シリコンバレーの常識にとらわれるな:テクノロジー企業はこうして世界を変えられる

grand-canyon-view-of-colorado-river-from-black-bridge1

先週、一握りのIT業界大物が、社会に役立つ行動を起こした。

オバマ大統領のConnectHome構想のパートナーとして、インターネットサービスプロバイダー、スタートアップ、およびIT非営利団体が協力して、27万5000人の公営住宅に住む人々にブロードバンドアクセスを提供する。テクノロジーが日々の生活の一部となりつつある今、ConnectHomeはIT企業に対して、彼らが自社製品をできるだけ多くの人たちに利用できるようにする責任を再認識させるはずだ。

オンデマンド経済の誕生は、便利さの概念を再定義した。事実上、思いつくものすべてが ー 夕食、食料品、仕事の手伝い、移動 ー タップ一つで呼び出せる。これらのサービスは多く人々の生活を改善してきたが、恩恵を享受できるのは、アクセスできる余裕のある人々だけだ。

最近のITブームが一部の人々の生活改善に集中していることを、New York Timesの最近のコラムでポイントツーポイント・ソリューションの価値について論じたFarhad Manjooも指摘している。Majooは、IT企業のサービス規模拡大の使命 ー できるだけ安く、アクセスしやすく ー に対して懐疑的で、シリコンバレーが直面する道徳的ジレンマを強調する。

無数のスタートアップがシリコンバレーの裕福な住民にサービスを提供して富を得ているが、IT企業には彼らを育てたコミュニティーに恩返しする機会がまだあるはずだ。

今日でも、米国の何千万人という人々がインターネットを利用できず、世界では50%以上がそうであることを知ると落胆する。政府はブロードバンドアクセスを水道や電気と同じく、我々の生活に不可欠であることを認識した

オンライン接続がそれを持つ人々に大きな恩恵を与え、持たない人々と大きな格差を生んでいることはいうまでもない。Mark ZuckerbergによるInternet.orgを通じて世界に低価格な基本インターネットサービスを広める取り組みは、中でもよく知られた活動だ。

消えゆく中流階級に象徴される世代に均等な機会を確実に与えることは、最良の方法だ。オンラインサービスやマーケットプレイスの利益享受者として、IT企業は自分たちのコミュニティーに良い影響を与え、世界にいっそう大きな影響を与える努力をすべきだ。

“tech for good”(世界をよくするテクノロジー)という信念を実証するプログラムとして、ConnectHomeに勝るものはない。Cox CommunicationやGoogleなどのインターネットサービスプロバイダーを含めた官民一体の取り組みによって、27万5000人の低所得アメリカ人にブロードバンドアクセスを拡張しようとしている。オバマ大統領は、インターネットを利用できない人々が直面している教育や雇用の不利益を認識し、先週水曜日にこの構想を発表した。アメリカでは月額10ドルからブロードバンドを利用できるところもある。ConnectHomeは、スタートアップにできる還元方法のモデルケースだ。

利益の還元は政府プロジェクトに限らない。Sean Parkerは自己資金によるその名を冠した基金に6億ドルを投じ、社会に役立つITリーダーが世界に何をもたらせるかを例証した。Parkerは、Facebookの立ち上げ貢献したことでシリコンバレー有数の富裕な存在となった。Parker基金は、市民参加などの身近な問題だけでなく、世界の公共医療やバイオテクノロジーといった壮大な事業にも取り組んでい。彼は自身が長年培ってきたスタートアップ精神をてこに、大掛かりな変革を起こすことを期待している。

SurveyMonkeyのように、還元するしくみ組み込んだ製品を作っている企業もある。SurveyMonkey Contribute は、ユーザーがアンケートに答えると、 参加慈善団体を選択して寄付できる特典を受けられる。これまでにSurveyMonkey Contriburteを通じて500万ドル以上の募金が集まり、国境なき医師団、赤十字、米国動物愛護協会などの慈善団体に寄付されている。SurveyMonkyのプラットフォームは、いちばん助けを必要としている人たちに有機的に還元している。

われわれが起業家的環境にいることに疑いはない ー スタートアップは成長可能な市場にサービスを提供することをためらう必要はない。しかし、その経済的必然性は、自分たちの製品をできるだけ多くの人たちが利用できるようにするという彼らの責任を免除するものではない。こうした価値は、説教されるべきものではない。シリコンバレー文化に植えつけられるべきものだ。

われわれはテクノロジーの恩恵を受ける特権を持ち、最終的にそれは、日々享受している特権にともなう大きな責任を果たす義務をわれわれに与えている。

原文へ
 
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。