サイバーセキュリティにとって厳しかった2021年は関連スタートアップには記録的な年に

2021年は、サイバーセキュリティにとっては厳しい年だったかもしれないが、セキュリティ関連のスタートアップ企業にとっては記録的な年となった。

セキュリティ業界の財務アドバイザリー会社であるMomentum Cyber(モメンタムサイバー)が発表した新しいデータによると、2021年のサイバーセキュリティ関連スタートアップ企業がベンチャーキャピタルから調達した資金の総額は295億ドル(約3兆4000億円)と「記録的」な数字だったという。これは2020年に調達した120億ドル(約1兆4000億円)の2倍以上であり、過去2年間の合計額を上回る。

投資家たちは、この記録的な金額の資金を1000件以上の案件に注ぎ込み、そのうち84件が1億ドル(約116億円)を超えていた。その中には、産業用サイバーセキュリティのスタートアップであるDragos(ドラゴス)が獲得した2億ドル(約232億円)のシリーズD、Claroty(クラロティ)の1億4000万ドル(約162億円)のプレIPO調達パスワードレス認証のTransmit Security(トランスミット・セキュリティ)が調達した5億4300万ドル(約625億円)のシリーズAが含まれる。資金調達額の合計は前年比138%増となったことが、Momentum社のデータから明らかになった。

Momentumによると、この歴史的な投資額は、業界におけるイノベーションの活性化と、新型コロナウイルス感染流行の影響から悪化したサイバー脅威の爆発的増加によってもたらされたもので、2021年には記録的な数のセキュリティスタートアップがユニコーン企業となった。前年はわずか6社だったのに対し、2021年はWiz(ウィズ)、Noname Security(ノーネーム・セキュリティ)、LaceWork(レースワーク)など、30社以上のスタートアップが10億ドル(約1158億円)以上の評価額を達成した。

同様に、M&Aの件数も2020年の3倍以上に急増。2021年には286件の合併・買収が行われ、取引額の合計は775億ドル(約9兆円)となった。2020年には178件の買収があり、合計額は197億ドル(約2兆3000億円)に過ぎなかった。Momentum社のデータによると、これらの買収のうち十数件が10億ドルを超えた評価額となっており、その中にはAdvent(アドべント)がMcAfee(マカフィー)を買収した際の141億ドル(約1兆6000億円)、Thoma Bravo(トーマ・ブラボー)がProofpoint(プルーフポイント)を買収した際の123億ドル(約1兆4000億円)、NortonLifelock(ノートンライフロック)がAvast(アバスト)を吸収合併した際の80億ドル(約9300億円)、Okta(オクタ)がAuth0(オースゼロ)を買収した際の64億ドル(約7400億円)などが含まれている。

このような成長は、Momentum CyberとNightDragon Security(ナイトドラゴン・セキュリティ)の創業者兼マネージングディレクターであるDave DeWalt(デイヴ・デウォルト)氏が「サイバーの黄金時代」と呼ぶものを反映しており、すぐには減速しそうもない。Momentum社によると、脅威の増加にともない、業界は「さらに大きな」2022年に向けて準備を進めているという。

画像クレジット:Yulia Reznikov / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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