“コミュニティタッチ”で顧客との継続的な関係性構築を支援するコミューンが5000万円を調達

デジタルコンテンツからリアルなモノやサービスに至るまで、従来一般的だった買い切り型のビジネスモデルではなく、継続的に顧客と関係性を構築するサブスクリプション型のモデルで事業を展開するプレイヤーが各業界で目立つようになってきた。

それに伴って企業と顧客との接点の持ち方やコミュニケーションの取り方にも変化が生まれている。ここ数年で「カスタマーサクセス」という言葉も頻繁に使われるようになった。

今回紹介する「コミューン」はユーザーコミュティを活用した“コミュニティタッチ”という手法でカスタマーサクセスのあり方をアップデートし、新たな顧客コミュニケーション基盤の実現を目指したプロダクトだ。

同サービスを展開するコミューンは7月3日、ユーザベースグループのUB Venturesを引受先とする第三者割当増資により5000万円を調達したことを明らかにした。

コミューンはオンライン上で企業独自のユーザーコミュニティを簡単に構築し、ユーザーエンゲージメントを向上する場所として活用できるツールだ。

プログラミングなしでデザインや機能のカスタマイズが可能で、データ分析の仕組みやSNS・コマースサービスなどとのAPI連携機能、オフラインイベントの管理機能などを備える。

コミューン代表取締役の高田優哉氏の話では「プログラミングなしでもある程度高度な運用ができること」がユーザーからの評価に繋がっているそう。たとえば最近始めたばかりのユーザーや長く使っているコアユーザーなど、ユーザーの属性に応じて全てのコンテンツを細かく出し分けられる。

「アンケートやインセンティブを組み合わせることで、サービスを一定期間使ってくれているユーザーだけにアンケートを実施し、お礼にポイントやバッジを送付する」「Shopifyを使っているようなコマース系のサービスなら、API連携をすることで購買データと紐付けた施策を行う」といったことも、管理画面上から簡単に設定することが可能だ。

ユーザー会などのオフラインイベントとオンラインコミュニティを連動させる機能も特徴の1つ。イベントに参加したユーザーだけが見られるオンラインページや、参加した後一定期間コミュニケーションできる場を作ることでイベントの効果を高めることも見込めるという。

昨年9月のベータ版リリース以降、東京ガスやBASE FOOD、BONX、MEDULLAなど上場企業からスタートアップまで数十社に導入されているそう。高田氏によるとC向け/B向け問わず「サブスク型」のビジネスを手がける企業を主なターゲットとして事業を展開しているようだ。

「コミュニティタッチのポイントはユーザーとの共創関係を作ること。(コミュニティを通じて)企業がこれまでやってきた活動をユーザーの力を借りながらさらに良くしていこうというものだ。サブスク型の場合は既存顧客の満足度を重要視していて月次のチャーンなどをKPIとして追っている一方、適切なユーザー接点を持てていないことに課題を感じている企業も多い」(高田氏)

利用シーンは大きく(1)マーケティングやプロモーション(2)カスタマーサクセス・ユーザーサポート(3)R&D の3つに分かれるそう。特にC向けプロダクトの企業はマーケティング用途、SaaSを含めたB向けプロダクトの企業はカスタマーサクセスの最適化やコスト削減用途での引き合いが強いという。

「顧客単価が低いとどうしても1対1の接点を設けるのが難しく、特にC向けの場合はどうしてもCSが受身のアプローチになりがち。いわゆるカスタマーサクセス的な関わり方が困難なケースも多かった。B向けの場合も、がっつり担当者がついてコミュニケーションを取るのは簡単ではない」(高田氏)

もちろん、ほとんどの企業がユーザーエンゲージメントを高めるために何らかのコミュニティ施策をやっている。たとえば「ユーザー会」のようにオフラインのイベントを定期的に開いたり、FaceBookグループなどでオンラインコミュニティを開設したり。

ただオフラインイベントの場合はどうしても“点”の施策になってしまいがちで、毎回ある程度の参加者は見込めても「それなりのリソースとコストも要する中で、結局どれくらいのインパクトを出せているのか」悩んでいる企業の担当者が一定数いるという。

またFBグループを使ったコミュニティについても企業のコミュニティ運用に特化したツールではないのでできることに限界があることに加え、そもそもユーザー属性の偏りや実名制に対する抵抗感などの要因も重なって効果的に支えている事例は少ないそう。コミューンを導入している顧客の約半数は実際活用した経験があり、期待するほどの成果を見込めなかったようだ。

「中には『コミュニティタッチをやりたい』と問い合わせを頂く企業もあるが、お客さんの声をもっと聞きたい、継続率を高めたいけどこれといった打ち手がわからないといった形で相談頂くケースも多い」(高田氏)

いわゆるコミュニティを作成できるツールはオンラインサロンやファンクラブなど多岐に渡るが、コミューンの場合は企業向けのSaaSとして、企業がユーザーエンゲージメントを高めるためのツールに特化して展開している。

企業担当者が必要なデータ分析機能や他SNSとのAPI連携機能を備える一方で「ユーザー課金」などの仕組みは取り入れていない。また「いかに自分たちの存在を消せるか」を徹底的に意識しているそうで、コミューンの名前は出さず、顧客のサービスにインテグレートすることに重きを置いている。

「自分たちが運営しているのは企業向けのSaaSで、Howとしてコミュニティを提供している。ユーザーは顧客のサービスやコミュニティにアクセスしたいのであって、コミューンは知ったこっちゃない。ユーザーにとっては顧客のサービスと違和感を感じることなく使うことができ、企業にとっては自分たちのサービスに寄り添ったものを作ることができる」(高田氏)

企業のコミュニティ活用は日本よりも海外の方が進んでいて、高田氏の話では「海外のSaaS時価総額トップ50にランクインする企業の約90%がコミュニティタッチを行なっている」という。

Khoros(旧Lithium)」を始めそれをサポートするツールも複数あるが、日本ではまだそこに特化したツールもなく、ノウハウ自体も浸透していない状況だ。

もともと高田氏たちはパーソナライズサプリのD2C事業からスタートした。β版のユーザーが数百名の時にユーザーとの間に距離感を感じコミュティタッチを実施しようと思ったものの、知識やリソースが足りず断念した過去がある。

「プロダクトを考え直す際に当時の経験を思い出し、周りの経営者や担当者にヒアリングしたところ、同じような課題を抱えていることがわかり、確実にニーズがあることを実感した」ことからコミューンの開発を始めた。

今後は調達した資金も活用しながら、オフラインイベント との連動性の向上や他SNSとの連携を含むプロダクトのアップデートに向けて開発体制の強化などを行なっていくという。

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TechCrunch Japan

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