コロナ後のインバウンドをにらみホテルのDXを加速させる韓国と日本を拠点を置くH2O Hospitality

パンデミックは、接客業の非接触、スタッフレス運営への要求をいっそう高めた。無人ホテル管理会社のH2O Hospitality(エイチ・ツー・オー・ホスピタリティー)は、その追い風を受けて3000万ドル(約33億円)の調達ラウンドを完了した。韓国と日本を拠点とするスタートアップは、宿泊予約、客室管理、フロントデスク業務などのフロントエンドとバックエンドを自動化する。同社は新たな資金を得て事業の拡大を続けていく。

今回のシリーズCラウンドをリードしたのはKakao Investment(カカオ・インベストメント)で、Korea Development Bank(KDB、韓国開発銀行)、Gorilla Private Equity(ゴリラ・プライベート・イクイティー)、Intervest(インターベスト)およびNICE Investment(ナイス・インベストメント)も参加した。他に東南アジアのジョイントファンドであるKejora-Intervest Growth Fund(ケジョラ・インターベスト・グロース・ファンド)も参加していることから、H2O Hospitalityが東南アジア市場に特に焦点を当てていることがわかる。H2O Hospitalityは2020年2月にシリーズBラウンドで700万ドルを調達し、Samsung Ventures(サムスン・ベンチャーズ)、Stonebridge Ventures(ストーンブリッジ・ベンチャーズ)、IMM Investment(アイエムエム・インベストメント)、Shinhan Capital(シンハン・キャピタル)らが参加した。

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H2O Hospitalityは2021年と2022年に韓国と日本でさまざまなタイプの宿泊施設を追加して事業を拡大する予定で、2022年第4四半期には同社の東南アジア浸透戦略の一環としてシンガポールとインドネシアにも進出する計画だ、と同社の共同ファウンダーでCEO、John Lee(ジョン・リー)氏はいう。

「現在H2O Hospitalityは、いくつかの国際ホテルチェーン企業と、韓国、日本以外でのデジタルトランスフォーメーションと事業運用の提携について話し合っています」とリー氏がTechCrunchに語った。

H2Oは同社の顧客チャンネルソリューションと非接触チェックインシステムをアジア各国の顧客ニーズに合わせて進化させるために、研究開発に投資していくつもりだ。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後にも、ホテル・デジタル・トランスフォーメーションで成功しリードしていくためには、それぞれの宿泊施設と状況に合わせたシステム開発とカスタマイズが必要です」とリー氏がメールのインタビューに答えた。

H2O Hospitalityは、2015年にCEOのジョン・リー氏が設立し、そのご買収と拡大を繰り返してきた。たとえば2017年には日本に進出して宿泊管理会社をいくつか買収した。2021年、H2Oは自社のテクノロジーとESG(環境・社会・ガバナンス)の競争力を高めるために、非接触ホテルソリューション企業のImGATE(イムゲート)とローカル・クリエイターのスタートアップ、Replace(リペレース)の韓国企業2社を買収した。

現在同社は東京、大阪、ソウル、プサン、バンコクにホテル、旅館、ゲストハウスなど約7500の宿泊施設を運用している。

H2O Hospitalityの情報通信技術(ICT)ベースのホテル管理システムは、チャンネル管理システム(CMS)、設備管理システム(PMS)、客室管理システム(RMS)、施設管理システム(FMS)などを使ってホテル業務の自動化とデジタル化を可能にしている。

同社の統合ホテル管理システムは、ホテル業務の運営費固定分を50%縮小し、売上を20%上昇させることが可能だと同社の声明に書かれている。

「新型コロナウイルスは宿泊業界に最も強い打撃を与え、そのために多くのホテルが固定費を減らしたいと考えましたが、現在の運営フローでは不可能でした」とリー氏は語った。「デジタル・トランスフォーメーションが必要だったのです」。

新型コロナが未だに旅行業界の大部分を凍結している今、パンデミックがH2Oにどう影響を与えているかを質問したところリー氏は、パンデミック前、H2Oの売上は最大30%増加していたが、新型コロナ後は5~15%に落ちたと答えた。最近の売上拡大要因は、顧客の効率を改善するために同社が作ったツールによる。例えば自動ダイナミックプライシング(ADR)ツールや、オンラインとオフライン、国内、国外の旅行代理店の多様なセールスチャネルなどがある。

リー氏はさらに、H2Oに多くの施設が加入しており、それが最近18カ月間の売上増に貢献していることを指摘した。H2Oの事業はアジア唯一であり、このため2020年8月以来多くの施設所有者が加入し始めている、と同氏は説明した。

「パンデミック中に加入したホテルはすべて収支が改善し、財務損失を取り戻しつつあります」とリー氏は言った。

現在世界に1640万の客室があり、年間5700億ドル(約62兆5889億円)を生み出している、とリー氏はいう。H2Oは世界中の宿泊施設をデジタル化できると信じており、会社の主要目標はホテルブランドを作ることではなく、ホテルオーナーがよりよい方法で自分の施設を運用できるようにすることだと彼は言った。

リー氏は、現在のホテル運用プロセスは「2G携帯」とよく似ていて、スマートフォンに切り替わる前の状態であり、H2Oはすべてのホテル運用を「スマートフォン」にする、と説明した。

「これは(接客)業界にとってごく自然な変化であり、それは携帯電話ユーザーが2Gからスマートフォンに移行したのと同じことです」とリー氏は言った。

韓国と日本では、国内需要は高まりつつあるものの、残念ながら国境を越えるインバウンドツーリズム市場は未だに停止している。

「両国(韓国と日本)ともワクチン接種が進んでいるので、インバウンドツーリズム市場は1年以内に復活すると信じています」とリー氏は言った。

Kejora-Intervest Growth Fundのマネージングディレクター、Jun-seok Kang(ジュン・シュー・カン)氏はTechCrunchに次のように語った。「ホテルのデジタル・トランスフォーメーションに新しい波がやってくることはパンデミック以前からわかっていました。しかし、新型コロナ遷移を早めたことは間違いありません。H2Oがホテル市場の転換に成功すると私たちは信じています」。

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(文:Kate Park、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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