サムスンが約2兆円でテキサス州テイラーに先端半導体工場建設を発表

Samsung Electronics(サムスン電子)は米国時間11月23日、先端ロジックデバイスを生産する半導体ウェハー製造工場をテキサス州テイラーに新設することを決定した、と発表した。

推定170億ドル(約1兆9580億円)の今回の投資は同社にとって米国における最大の投資となり、新工場がフル稼働すれば約2000人の新規直接雇用と数千人の関連雇用が創出される見込みだ。今回の投資により、Samsungが1978年に米国で事業を開始して以来、米国での投資総額は470億ドル(約5兆4140億円)超となる。

テイラー工場は、オースティンに現在あるSamsungの製造拠点から約16マイル(約25キロ)のところにあり、韓国・平沢の最新の新生産ラインとともに、Samsungのグローバルな半導体製造能力の重要な拠点になると期待されている。

テイラー新工場では、モバイル、5G、高パフォーマンス・コンピューティング(HPC)、人工知能(AI)などの高度なプロセス技術に基づく製品を製造する。

今回のSamsungの決定は、世界的な半導体不足が自動車や電子機器といった産業を弱らせているの中でのものだ。

同社は、先端半導体製造をよりアクセスしやすいものにし、急増する半導体製品需要に応えることで、世界中の顧客をサポートすることに引き続き注力すると述べた。

同社は、500万平方メートルを超えるテイラー工場の建設を2022年の第1四半期に開始し、2024年下半期の生産開始を目指す。

Samsung Electronicsのデバイスソリューション部門の副会長兼CEOであるKinam Kim(キナム・キム)氏は「テイラーに新しい施設を設けることで、Samsungは自社の未来における新たな重要な章のための基礎を築いています」と述べた。「製造能力の向上により、顧客のニーズにより良く応えることができ、世界の半導体サプライチェーンの安定に貢献することができます。当社はまた、米国で半導体製造を開始してから25周年を迎えるにあたり、より多くの雇用をもたらし、地域社会のトレーニングや人材育成を支援できることを誇りに思っています」。

製造工場の候補地として米国内の複数の場所を検討した結果、地元の半導体エコシステム、インフラの安定性、地元政府の支援、地域開発の機会など、複数の要素を考慮してテイラーへの投資を決定した。

報道によれば、アリゾナ州、ニューヨーク州、韓国などを候補地として検討したSamsungは、税制面で有利であることを理由にテキサス州ウィリアムソン郡を選んだ。7月にテキサス州当局に提出された書類によると、Samsungはテキサス州テイラーに半導体工場を建設するために(テイラー独立学校区からの)減税措置を申請した。

「Samsungは財政およびその他のインセンティブ(例:インフラやユーティリティーの支援)を通じてプロジェクトをサポートする強力な公的パートナーを求めています。このプロジェクトに関連して、Samsungはテキサス州企業基金からチャプター380およびチャプター381の支援に基づくリベートを求めています。加えて、提案されているプロジェクトの建設と運営を支援するために、特定のインフラやユーティリティーの改善、料金の引き下げ、その他の非現金給付に関連するインセンティブも追求しています」と文書にはある。

Samsungはまた、テイラー独立学校区(ISD)に、学生が将来のキャリア・スキルを身につけるためのサムスン・スキルズ・センターを設立し、インターンシップや採用の機会を提供するための資金援助を行う。

テキサス州のWayne Abbott(ウェイン・アボット)知事は「Samsungのような企業がテキサスへの投資を続けるのは、テキサスの世界クラスのビジネス環境と卓越した労働力のためです。Samsungがテイラーに新設する半導体製造施設は、勤勉なテキサス州中央部の人々とその家族に無数の機会をもたらし、半導体産業におけるテキサス州の継続的な卓越性に大きな役割を果たすでしょう」と述べた。

「テキサス州のパートナーに加えて、最先端の半導体製造を米国で拡大しようとしているSamsungのような企業を支援する環境を整えてくれたバイデン政権に感謝しています」とキム氏は述べた。「我々はまた、米国内の半導体生産とイノベーションに対する連邦政府のインセンティブを迅速に制定するために超党派でサポートした政権と議会にも感謝しています」とも語った。

世界最大の半導体メーカーの1社であるSamsungは8月に、グローバルプレゼンスを強化すべく、今後3年間で半導体、バイオ、IT、次世代通信ネットワークなどの分野に2050億ドル(約23兆6000億円)超の投資を行う計画を明らかにした。

先週、北米を訪れたSamsung Groupの事実上のリーダーであるJay Y. Lee(ジェイ・Y・リー)氏はワシントンD.C.で米政府関係者と面会し、第2の半導体工場と半導体のサプライチェーンについて協議した。リー氏はまた、ビジネス上の結びつきを強化するため、Microsoft(マイクロソフト)CEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏、Moderna(モデルナ)やVerizon Wireless(ベライゾン・ワイヤレス)の幹部などハイテク企業のリーダーたちとも会談した。

Intel(インテル)は最近、アリゾナ州で2つの新しい半導体製造工場の建設に着手した。同時に、TSMCは120億ドル(約1兆3810億円)を投じるチップ工場の建設をアリゾナ州で開始し、10月には日本初の半導体工場の建設計画を発表した。また、Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)は、テキサス州シャーマンに新たに4つの半導体製造工場を建設する投資計画を発表した。

画像クレジット:JUNG YEON-JE/AFP / Getty Images

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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