コピペのアクセラレータモデルが次世代型に進化する時

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編集部記Vitaly M. GolombはCrunch Networkのコントリビューターである。彼は、CCC Startupsのファウンダーでパートナーであり、 Accelerated Startupの著者である。

ほとんどのスタートアップが失敗するというのは周知の事実だ。だが、ほとんどのスタートアップのアクセラレータも失敗するというのは、あまり知られていない事実だ。上位の数プログラムはこれからユニコーン企業となるスタートアップから利益を得ることができる。アクセラレータはスタートアップに大きく依存するビジネスモデルであるが、上位ではないアクセラレータは、投資適格となる企業を立ち上げることのできる優秀なチームを惹きつけることに苦戦している。

将来アクセラレータはビジネススクールの主流となり、これから価値の高い企業を立ち上げるであろう若い起業家に多大な教育的な価値を提供することになるだろう。ただ、アクセラレータが資金と時間を投資するそれらの起業家の最初のプロジェクトが、その起業家の究極的な成功となり、その一部を見返りとして手に入れられる可能性は限りなく小さい。アクセラレータが長期に渡って生き延びるためには、ビジネスモデルを変更する必要がある。

これまでの歴史を簡単に振り返る

1990年代の半ば、Idealabがビジネスインキューベーターモデルをテクノロジー業界に持ち込んだ。社内、あるいは公開されない状況でコンセプトが開発され、経験豊富な経営チームが迅速且つ制約が少ない中で意思決定ができる独立したビジネスへと成長させる。Rocket Internetはこのモデルを加速させ、世界の各注目地域でeコマースでの鞘取りビジネスや成功したモデルを真似したビジネスを数年の内に多数展開した。

2000年代半ば、Y CombinatorとTechStarsがアクセラレータモデルを牽引した。才能ある起業家や技術を持つ人に初めて光が当たるようになった。彼らは、メンターやモチベーションにつながる同じ立場の仲間、そして生活と実用最小限のプロダクトを市場に出すのを賄う程度の資金が用意された環境に身を置くことになった。Dropbox、Airbnb、SendGridのような最初の成功事例が出てくるようになり、このような成功を真似しようと世界中に数えきれないほどのアクセラレータが立ち上がるようになった。

コピペのビジネスは失敗する

量と質が比例するのは稀だ。バイラルで広がったアクセラレータモデルについても同じことが言える。プログラムの目標は良くても、それらのプログラムを運営しているのは、起業、テック企業の経営、投資家としての最良の企業を探して投資した経験のいずれかが不足しているチームであることが多い。

このようなアクセラレータは運営コストを賄える十分な資金を確保することはできたのだろう。地域の仕事を増やすことを目論む政府が開発したファンドのチェックを通過することができ、巷での信用を高めたい企業、あるいは自分のポートフォリオに多様性を持たせ、価値を高めることができると安直に考えた個人投資家から資金を得ることができた。

ただ上位プログラムは各募集につき何千枚の応募を受け、ハーバードやスタンフォードのMBAプログラムより候補者を厳選することができるが、その他のプログラムはそこからこぼれ落ちたものの受け皿であるということは最初から決まっている。どのプログラムも次の何十億ドル企業になるスタートアップを求めているが、最良のチームとその他とでは、チームとプロダクトのポテンシャルの質の違いは何百倍も違うのだ。

地域別の生活費の違いもこの方程式において重要な要素だ。サンフランシスコでの5万ドルの小切手は、3人のチームを貧困レベルにならない程度の生活を数ヶ月間やっと賄う程度だ。一方、他の場所、例えば東ヨーロッパの場合、普通の生活を一年以上も賄える場合がある。

これは、更に経験の少ない「夢見る起業家」のライフスタイルを味わいたいと考えるファウンダーを惹き付けることになりかねない。彼らが思い描くのは、スタートアップの生死が決まるRed Bullに支えられたプロダクト開発とマーケティング戦略を24時間詰め込んだ常にギリギリの生活ではなく、ピッチコンテストで予定を埋め、ハッピーアワーを楽しむ生活だ。いつか彼らもスキルを身につけ、とんでもなく価値の高いものを作り出すかもしれないが、それは同時に上位のアクセラレータ・プログラムに進む準備が整っていることを意味する。

次世代のアクセラレータ

Adeo Ressiの素晴らしさは説明し尽くすことはできないが、彼がFounder Instituteをローンチした時、多くの人はその授業料とシェアを分けるモデルを冷やかした。その後年月が経ち、Founder Instituteは世界中の何十もの都市に渡る何千もの起業家に多大な影響を与えることとなった。彼らは、実を結んだ企業のいくつから利益を出すことにも成功している。

General Assembly、TechHub、Galvanizeといった複数の企業も、起業家への教育とコラボレーションを促す仕事場を合わせて提供することで、価値が高く、利益を生み出すモデルを作り出すことができた。企業側も国の補助金やアクセラレータのスキームのシェアを用いて、彼らの興味のある市場の最も賢くて優秀な人たちと早くから関係性を構築しようと、この分野に参入している。

賢い大学も、彼らが急速に変容する教育業界で不利な状況になりつつあることに気がついている。例えば、スタンフォード大学は、これまでの理論を学ぶアプローチに加え、実践から学ぶ機会を提供するためのStartXをローンチした。

選択と決断

アクセラレータへの応募を考えているなら、プログラムが提供する援助や最終的な目標が自身のニーズや要望に応えるものであるかを自分自身で確認すべきだろう。アクセラレータ・プログラムで得られる最大の価値と呼べるものは、計り知れない経験値とメンターからのフィードバックだ。プログラムのメンターやそのプログラムに参加した経験のある企業のファウンダーと連絡を取って、自分でデューデリジェンスを行うべきだろう。

アクセラレータが提案する契約の内容も良く理解し、他の選択肢や機会損失についても比較検討しよう。

統合は必然的なことであり、現在私たちはアクセラレータ世界の新たなスタート地点にいるようだ。ドットコムシステムの崩壊は、インターネットスタートアップ時代という第二波を可能とするインフラを残した。アクセラレータのバブルは、次世代の起業家を全く新しい方法で育てるための実験室の役割を果たしたと言える。これは、注視しつつも期待が持てる状況であるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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