コード決済の1つの未来がここに、LINE Fukuokaが木の葉モール橋本でモバイルオーダー&LINE Pay決済の実証実験

LINE Fukuokaは8月上旬から、福岡地所グループのエフ・ジェイ エンターテインメントワークスと共同で、福岡市西区橋本にある木の葉モール橋本にてLINEとLINE Payを使ったモバイルオーダーの実証実証実験を開始する。それに先駆けて7月31日に報道関係者に向けて実証実験の概要を説明・体験会を開催した。

エフ・ジェイ エンターテインメントワークスの宮崎喜彦氏

最近は、スターバックス・コーヒーやマクドナルドなどがスマートフォン用のアプリを使ったモバイルオーダーのサービスを導入しているが、今回の取り組みは巨大ショッピングモールのフードコートを実験場所にして、ランチタイムなどの混雑の解消や飲食店のオペレーション効率化を目的としている。

木の葉モール橋本事業部で支配人を務めるエフ・ジェイ エンターテインメントワークスの宮崎喜彦氏によると、LINEで木の葉モール橋本の公式アカウントを友だち登録している利用者は4万1000人とのこと。同モールは福岡市内でも比較的郊外の立地にもかかわらず、同社がイオン系のオーパと共同運営しているキャナルシティ博多の2.5万人よりも多いそうだ。木の葉モール橋本では、平日、休日にかかわらずランチタイムになると1Fのフードコードでは行列が常態化しており、これを解消するためにLINE Fukuokaと組んで実証実験を進めることになった。

今回の実証実験は2回分けて実施される。8上旬から月末までの第1弾の対象者は、木の葉モール橋本管理事務所の従業員約100名の関係者。8月末から10月末までの第2弾は木の葉モール橋本館内の従業員約1500名となる。

宮崎氏によると、第2弾の終了後に人数を絞って一般客を対象とした実証実験を行う可能性もあるとしたうえで、今年の11月、12月ぐらいには本格導入を進めたいとしている。第1弾の実証実験では、サブウェイとケンタッキーフライドチキンが協力しているが、今後はフードコードに入っているそのほかの店舗にも拡大していくという。

モバイルオーダーの方法は簡単で、木の葉モール橋本の公式アカウントを友だち登録してモバイルオーダーのメニューを選んで指示に従って操作するだけ。

決済時にLINE Payに処理が受け渡されて決済する仕組みなので、実質LINEアプリ内ですべてが完了する。LINEやLINE Payの設定を済ませておけば、新たにアプリをダウンロード、インストールする必要もない。注文した商品が出来上がると「商品ができあがりました」というメッセージがLINEに届く仕組みだ。あとは店舗所定の受け渡し場所でLINEの通知を見せればいい。

店舗側には専用のタブレット端末が配布されており、注文受け付け中、呼び出し中、完了の状況がその画面に表示される。利用者が注文した商品が出来上がるとタブレット上から呼び出しが可能だ。実際にタブレット画面の呼び出しボタンをタップすると、前述のように利用者のLINEに「商品ができあがりました」というLINEメッセージが送られる。なかなか取りに来ない利用者に向けて再度呼び出す機能もある。

今回は実証実験のため、各店舗のレジとは繋がっておらず売上などは別集計となる。またケンタッキーフライドチキンなどファストフード店のキッチンに導入されているオーダー一覧を俯瞰できるモニターとも連動していない。関係者によると、店舗ごとにオペーレーションが異なるの各店舗の既存システムにつなぐのはなかなか難しいとのこと。商品を券売機で購入する飲食店をどう扱うかという問題もある。このように店舗側のオペレーションについてはまだまだ改善の余地はありそうだが、行列の解消という第一の目的を果たすには有効な手段だと感じた。なお今回のモバイルオーダーの決済方法はコード決済ではなくオンライン決済の扱いとなるので、通常還元はマイカラーの0.5〜2%のみとなる。

今回の取り組みは、LINEやLINE Payという汎用のメッセンジャーや決済手段を使いつつ、木の葉モール橋本だけで使えるサービスをLINEのミニアプリとして構築した点で注目だ。エフ・ジェイ エンターテインメントワークスでは、今回の実証実験を経て同社直営のショッピングモールに順次導入していく予定もあるとのこと。公式アカウント(LINE@)なので、今後は木の葉モール橋木のの公式アカウントから同モールのフードコードだけで使えるクーポンなども配布できる。

●モバイルオーダーからLINE Pay決済までの一連の流れ

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LINEを使っていれば、別アプリのダウンロードやインストール、そして別アカウントを作る必要がないのは他社のコード決済にはない特徴だ。運営側はLINE@を作るだけで運用できるので、ショッピングモールや、各地域の商店街・商店会に限定した経済圏を手軽に構築できるポテンシャルもある。

いまだ殴り合いの還元合戦を全国規模で繰り広げているコード決済。個人的にはその行き着く先は、独自経済圏の構築と独自の信用スコアを活用した少額融資(ローン)だと考えている。

独自経済圏という文脈では、今回のLINEインフラを利用した木の葉モール橋本にも注目だが、Origami PayがLEXUS Origami PayとしてLEXUSオーナー限定のスマホ決済サービスを展開している(現在、新規の申し込み受付は停止中)。ファミリーマートのファミペイも、これまでファミマTカードユーザーの特典だった、ファミチキの数十円引きなどファミペイユーザーに移行した。少し意味合いが違うが、PayPayは8月28日まで虎ノ門・西新橋の加盟店限定で20%還元を実施している。

独自の信用スコアとしては、LINEはLINE Score、PayPayはグループ会社がJ-Scoreを提供している。そしてメルペイでは、eKYC(オンライン本人認証)や口座連携で本人確認が済んでいる利用者向けに、メルカリやメルペイでの取引実績に基づいて与信枠が設定された実質的な少額融資「メルペイあと払い」のサービスをすでに提供中だ。KDDIでは、別途審査が必要ながらau WALLET残高にチャージしてau Payなどで使える少額ローンの「au WALLET スマートローン」を提供中だ。

セブン&アイ・ホールディングスの独自コード決済である7payの大失策で、話題がセキュリティに偏り気味のコード決済。しかし、大盤振る舞いの還元合戦の先を見据えた戦いはすでに始まっている。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。