ザッカーバーグのアイデア「Facebookは市民が政府を作り変える力になれる」を評価する


Mark Zuckerbergには、Facebookは途上国の人々が自分たち自身の政府を決める手助けをするようになる、という壮大なビジョンがある。それは遠大、かつ達成可能なゴールだ。エジプトが次期大統領を国民の「いいね!」で投票させることはなさそうだが、Facebookを使って専門家の意見をクラウドソースすることは理論的に可能だ。世界中の政府が、過激なオンライン直接民主主義を実験しているが、いつもうまくいくとは限らない。

ごく手短かに、Zuckerberg、E-政府に関する彼の大きなビジョンについて、WiredのSteven Levyに説明し、途上国にブロードバンドを普及させるための新しいコンソーシアム、Internt.orgについても語った。

「人々はよく、ソーシャルメディアがここ米国の文化に与えた変化の大きさについて語る。しかし、途上国が初めてオンラインになった時の変化の大きさを想像してほしい。われわれはFacebook等を使って、ニュースをシェアしたり友達と連絡を取りあったりするが、途上国では、どんな政府が欲しいかを決めるために使うだろう。生まれて初めて医療情報にも触れる。

「政府を・・・決める」と言う時、Zuckerbergは、投票、アイデアの共有、あるいは憲法の制定について話しているのかもしれない。本誌では、それらすべての可能性を評価してみることにした。

憲法/政府の選択:これまでのところインターネットは失敗している

真新しい政府を構築するというワクワクする、かつ恐ろしい立場にいる国民にとって、アメリカンスタイルの民主主義は、数ある選択肢の一つだ。例えば、英国は、議院内閣制を採用し、憲法を持たない。他には、政府が政治学者の助言に耳を傾け、「コンセンサス型民主主義」を作ろうとするケースもある。そこでは3つ以上の政党が国民や企業、政府の様々な部門と協力して、法を制定するよう動機づけられている。

少なくとも一度、インターネットを通じて新しいスタイルの民主主義を選ぶ試みが行われたことがある。世界的金融危機がアイスランド経済を破綻させた後、草原の国のハッピーな人々は、政府をやり直し、一般から助言を募る決定を下した(950人のアイスランド人がクジ引きで選ばれ、ソーシャルネットワークを通じて一般からアイデアが募られた)。アイスランドの「クラウドソース」憲法に関する多くの報道がなされた後、立候補したリーダーの殆どが拒絶されるという惨めな失敗に終った。

法律、特に憲法の制定は、法的に複雑だ。国民のやみくもな助言を法律用語に翻訳する系統だった方法がない限り、結果は破滅的だ。

「協同作業による草案作りを、大規模、低コスト、かつ包括的に行うことは、未だにそのやり方をわれわれは知らない」と世界銀行の参加型民主主義コンサルタント、Tiago Peixotoは言う(彼はTechCrunchが選ぶ民主主義における最も革新的な人物の一人でもある)。

Peixotoは、ブラジル政府の世界でも数少ないオンライン政策決定システムの実施を手伝った人物であり、Facebookが役に立つことに関しては楽観的だが、法案作成にはまだ使えないと言っている。

ソーシャルネットワークを使って新しい政府を作ることは、技術的には可能だが、その方法はまだ誰にもよくわかっていない。そのため、リーダーはこのアイデアを拒否することが多い。つまり、エジプトが自分たちの未来をFacebookの「いいね!」で決めることは期待しない方がいい。

Facebookが得意なこと:投票と世論を引き出す

Facebookは投票率にすばらしい影響力を持っている。ある大規模な無作為実験によると、Facebookは〈投票へ行こうキャンペーン〉の効果を4倍増させ、国政選挙の投票率に2.2%増という有意な影響を与えたという。多くの国でインターネットが普及すれば、Facebookは古き良き方式の選挙を補強するだろう。

さらには、Facebookが有権者に飽和するにつれ、民意の指標になりつつある。前回の選挙でCNNは、近況アップデートの意味データを分析し、特定の意見や候補者について一般市民がどう感じているかを解明しようとした。近況アップデートは、調査対象が思い出すのが困難な問題に関する情報源として極めて優れており、電話による世論調査よりもはるかに大量のデータを分析できる。

しかしPeixotoは、Facebookの分析が代表性のない徒労に終る可能性を警告する。第一に、Facebookは文字ベースであるため、途上国の多くの非識字人口が無視されることになる。第二に、Facebookは人が気に入ったものを見せる傾向にある。Facebookユーザーは、同性愛者の権利に対して驚くほど好意的であり、米国世論を変える力になった

しかし、女性嫌悪と人種差別の歴史を持つ途上国で、最大の声高な批判者に過度な力を与えることは破滅的である。また、同性愛者や女性が積極的に発言することが危険な場所で、社会的弱者が話す気になるかどうかさえ定かではない。

野望

TechCrunchの政策チャンネルであるCrunchGovは、常にE政府に関心を持っている。それを実現するためのツール作りにも積極的に取り組んでいる。昨年冬、われわれはクラウドソースによる立法プラットフォーム、Project Madisonを立ち上げた。これはDarrell Issa議員のオープン政府基金で作られた政府の政策立案をより透明、包括的、知的にするためのツールだ。

理論的に、Facebookはより代表性のある専門知識を推進するための大きな力になることが可能だ。Peixotoはソーシャルネットワークについて、「ブレーンストームを行えば、優先事項を集約できる」と言う。だから、いくらかのリサーチと大いなる〈大胆さ〉があれば、Facebookは民主主義の道具箱に入る強力なツールになるだろう。

「Facebookはオンライン民主主義の方法を改善する特権的立場にある」とPeixotoは結んだ。

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(翻訳:Nob Takahashi)


投稿者:

TechCrunch Japan

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