スタートアップたちは売りどきを逃したかもしれない

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みなさん、お元気でお過ごしだろうか。みなさんが、心穏やかで健康であることを心から願っている。私は昼寝の習慣を身につけつつある。ニュースのサイクルが決して遅くならないことに気づいてからは、私の生活の必須項目となったのだ。また、パートナーと私は、早起きが好きな3匹目の犬を飼ったので「ワクチンの夏」に向けて私たちが休めるように「大人の昼寝」をみんなでクールなものにしていきたい。もうすぐだ。

さて仕事の話題だ。本日はいくつか、データに関する重要な話題をお伝えしたい。すなわち、2021年第1四半期のM&Aデータ、2021年3月のアフリカにおけるVCの結果、そして(少なくとも私にとっては)意外なポッドキャストの数字だ。

まず1つ目は、Dan Primack(ダン・プリマック)氏がRefinitiv(レフィニTV)を通じて紹介してくれた、いくつかの第1四半期の初期段階のデータだ。金融データ会社によると、2021年第1四半期の世界のM&A活動は1兆3000億ドル(約143兆9000億円)に達し、2020年第1四半期から93%増加した。米国のM&A活動も、第1四半期に過去最高を記録した。なぜこれを気にかけるのか?要するに、このデータは、この3カ月間がいかにホットであったかを強調するものだからだ。

同四半期のベンチャーキャピタルのデータ自体もまた、同様にすばらしいものになることを期待している。しかし、誰もが気がついているように、第2四半期の始まりである先週、IPO市場にいくつかの亀裂生じ、2021年の第2四半期はまったく異なるものになる可能性が出てきたのだ。といってもベンチャーキャピタルの世界自身が停滞するわけではない。特にTiger(タイガー)が67億ドル(約7416億円)という多額の調達をしたことを考えるとそれは明らかだ。

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2つ目のベンチャーキャピタルについては、アフリカに特化したデータ会社であるBriter Bridges(ブライター・ブリッジ)の報告によると「Flutterwave(フラッターウェーブ)が、10億ドル(約1106億8000万円)の評価額の下に1億7000万ドル(約188億1000万円)という巨額のラウンドを実施したこともあり、2021年3月だけで2億8000万ドル(約309億9000万円)以上がアフリカで活動するハイテク企業に投入された」という。

このデータは、少なくとも2017年以降この3月が、アフリカ大陸のベンチャーキャピタル活動が最も活発だったことを示すものだ。私は歴史上最も活発だったのだろうと考えている。アフリカのスタートアップ企業は、下半期に多くの資金を調達する傾向があるため、この3月の結果は単月での史上最高記録ではない。しかし強気が続くことには変わりがないし、第2四半期のベンチャーキャピタルの業績は大きなものになるだろうという私たちの一般的な期待も高めてくれる。

そして最後に、Index VenturesのRex Woodbury(レックス・ウッドバリー)氏が、Edison(エジソン)のデータをツイートしたが、それによると「8000万人のアメリカ人(米国の12歳以上の人口の28%)が毎週ポッドキャストを聴いていて、前年比で17%増加している」らしい。ウッドバリー氏はさらに「米国の12歳以上の人口(約1億7600万人)の62%が毎週オンラインオーディオを聴いている」と付け加えている。

先週のEquityでもご紹介したが、ここ数カ月、消費者向けソーシャル企業としてブレイクしているClubhouse(クラブハウス)の成功を受けて、音楽以外のストリーミングオーディオ市場は多くのプレイヤーが賭けに乗り出している。Discord(ディスコード)やSpotify(スポティファイ)などによる賭けの背景には、上に挙げたようなデータの存在があるのだ。人間は、他の人間の話を聞くのが好きだ。それは音楽優先の私が想像していたものよりも、はるかに多い。

消費者向け投資に、力が注がれる時代に戻ってきたことが、どれほどうれしいことだろうか。B2Bはすばらしいものだが、すべてがエンタープライズSaaSになるわけではない(しかし、Clubhouseが自らの宣伝効果を維持するのに苦労していることには注目する必要がある)。

ベンチャーキャピタルのラウンドすべてにはついていけていない

先週はTechCrunch Early Stageが開催されたが、これはなかなかうまくいった。しかし、イベントを手伝ったことで、今週は思っていたよりも取り上げられるラウンド数が少なくなってしまった。そこで、もし時間に余裕があれば取り上げていたであろう2社を紹介する。

  • Striim(ストリーム)の5000万ドル(約55億3000万円)のシリーズC:Goldmanがこの取引を主導した。Striim(私は「ストリーム」と発音するのだろうと思っている)は、クラウドとオンプレミスの両方で、データをリアルタイムに移動させることができるソフトウェアを、企業向けに提供するスタートアップだ。現在のデータ市場の活発さを考えると、StriimのTAM(最大可能市場規模)は大きいのではないだろうか?「Quickly flowing」(超速流)とか?まあお暇なときに、ストリーム中心のもっとマシな言葉を考えて欲しい。
  • Kudo(クド)の2100万ドル(約23億2000万円)のシリーズA:2020年7月にKudoが600万ドルを調達した際に取材している。同社は、リアルタイム翻訳を備えたビデオチャットや会議サービスを提供している。ご想像の通り、COVID時代を謳歌している。シードラウンドに参加したFelicis(フェリシス)がシリーズAを主導した。今週、同社の新たな成長指標を引き出せるかどうか見てみることにする。注目すべき対象だ。

さらに、見逃してはいけない2つのラウンドがあった。Holler(ホラー)はシリーズBで3600万ドル(約39億9000万円)を調達した。当社のAnthony Ha(アンソニー・ハー)記者によれば「会話的メディアが何であるかを知らなくても、おそらくHollerの技術を使ったことはあるでしょう。例えばあなたがVenmoの支払いにステッカーやGIFを追加しようとしたなら、Hollerは実際にそのメディアのための、アプリによる検索やサジェッションを管理しています」ということだ。

老いを感じるね。

また、ラテンアメリカの技術に十分な注意を払っていないなら、このウルグアイの1億5千万ドル(約166億円)のラウンドが目を覚ますのに役立つだろう。

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その他のことなど

先週は、良いニュースが飛び込んできた。当The Exchangeをある程度お読みの読者は、私が公開ソフトウェア企業の先行きを予測するために話題として取り上げているBessemer(ベッセマー)のクラウドインデックスのことはご存知だろう。このたび、また市場に新しいインデックスが登場したのでご紹介したい。

Lux(ラックス)の「Health + Tech」(ヘルス+テック)インデックスだ。Lux Capitalによれば、このインデックスは「急速に台頭してきたHealth + Techという投資テーマを最もよく代表する57の上場企業のインデックス」だということだ。もちろん、これはBessemerのコレクション同様に、支援しているベンチャーキャピタル(Lux)に結びついている内容だ。だが、Luxの新しいインデックスは、Bessemerのコレクションと同じように、特定のベンチャーファームが自分のポートフォリオ内の公開企業を、どのように追跡しているかを示してくれるものだ。

便利なものなので、もっと増えて欲しい。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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