サッポログループがスタートアップと組んで新規事業創出へ

サッポロホールディングスは7月18日、サムライインキュベートと共同でスタートアップ共創型ビジネスコンテントの最終審査会を開催した。同コンテストは、スタートアップ企業とサッポログループ内の選抜メンバーが協力して、新規事業の創出から事業化までを取り組むオープンイノベーションプログラム。コンテストのメインテーマは「酒・食・飲事業の創造」で、サッポログループのアセットやサービスを活用した新規事業案を募集した。最終選考には以下の5グループが残った。

ふたりのみ(チーム:SAPPORON)
「NaniQuo」「Racook」「Amarimo」などの食事提案アプリを開発しているmeuron(ミューロン)と組み、クラフトビール6種類、おつまみレシピ3種類をレコメンドするサービスを提案。チャットボットにビールの好みや感想など送ることで、次回に飲むべきビール銘柄やお勧めのレシピを提案してくれる。クラフトビールとおつまみを月2回発送する定額3980円のサブスクリプションモデルを想定している。

AIを活用したパーソナルな健康食生活マネジメント(チーム:OJH)
食事の写真からカロリーを算出する「カロミル」アプリを開発しているライフログテクノロジーと組み、健康診断の結果と1週間の食事の写真を送ることでデータを解析し、その結果を基にした健康指導サービスを提案。健康指導時に病気になった場合に必要な医療費を換算して利用者に知らせてくれるのが特徴だ。マネタイズのポイントは1週間の食事データ。これまで蓄積されてこなかった個人の食事データを集めることで、レシピやコンビニ製品、宅配商品などをレコメンドできる。さらに、商品開発や食事指導、広告配信などに活用できるとしている。

クックパシャット(チーム:聖域なきキッチン改革)
音声を活用した広告の制作・配信などを手がけるオトナルと、冷蔵庫内の食材を写真に撮って送ることでレシピを提案してくれる「クックパシャット」を提案。主にどういった食材を使いたいかを書き加えることで、より具体的なレシピを提案してくれる。現在は人力で画像を解析しているが、将来的にはAI(edison.ai)を併用したサービスとして作り込んでいく予定とのこと。

みんぐる(チーム:five★flow)
IoT機器の開発などを手がけるイーフローと共同で、廃業を考えている店舗、もしくはそのレシピを継承できるサービスを提案。具体的には、レシピや店舗運営のノウハウを資産化して、継承したい人材を募集する。それぞれの店舗のファンサイトを運営することで、名物メニューの開発秘話などのコンテンツ配信やリアルイベントの開催を通じてコミュニティーを醸成し、継承者を発掘していく。継承者が決まったら経営ノウハウだけでなく設備面までサポートする。店舗運営については、イーフローの強みであるIoT機器を活用したシステム支援も行う。

全食品メーカーの食品ロスを無くし循環させるシステム(チーム:MAKE FUTURE)
外食産業のウェブマーケティング戦略、販売促進、業務改善、システムの開発、店内業務サポートなどを手がけるREARSと共同で、フードロスを軽減するマッチングサービスを提案。食品・飲料メーカーなどの賞味期限間近の製品や余剰食材を飲食店に格安で提供することで、廃棄される食材を減らす。消費者は月額980円を支払うことで、月10回までそれらの食材を活用した外食を楽しめる、B2B2Cのビジネスモデルを目指す。

最終的に事業化挑戦権を獲得したのは、SAPPORONチームの「ふたりのみ」と聖域なきキッチン改革チームの「クックパシャット」の2つの事業案となった。

サッポロホールディングスの代表取締役を務める尾賀真城氏は、今回の2チームの選考について「もう少しブラッシュアップが必要だが、いままでにない視点の事業案を重視した」とコメント。惜しくも事業化権を逃したチームについても、同社グループで飲食店事業を手がけているサッポロライオンや飲料系事業を手がけているポッカサッポロフード&ビバレッジが推していた事業案もあったとのこと。今後、形を変えて事業化される可能性もありそうだ。

今回のサッポロの取り組みは、あくまでもグループ内の事業活性化を目指したもので、スタートアップ企業が競うピッチコンテストに比べると事業内容やマネタイズ施策の点で少し物足りない部分も多かった。しかし、企業が持つアセットやサービスの一部を開放するという点では面白い取り組みではないか。

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TechCrunch Japan

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