理的世界とデジタル世界を超越したときに開かれる、経済的および社会的利益があるのです。私はそれを、インターネットの進化だと考えています」

トップ画像クレジット: Mark J. Terrill / AP

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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