スキマ時間の視聴ねらう短尺・プロ制作の動画アプリ「30」、テレビ局やエイベックスが出資

AbemaTVYouTubeのように比較的長尺でテレビ同様の「番組」の体裁で届けられるものから、InstagramのStoriesやMixChannelのように短尺でコミュニケーション用途のもの、さらにはSHOWROOMLINE LIVEのようなライブ配信サービスまで、動画コンテンツの幅は広くなっている。そんな中で、「短尺・プロ制作」という切り口でこの領域に挑戦するのがFIREBUGだ。同社は9月19日に動画アプリ「30(サーティー)」を公開した。

30は、その名の通り30秒ほどの短尺の動画を配信する動画アプリだ。サービスの利用は無料。ユーザー登録なども必要ない。バラエティ、ニュース、アニメ、マンガ、スポーツ、趣味、美容、ファッション、ヘアアレンジ、癒し系といったカテゴリのコンテンツを縦型の動画で1日5本程度配信(今後は毎月300本単位での動画制作を進める)。お気に入りの動画はブックマークに入れてあとから視聴したり、SNSにシェアしたりできる。配信する動画コンテンツは、FIREBUGや同社のパートナー企業が制作。いずれもテレビ番組やCMの制作実績があるプロだという。

FIREBUGが30で狙うのは、仕事や勉強の合間、スマートフォンを触っているような「スキマ時間」だ。同社の調査によると、スマートフォンユーザーの1日のスキマ時間は1回10分未満、トータルで1時間程度というケースが多いのだという。そうなると、例えば長尺・プロ制作の動画や、コミュニケーションを軸にしたライブストリーミングは視聴に向かない。

「ユーザーは10分20分をムダにしたくない。例えYouTubeを観るにしても、キュレーションされていないので観たくないものも観てしまう。であれば、そこで誰かが『編成』をしてあげればいい。そこ(隙間時間)に面白いものを提供できれば、チケットを買ったり、明日どこかに出かけたり、ということも提案できる」

「世代別に見れば、10代などはもうみんなスマートフォンを持っている。それなのに、(スマホに特化して)エンタメ領域でズシンとしたコンテンツはまだない。スマホ・スキマ時間と考えるとやはり動画(のニーズはある)」(FIREBUG代表取締役の佐藤詳悟氏)

ビジネスモデルは広告。テレビで言うところのタイムCM(番組枠内のCM)とスポットCM(番組枠と関係ない枠でのCM)を展開する予定。将来的には位置情報と連動した動画広告なども展開する計画があるという。

テレビ番組や雑誌といった既存メディア、配給会社、芸能事務所などとの連携も進めていく。また、ユーザー投稿の動画を編集して番組を制作するような企画も進めるとしている。「面白いものを作ってテレビ局や配給会社と組んで、マスなものを作っていく。(ユーザー投稿に関しては)YouTubeだと埋もれてしまう動画であっても、キュレーションして、編集して出していきたい。再生数を元に投稿者に還元できる仕組みも作っていく」(佐藤氏)

FIREBUGは2016年2月の設立。7月にはRKB毎日放送およびエイベックス・ベンチャーズ、個人投資家などから資金調達を行っている(金額は非公開だが、関係者によると数億円程度)。代表の佐藤氏は吉本興業でマネージャー業を経験した後、2015年1月にクリエーターのエージェント会社であるQREATOR AGENTを立ち上げた(同社は現在FIREBUG子会社となっている)。FIREBUGではこれまでテレビ番組やウェブ動画、イベントなどの企画やプロデュース、PRなどを手がけている。

FIREBUG代表取締役の佐藤詳悟氏 (C)ozone kazuki

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TechCrunch Japan

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