コーワーキングスペースのSpacemobが550万ドルを調達、アジア太平洋全域でのサービス提供を目指す

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コーワーキングスペースが、アジアで大きなビジネスになり始めている。今年に入ってからWeWorkが中国市場に進出したが、同社以外にも多くの企業がアジアでその覇権を争っている。シンガポールを拠点とするSpacemobもそのうちの一社で、同社は今後アジア太平洋地域全体へサービスを拡大するため、シードラウンドで550万ドルを調達したと本日発表した。

これは、東南アジアに拠点を置く企業のシードラウンドとしては、かなり大規模なものだ。なお、本ラウンドでは、シンガポールの政府系ファンドTemasek Holdingsのベンチャー部門にあたる、Vertex Ventures Southeast Asiaがリードインベスターとなった。

SpacemobのファウンダーであるTurochas “T” Fuadは、以前立ち上げたTravemobという企業を、2013年にAirbnbのライバルにあたるHomeAwayに売却していた。現在Spacemobはシンガポールで”旗艦”スペースを運営中で、シンガポール第二のスペース、そしてジャカルタにも新スペースを設立しようとしている。また、General AssemblyやSurvey Monkeyといった企業が、早くからSpacemobのスペースを活用している。

Fuadによれば、Spacemobは今後3年間で、アジア太平洋地域に合計30のスペースを開設しようとしており、特に、東南アジア、北アジア、オーストラリア、香港の4地域に注力していく予定だ。現在設立準備中の2つのスペースの次は、タイ、香港、台湾での開業を目指している。

これはかなり野心的な計画にも映るが、FuadはSpacemobが”オペレーター”モデルをとっており、多額の資産を必要としないため、スピーディーにスケールできると考えている。

「ホテル業界で採用されているモデルのように、私たちはオペレーターとして、ディベロッパーや物件の所有者と協力しながらサービスを提供し、売上を分け合ったり、家賃なしで彼らの物件を利用したりしながら、彼らの収益を最大化しようという計画です。さらに、アジア太平洋地域の多くのオペレーターとも提携しているため、MarriotやAccorがフランチャイズを展開するように、私たちも競合他社よりかなり早いスピードでスケールすることができると考えています」と彼は説明する。

他のコーワーキングスペースのように、Spacemobは利用者に対して関連サービスと活発なコミュニティを提供しており、利用者が会議室の予約やネットワーキングのために使うソフトウェアは、インハウスで開発された。メンバーシップには、健康保険や給与支払い・決済用のゲートウェイなどが含まれており、さらにはコンテンツライターやサーチエンジンマーケター、ディベロッパーなどの専門家によるサービスも追加料金を支払えば利用可能だ。

「私たちは、コーワーキングスペース自体がサービス仲介業者になるような、エコシステムを構築しようとしているんです。Freelancer.comで外注先を探す代わりに、Spacemobを利用すれば、少し歩くだけで信頼できる人をみつけることができます」とFuadは話す。

WeWorkは、まだ中国以外のアジア市場へは参入していないが、それも時間の問題だ。つまり、Spacemobはそのうち、資金力豊富な競合と勝負していかなければならなくなる。なお、WeWorkはこれまでに13億ドルを外部から調達しており、そのバリュエーションは160億ドルに達している

「Spacemobは低価格戦略をとっており、サービス内容が成功の鍵を握っています。私たちはスタートアップに対して、お金に見合った価値を提供しようとしているんです」とFuadは語る。

コーワーキングスペースはスタートアップ業界でのみ通用するサービスだと考えている人もいるが、Fuadは小企業以外の利用者も想定しており、サービスの提供者も多岐に渡ると彼は考えている。

「(自社のオフィスを構える代わりに)200~300人の従業員の執務スペースとして、Spacemobを利用したいと考えている大企業とも私たちは話を進めています」とFuadは付け加える。「これはホテル業界の動きにかなり近いため、今後世界中でさまざまな企業が、私たちと似たような事業を始める可能性があります」

また、東南アジアのテックブログE27が今年の夏に行った220万ドルの投資ラウンドに参加するなど、Specemob自体も投資活動を行っている。アジアのテックコミュニティや将来有望なスタートアップのことを宣伝する上で、SpacemobとE27の事業には大きなシナジーがあるとFuadは考えているのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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