サムスンがB2Bパートナーや開発者との連携を強化

おそらくサムスン(Samsung)は消費者中心のエレクトロニクス企業だと考えられているだろうが、実際には非常に大規模なB2Bビジネスも展開していて、1万5000社以上の大企業と数十万の中小起業家に、パートナーを通じてサービスを提供している。

LONDON, UNITED KINGDOM – JUNE 4: Detail of the Samsung logo outside the Samsung Experience Store on Oxford Street in London, taken on June 4, 2019. (Photo by Olly Curtis/Future Publishing via Getty Images)

今週に開催された開発者カンファレンスは、関連するハードウェアの発売も含めて、こちら側のビジネスにスポットライトを当てている。しかし本日(米国時間10月30日)のニュースの焦点は、Knox、Samsungのモバイルセキュリティプラットフォーム、およびProject AppStackである。AppStackはまもなく名称が変わる予定だが、B2B顧客に対してSaaSツールと従業員用デバイスにネイティブアプリを配信する新しいメカニズムを提供し、同時に開発者たちがこうしたサービスをより探しやすくする新しいツールも提供する。

少なくとも米国では、サムスンはこれまでB2Bビジネスをそれほど売り込んでは来なかった。だが、このイベントで、明らかに同社はそれを変えようと考えている。

サムスンのコアは、もちろんハードウェア企業である。米国のモバイルB2B部門の責任者であるタヘル・ベベハニ(Taher Behbehani)氏が私に語ったところでは、実際サムスンのタブレットの売り上げは昨年2倍になったが、その用途の大部分が、商用開発とビジネス向けソリューションだったという。この市場により良いサービスを提供するため、同社は本日、堅牢なタブレットTab Active Proを米国市場に導入することを発表した。これまで同機種は、ヨーロッパでのみ提供されていた。

Active Proは10.1インチのディスプレイを搭載し、サムスンのS Penと、デスクトップで使用するためのDexをサポートしている。堅牢なデバイスに期待される、防塵と防水性を備えており、約4フィート(約1.2メートル)からの落下に余裕で耐え、最長15時間の連続使用が約束されている。また、LTE接続が可能で、背面にNFCリーダーを備えセキュリティアプリに利用したり、非接触型支払い(これは世界中の多くの場所で一般的になっているが、米国ではゆっくりとしか普及が進んでいない)に利用したりすることができる。また同時に、ビジネスユーザーや現場の作業者が選んだ任意のアプリケーション(例えばバーコードスキャナーなど)を起動できるプログラム可能なボタンも備えている。

「従来の堅牢なデバイスは比較的高価で、勤務時間中ずっと持ち歩くには比較的重いものでした」とサムスンのクリス・ブリグリン(Chris Briglin)氏は私に語った。「サムスンは、従来は堅牢なデバイスを購入する余裕がなかったユーザーや、最大4人の同僚とデバイスを共有する必要があったユーザーに提供を行うことで、この市場を成長させます」。

しかし、本日のイベントでは、ソフトウェアやパートナーシップの話題に比べると、ハードウェアに関する話題は控え目だ。発表の核となるのは、新しいKnoxパートナープログラムだ。これは、パートナーがサムスンデバイスでアプリケーションを開発および販売を行うための新しい方法である。「約10万人の開発者と協力しています」とベベハニ氏は述べている。「こうした開発者の一部は社内にいますし、また外部の独立した開発者やISVもいます。これらの開発者コミュニティから私たちが聞かされているのは、彼らがソリューションやアプリを開発したときに、それをどのように顧客に届ければ良いのか、それをどのように効率的に配布すればよいのか?という声です」。

この新しいパートナープログラムは、その課題に対するサムスンからのソリューションだ。これは、既存のSamsung Enterprise Allianceプログラムを進化させた3層のパートナープログラムである。最も基本的なレベルでは、パートナーはサポートおよびマーケティング資産にアクセスすることができる。すべての層で、パートナーはアプリケーションに対するKnox認証を取得して、すべてのKnox APIを適切に実装していることを証明することも可能だ。

無料のBronzeレベルには、ライセンスキーと共に、Knox SDKおよびAPIへのアクセスが含まれる。Silverレベルでは、パートナーはそれぞれの地域でサポートを受け、ゴールドレベルのメンバーはSamsung Solutions Catalogにアクセスできるだけでなく、Samsungの販売チームが世界中で使用している内部のカタログに掲載されることが可能となる。「このプログラムは、サムスンのチームが顧客のニーズを満たす適切なソリューションを見つけ、これらのソリューションを顧客に促進できるようにするためのものです」と同社は本日の発表で述べている。またゴールドレベルのパートナーは、テストデバイスにもアクセスすることができる。

開発者がより多くの企業や中小ビジネスにリーチできるようにする、もう1つの新しいサービスがProject AppStackだ。

「新しい顧客の方がサムスンのデバイスを購入すると、それが中小ビジネスであろうと大企業であろうと、ご提供いただいた情報に応じて、そのビジネスと規模に合った様々なアプリケーションを検索し選択することを行っていただけるようになります」とベベハニ氏は説明した。「そして、一度携帯電話がアクティベートされると、そうしたアプリは、現在私たちが開発中のバックエンド配信メカニズムを通じて、ISVまたはSaaSプレーヤーを経由してダウンロードされます」。

大企業の場合、サムスンは特定のアプリケーション群を推奨するために、ビジネスの規模と対象となる業種を調べるアルゴリズムも実行する。

サムスンは、開発者とその顧客がこのサービスをどのように使用したいかを正確に把握するために、今後数か月にわたって一連のハッカソンを開催する予定だ。「これは機能モジュールですし、技術的バックエンドです。さまざまなコンポーネントが用意されています」とベベハニ氏は述べている。「私たちは微調整を待つ多くのツールを既に揃えています。そして正直に言えば、私たちは市場の要求と、市場で要求される創造性を正確に反映した、概念実証実験を市場で行えることも望んでいるのです」。

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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