サービスメッシュ型コンピューティングの普及に賭けるBuoyantがシリーズAで$10.5Mを調達

Buoyantは、TwitterのインフラストラクチャエンジニアだったWilliam MorganとOliver Gouldが作った企業だが、同社は今日(米国時間7/11)、シリーズAで1050万ドルを調達したことを発表した。このラウンドをリードしたのはBenchmark Capital、これに、女性を中心とするTwitterの新旧役員グループ#Angelsと、これまでの投資家A Capital Ventures, Data Collective, Fuel Capital, SV Angel, そしてWebb Investment Networkが参加した。BenchmarkのPeter FentonがBuoyantの取締役会に加わるが、彼は数か月前にTwitterの取締役会を降りたばかりだ。

Buoyantは誰もが知ってる名前ではないが、オープンソースのLinkerdプロジェクトを作った企業だ。今年の初めにCloud Native Computing Foundationの一員となったこのプロジェクトは、いわゆる“サービスメッシュ”(service mesh)と呼ばれる、新しいインフラストラクチャツールの中で、たぶんもっとも人気のあるシステムだ。サービスメッシュ(サービスの網)とは、今日のアプリケーションを構成するさまざまなサービスを互いに通信/コミュニケーションさせるための、インフラストラクチャ層だ。たとえば、Kubernetesなどのコンテナオーケストレータの上で動く複雑なアプリケーションは、たぶん何百ものさまざまなサービスで構成されているだろう。これらのサービスは、静的とはとても言えないネットワークの上で、互いに通信できなければならない。LinkerdやIstioのようなサービスメッシュは、ロードバランシングとダイナミックルーティングを組み合わせて、それらのサービス間の通信を確保する。なお、Istioは、最近発表されたGoogle/Lyft/IBMのコラボレーションだが、今ではLinkerdと共用できる。

現在のLinkerdのユーザーには、Ticketmaster, Apprenda, NextVR, Houghton Mifflin Harcourt, Monzo(イギリスの銀行スタートアップ)などがいる。

“ソフトウェア産業の全体がクラウドコンピューティングへ移行すると、アプリケーションの作られ方や運用のされ方が大きく変わる”、 BenchmarkのFentonは今日の発表声明でこう述べている。“Buoyantによるサービスメッシュの導入は、マイクロサービスのコンポーネントやクラウドネイティブなソフトウェアと同じぐらい基本的な成分になる可能性がある。ネットワークプログラミングにとって、TCP/IPがそうであったように。そしてLinkerdが昨年思い切ってオープンソースを採用したことによって、そのニーズが企業にとって喫緊のものであることが明白になってきた”。

BuoyantのCEO William Morganによると、サービスの収益化についてはまだ何も決めていない。今度の資金は、エンジニアと製品開発部門の増員に充てられる。今社員は13名だが、エンタープライズユーザーにはすでに有料サポートを提供している。Linkerdを中心とするエコシステムを築くことが先決で、収益化云々に関心を向けるのは時期尚早である。“ある時点で方向を変えてお金を稼がなければならないけど、短期的にはオープンソースの採用が関心の中心になる”、と彼は語る。

企業のアプリケーションの開発が“クラウドネイティブ”型へ移行していくに伴い、Linkerdのようなプロダクトへのニーズもたちまち明らかになってくると思われるが、現時点ではまだ時期が早く、とくに大企業は歩みが遅い。しかしMorganによれば、アーリーアダプタたちの多くは大企業よりむしろスタートアップたちである。“彼らは今すでにクラウドネイティブのスタックへ移行しつつあるし、それには正当な理由がある”、とMorganは語る。“彼らは自分たちのアプリケーションをこのクラウドモデルで運用したいと願っている。それなら、ハードウェアのコントロールがほとんど不要だからだ”。

DockerとKubernetesがこのパズルの一片を解いたが、往々にして一つのソリューションが新しい問題をもたらすのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

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TechCrunch Japan

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