コロナ黙示録に思いを馳せる人々

新型コロナウイルス(2019-nCoV)は極めて深刻な世界規模の公衆衛生問題だ。同時にそれは、誤情報や悪質な陰謀論、さらには、過剰反応、過少反応いずれの源泉でもある。誰が元凶なのか?私はちょっとしたリストをつくってみた。

誤情報発信人

The Atlantic誌のユーモラスな観察によると、ハーバード大学の疫病学者という紛らわしい肩書をを自称し、「HOLY MOTHER OF GOD」などとツイートした人物は、そう間違っていたのだ。

彼はハーバードの疫学者を自称していた。書類上では真実だが、彼は客員研究員であり、ハーバードの常勤教職員ではない。彼は栄養学者であり、感染病疫学者ではない。

この男はコロナウイルスに関する数々の陰謀論を撒き散らした。

しかし彼の悪事も、Zero Hedgeの生物兵器理論家(中国人科学者の個人情報をさらしたことでTwitterを追放された)に比べれば大したことはないし、「コロナウイルスにおけるHIV挿入の兆候」という相互査読がなく幾度も偽りを暴かれている論文をインターネットに掲載/リンクした人々に非難の矛先を向けることを忘れてはならない。

科学者本人

なぜ人々はその論文のリンクを貼るのか。要するに、相互査読されていない論文原稿は、一般市民によって相互査読された科学と間違えれられることが多いからだ。査読前原稿がなぜそれほど重要なのか?理由のひとつは、支配力をもつ科学出版社が科学論文のアクセスに法外な料金を取るようになったからだ。公金の助成を受けた論文でさえも。

ソーシャルメディア

繰り返し書いていることだが、いま我々がソーシャルメディアで何を見るかは、エンゲージメントに最適化されたアルゴリズムによって決定されており、多くの場合エンゲージメントとは暴力を意味する。蔓延したあの「HOLY MOTHER OF GOD」ツイートは、Twitterが時系列タイムラインを厳密に続けていれば、ささいな問題だったはずだ。これは「良い」ツイートがバイラルに広まらないことも意味していることに注意されたい。それが、エンゲージメントアルゴリズムをやめた場合の代価になるわけだが、アルゴリズムが全体ではよい世界に導くというのはいちおうもっともらしく聞こえる。

一般的な数字オンチ

先に(過少)反応している人々もいることに言及した。私は、多くの自称「銀河脳」をもつ思想家たちが、インフルエンザのほうがずっと危険なのでコロナウイルスを心配するのは馬鹿げていると人々に警告するのを何度も見てきた。Myths and Facts(神話と事実)の便利なインフォグラフィクスがFacebook中に広まり、「一般的のインフルエンザはコロナより年間60倍多くの人を殺す」ということを我々に「教えてくれた」。

もちろん、インフルエンザとコロナウイルスは直接比較できるものではない。これはリンゴとシマウマを比べるようなものだ。しかし、我々はインフルエンザで何が起きるかを知っているが、この新しいウイルスが何を起こすのかはまだ知らない。だからこれが心配事なのだ。「特に」比較すべきでないのが年間死者数だ。なぜならこの新しいウイルスが何かを知らないからであり、なぜならまだ人間の中に2カ月しか存在していないからだ。

人間の摂理

これは間違いなく大きい。人は程度の差こそあれ黙示録が好きだ。それが完全に理解できる話であり、思い描くことが可能であり、思い描いてきたことだからだ。だから、現実世界にある黙示録に関係するものはすべて、クリックとコメントとシェアを呼ぶ。

私にはわかる。たまたま私は、TechCrunchに書いているとき以外、GitHub Archive Programのディレクターを務めている。そこには現在使われている多数のアーカイブのほかに、1000年単位の歴史的目的あるいは使われなくなったけれども人々の心に残っているテクノロジーを復活させるための未来のためのストレージもある。私はGitHub Archiveの話をすると、すぐに「黙示録3174年」(Canticle for Leibowitz)の話になり、そのまま続いてしまう。

結構なことだ。誰もがプロジェクトに関心をもち、それについてアイデアをもつのは喜ぶべきことであり、同じように、コロナウイルスが世界的公衆衛生問題であり、人々がそれに注意を向けていることも私は喜んでいる。しかし、人々が黙示録のストーリーを集団的に好むようになり、上に挙げたような影響を与える人々の出現と組み合わさったとき、もしわれわれが気を許すと、その注意が見え透いた誤情報やちゃちな陰謀論への信仰に変わりかねない。信じる前に、そしてシェアする前に、立ち止まって考えてほしい。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。