コーポレートベンチャー投資、2018年通年で増加の見通し

【編集部注】筆者Jason RowleyCrunchbase Newsでベンチャーキャピタルとテクノロジーを担当するライター

多くの企業が将来をベンチャー投資ポートフォリオにかけている。イノベーション競争でスタートアップにかなわないのであれば、ファイナンシャルパートナーとしてスタートアップとビジネスを展開すればいい。

多くのテック企業が確固たるベンチャー投資イニシアチブを持っているーAlphabetが世界展開するベンチャーファンディングや実をたくさん結んでいるIntel Capitalのスタートアップ投資などが思い浮かぶーが、他企業はたったいまベンチャー投資を倍増させつつある。

過去数カ月、いくつかの大企業がコーポレート投資に資本を追加した。たとえば、軍事企業ロッキード・マーチンは6月に自社ベンチャーグループに資本として2億ドルを追加した。アヒルで有名な保険会社Aflacはコーポレートベンチャー基金を1億ドルから2億5000万ドルに増やした。Cigna2億5000万ドルの基金を立ち上げたばかりだ。日本の通信大企業ソフトバンクが自ら280億ドル拠出している本当に巨大なVision Fundは言うまでもない。

2018年はこのままいくと、米国企業がかかわるベンチャー案件数として記録を打ち立てることになりそうだ。米国拠点のトップ100の公開企業(記事執筆時点での株式時価総額によるランクづけ)のコーポレートベンチャー投資パターンを分析し、そうした結論に至った。下のチャートはステージ別を表記した2007年からの投資アクティビティを示している。

このチャートでいくつか目を引く点がある。

これら大企業が投資するラウンドの回数は今年、このまま行けば最多を記録する。今年はまだ四半期まるまる残っている。ホリデーシーズンは例年ベンチャーの動きがややスローダウンする傾向にあるとはいえ、おそらく前年を上回るだけの十分な動きはある。

そのほかに特記すべきこととして、コーポレートインベスターの一部はシードやアーリーステージの企業に繰り返し、そしてより多く投資している。2018年のこれまでのところ、シードまたはアーリーステージのラウンドはコーポレート・ベンチャーディールフローの60%超を占めている。より投資件数が増えればこの数字はさらに大きくなるかもしれない。(特に、エンジェル、シード、シリーズA案件はレポートとして上がってくるまでにタイムラグがある)。過去数年は同様の動きだ。

また、このチャートには優良会社の過去10年のリスク対応姿勢の縮図が現れている。リスクを伴うキャピタル投資の後退を引き起こした2008年経済危機時の恐怖や不確かさが見て取れる。

危機は2008年に始まったが、株式市場は2009年まで底を打たなかった。チャートでコーポレートベンチャー投資の動きが少なくなっているところが底だ。その後経済は回復するが、安い金利で元気付けられたのだろうか。パブリックそしてプライベートの投資家にとってはわずかに膨らんで弱っただけのマーケットを引き起こしたにすぎず、我々はいま、その真っただ中にある。

従来のベンチャー企業の多くがリミテッドパートナーに保有されていた一方で、投資家ベースでは異なった年金基金、寄付、投資信託ファンド、富裕層をターゲットにしたファミリーオフィスへと少しずつ広がっている。稀な例外もあるが、コーポレートベンチャー企業の投資家は、企業そのもの1社のみだ。

たいていそれは、コーポレートベンチャー投資はその企業の戦略と方向性は同じということになる。しかし企業はまた、投資家やエンジェルが行っているように、バラエティを豊かにするという理由でスタートアップにも投資を行う。それは将来を考えてのことだ。

データに関して

この記事の目的は企業の投資活動を可能な限りつまびらかにすることだったが、言うほどに簡単なことではない。

我々はなんとも不自然なデータセットで取り組み始めた。そのデータセットとは、米国に拠点を置く公開企業で、記事執筆時点での株式時価総額ランキングトップ100の企業というものだ。それから我々は、そうした企業のネットワーク下にあるサブ組織をCrunchbase データであたった。これにより、各企業が行った直接的な投資だけでなく、企業のベンチャーファンドや他の子会社が行った投資の動きも拾うことができた。

我々がAlphabetの世界的な投資を調べるときにとった手法と同じような方法だ。Alphabetの例でいくと、Alphabetの直接の投資に加え、サブ組織に関連する投資も把握できた。今回はこの作業を1社ではなく100社分行った。

これは決してパーフェクトなアプローチではない。企業はCrunchbaseに記載されるベンチャー部隊を持つことは可能だ。しかしどうしたことか、ベンチャー部隊は親会社のサブ組織として記載されない。加えて、リストにある企業の多くが米国拠点であるにもかかわらずグローバルで存在感が大きく、そうした企業のいくつかがレポートにあがってこない海外マーケットで投資を行っているというのはあり得る。

イメージクレジット: Li-Anne Dias

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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