コロナ禍で加速する大学中退をチャットボットで防ぐサービスのEdSightsが約5.6億円を調達

Claudia(クラウディア)とCarolina(キャロライナ)のRecchi(レッキ)姉妹がEdSightsを創業したとき、2人は道しるべとなるような大きな問いかけを自分たちにした。

「自分の指先でどんなデータでも集められる魔法の杖がある申し分のない世界で、大学生が中退しないようにするために私たちは何を理解すればいいのでしょうか」。クラウディアはそう語る。共同創業者の2人は最初の数年間をかけてデータポイントを理解しようとした。学生を適切なリソースに結びつける手助けをするのか、あるいは心配事を聞いてそれを意思決定者に伝えるのかといったことだ。そして結局、大学生との効果的な関わりとタイムリーなデータ収集の両方ができるサービスとして、チャットボットを活用することにした。

このチャットボットは、コロナ禍におけるもろさから大きな影響を受けた。2020年、EdSightsは学生を引き止める方法を模索する大学に対してこのサービスの販売を開始した。特に、コロナ禍でキャンパスがロックダウンされ、学生が以前よりも孤独になってしまったという事情からだ。

2020年にEdSightsのプロダクトはチャットボットによってそのあり方が明らかになった。学校のマスコットを使ったチャットボットは相手に合わせた質問やメッセージを学生に送信し、学生の最大のストレスは何かを把握する。その後、金銭や食料の支援、警備といった大学のさまざまなリソースにつなげる。EdSightsはコロナ禍で基本的なコミュニケーションができなくなってしまった世界各地の大学にこのサービスを販売した。

米国時間9月27日、EdSightsはAlbum VCが主導するシリーズAで500万ドル(約5億5700万円)を調達したと発表した。Album VCはPodium、Andela、Degreedの初期の投資も主導したVCだ。EdSightsの今回のラウンドには他にLakehouse、Good Friends、CheggのCEOであるDan Rosensweig(ダン・ローゼンズヴァイク)氏、GSV VenturesのDeborah Quazzo(デボラ・クアゾ)氏も参加した。今回の調達で、これまでに発表されているEdSightsの調達額は800万ドル(約8億9100万円)となった。

新たな資金は勢いがある中で調達された。EdSightsは具体的な数字を明らかにしていないが、年間の売上が6倍に成長したと発表している。2020年5月時点の顧客数は16だったが、現在は大学や教育機関など70になっている。創業した姉妹の1人のキャロライナは、同社は「黒字化が目前」でこれ以上従業員を雇用しなくても黒字になるだろうと述べた。同氏は、成長の新たなゴールを考えるとあと1年2カ月で黒字になるだろうと予測している。

画像クレジット:EdSights

EdSightsにとっては、同社が提供する可視化の機能をベースにしてアクションを起こさせることができるかというのが常に課題だ。よく知られているように大学はお役所仕事で新しい取り組みや迅速な行動が妨げられ、このことがEdSightsの投資収益率に悪影響を及ぼす恐れがある。共同創業者の2人は、学生のデータを得ることで大学は学生の需要に応じてリソースを効果的に使い、的外れの別のサービスに費やすコストを削減できると反論する。

キャロライナは「大学はお金の使い方が非効率で、どういうときに非効率な使い方が発生するかを私たちがまさに明らかにしていると思います。これが、データが重要であると私が考える理由です。高等教育を最適化する新たな段階に来ています」と述べた。

しかしEdSightsの計画は相談に乗ることだけではない。最終的には、メンタルヘルスの専門家や金銭面のリソース、就職支援など需要の多いサービスも提供したいと考えている。

キャロライナは「ある程度の規模に達しきちんと理解した後で、教育機関では支援できない分野について我々は何をすればいいでしょうか。何かができる人は他にいるでしょうか。そして私たちにそれができるでしょうか」と述べた。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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