スタートアップハブとして急成長中のオースティンの展望について地元VC6社に聞く

ここ数年、テキサス州オースティンに本社を移転したり、支社やキャンパスを開設したりするテック企業(大小含め)が増えている。こうした企業がオースティンに惹かれる要因はさまざまだが、主な要因として、のんびりしたライフスタイル、州税が課税されないこと、ビジネスにやさしい環境、(今のところは)低い生活費などが挙げられる。

この動向がオースティンのスタートアップエコシステムに与える影響は著しく、この都市を本拠地とする起業家(その多くはオースティンで著名なテック大手各社で働いた経験がある)や投資家が増え続けている。

全米で大きく報道されたように、Tesla(テスラ)がオースティンに巨大工場の建設を予定していることや、Oracle(オラクル)が本社をオースティンに移転すると発表したことは記憶に新しい。

また、急成長しながら成熟度を増しているスタートアップシーンや、加熱気味で競争の激しい住宅市場などベイエリアとの類似点も多い。

そのような中、ベンチャー投資家たちはいくつかの重要な投資分野を見出している。かつて、オースティンでは主に大手企業向けソフトウェアの開発が行われていた。ソフトウェア開発は今でも重要な分野だが、CGP(消費者向けパッケージ商品)や不動産テックなど、他にも多くの分野が成長している。

この記事では、オースティンでトップクラスのVCを対象に実施したアンケート調査の結果と、これらのVCが考えるオースティンのエコシステムの展望について紹介する。

以下のVC投資家たちが、TechCrunchのインタビューに応じてくれた。

  • Eric Engineer(エリック・エンジニア)氏、S3 Ventures(S3ベンチャーズ)
  • Morgan Flager(モーガン・フラジャー)氏、Silverton Partners(シルバートン・パートナーズ)
  • Joshua Baer(ジョシュア・ベーア)氏、Capital Factory(キャピタル・ファクトリー)
  • Carey Smith(キャリー・スミス)氏、Unorthodox Ventures(アンオーソドクス・ベンチャーズ)
  • Krishna Srinivasan(クリシュナ・スリニバサン)氏、LiveOak Venture Partners(ライブオーク・ベンチャー・パートナーズ)
  • Zaz Floreani(ザズ・フロレアーニ)氏、Next Coast Ventures(ネクスト・コースト・ベンチャーズ)

オースティンのスタートアップシーンは今後5年でどのように変わっていくと思いますか。オースティンはここ数年広範な分野の人材を惹きつけており、最近では、テック大手やスタートアップもこの町に移転してきています。これらの要素が組み合わさって、どのような相乗効果が生まれると思いますか。

S3ベンチャーズのエリック・エンジニア氏は、テキサス州のスタートアップエコシステムは、2030年までには全米第二位の規模になると確信している。

「テックエコシステムは好循環の恩恵を受けています。多くの優秀な人材がテキサス州に移ってくるにつれて、資本の流入量も多くなり、結果としてさらに人材が惹きつけられるという具合です」と同氏はいう。

創業16年目のシルバートン・パートナーズに在籍するモーガン・フラジャー氏によると、シルバーストーンは16年前の創業以来、テキサス州最大のVC企業として、オースティン、およびテキサス州全般に常に重点的に投資してきたという。

「当社はいつでも、オースティンが繁栄すれば当社も繁栄するという考えでビジネスを展開してきました」と同氏はいう。「しかし当社は一組織にすぎません。今では多くのVCがオースティンに移転して投資活動を行っており、それぞれが、この町のエコシステムを改善し発展させるために自身の役割を果たそうと考えています。成功のために不可欠な要素は、すでにオースティンを魅力的な場所にするための役割を担っている『コミュニティコラボレーション』という既存の理念を育み続けることです。オースティンの人たちは、人の成功はコミュニティの成功によってもたらされると考えています。コミュニティの成功のために人の成功を犠牲にすることは良しとしません。成長の過程でこの中核理念を維持し続けていれば、オースティンにはすばらしい未来が待ち受けているでしょう」。

キャピタル・ファクトリーのジョシュア・ベーア氏は、オースティンが今後5年の間に「前途有望な」都市ではなく実際に「成功した」都市となり、第2階層のトップの都市ではなく、競争の激しい第1階層の都市に昇格すると確信している。そう予測させる2つの予兆として、同氏は、Aceable(エーサブル)、Apptronik(アプトロニック)、Disco(ディスコ)、Eagle Eye(イーグルアイ)、Everlywell(エバリーウェル)、ICON(アイコン)、Zen Business(ゼンビジネス)といったオースティン本拠のユニコーン企業からなる新しいコホートと、大手VC企業といえばAustin Venturesしか存在しなかった時代以来、オースティンが経験したこともないような大規模なシリーズAラウンドが実施されていることを挙げる。

Unorthodox Ventures Founding Contrarian(アンオーソドクス・ベンチャーズ・ファウンディング・コントラリアン)のキャリー・スミス氏は、現在の状態を特徴付けるだけでも十分に難しいとして、5年後を予測することは控える。

「規模を問わず多数の企業がさまざまな事業を展開しており、成長とイノベーションという言葉以外に統一された特徴というものが見当たりません。どの方向へも発展する可能性があると思います」と同氏はいう。

ライブオーク・ベンチャーズのスリニバサン氏は、驚くほど多数のフォーチュン500社企業がテキサス州を本拠としているため、エネルギー、ヘルスケア、不動産、ホスピタリティ、小売などの主要産業に精通した人材が豊富に存在すると指摘する。

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「こうした分野の知識に加えて、テック大手やスタートアップのテック関連人材が急増しているため、すでに相乗効果が現れており、起業家活動がさらに加速しています」と同氏はいう。「テック大手の人材とすでに進行中のスタートアップエコシステムの継続的成熟に加えて、今後数年間で、さらに多くの信じられないカテゴリーのリーダーたちが登場してくるでしょう。そのため、オースティンのスタートアップシーンはかつてないほど高速な成長を遂げる態勢が整っています」。

ネクスト・コースト・ベンチャーズのフロリアーニ氏は、今後5年間で、オースティンは現在の市場が成熟期を迎え、6社のユニコーン企業が誕生し、6社のスタートアップが株式を公開する可能性があると予測する。

リモートワークによってグローバルな労働力が活用されるようになっています。その結果、一部のオフィスはオースティンから姿を消しています。オースティンに移転してくる企業が増える一方で、世界中の企業の社員としてリモートワークする地元の人材も増えています。こうした要因はオースティンのテック革命にどのような影響を与えるとお考えですか。

S3ベンチャーズのエリック・エンジニア氏は、有能な人材がオースティンを選ぶのは、仕事面だけでなく、ライフスタイル面でのメリットが関係しているという。リモートワークによって、従業員の週あたりの通勤日数が少なくなるため、いわば「オースティンの成長痛」となるものを一部和らげることができると同氏は確信している。これにより、継続的な成長に対処するために必要な交通インフラを整備するために必要な時間を稼ぐことができると同氏はいう。

シルバートン・パートナーズのフラジャー氏は、リモートワークによって、住みたい場所と仕事を得るために住む必要がある場所について、労働者の選択肢が広がるため、競争の場がいくらかシフトすると考えている。また、労働者の自由度が増し、特定の作業の効率は上がるものの、ほとんどの役割では、リモートワークを対面のやり取りで補うハイブリッドソリューションが必要になると同氏は考えている。「ありがたいことに、オースティンには両方の環境が揃っています。生活するには魅力的な場所ですし、テックコミュニティも急速に成長しています」と同氏はいう。「それはオースティンに大量の人材が流入している理由の1つでもあります」。

ジョシュア・ベーア氏は、人はどこでも働けるが、実際にどこでも働こうする人はいないと思っている。他の場所に比べてずっと多くの人材を惹きつける勝ち組となる都市がいくつか登場するだろうが、オースティンは、次の5年間でテック関連の人材の流入に関して、勝ち組の都市の1つになるだろう。「オースティンに本社を移転する企業が増えており、本社は別の都市にあるがオースティンのオフィスで働くことを選択する人が増えると思います」と同氏は予測する。

アンオーソドクス・ベンチャーズのキャリー・スミス氏は、リモートワークはうまくいかないと考えており、オースティンでも長期的には機能しないと思っている。パンデミックの初期に短期間だけ在宅勤務を経験した同氏は、同僚とのつながりが非常に弱くなったと感じたという。また、リモートワークでは、単純な作業でも随分と複雑になってしまうため、通常勤務よりも忙しくなったという。

「私はずっと顔を突き合わせた会議でやってきたし、オフィスの喧騒が好きなのです。オフィスで仕事をすることで皆、モチベーションが維持されます」とスミス氏はいう。「要するに、オフィスは車輪を回し続けるための潤滑油のようなものです。オースティンでイノベーションを推進し続けるためにはオフィスが必要不可欠だと思います」。

オースティンでは(もしくはオースティン以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、オースティンで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

S3ベンチャーズは過去15年間、主にB2Bソフトウェア企業に投資してきた(同社のポートフォリオ企業の3分の2はB2B業界の企業)が、消費者デジタルエクスペリエンスやヘルスケア業界でもイグジットを成功させている。

「テキサスの経済は信じられないくらい多様性に富んでおり、技術イノベーションも広範囲にわたります」とエンジニア氏はいう。「これまでデジタル化が遅々として進まなかった多数の業界(金融サービス、不動産、医療、教育、専門職、ホスピタリティ、工業、エネルギー、製造)で全組織にわたってクラウドベースのソリューションが受け入れられるようになっています」。

シルバートン・パートナーズはこれまで業界を選ばないファンドとしてやってきた。しかし、フラジャー氏によると、今、無視するのが難しいさまざまな混乱が生じているという。「とりわけ、デジタルヘルス、フィンテック、インシュアテック、教育の分野で急速なディスラプションが起こっている」と同氏はいう。「これらの巨大産業では今、戦略が書き換えられているため、当社としては将来の展望について確固とした視点を備えている起業家を探しています」。

キャピタル・ファクトリーのジョシュア・ベーア氏は、オースティンのスタートアップシーンは多様性に富んでおり、その多様性がこの都市の活気を維持していると考えている。「テック業界で起こっているホットなトレンドは、オースティンでも起こっている」と同氏はいう。最近、大きなトレンドとなった分野として、人工知能、機械学習、消費者向けパッケージ製品、ドローン、eコマース、ヘルスケア、マーケットプレイス、ロボティクス、SaaSなどがある。

アンオーソドクス・ベンチャーズのキャリー・スミス氏によると、同社は、実際の問題を解決する目に見える製品を作る会社に重点的に投資してきたという。ソフトウェアはオースティンの主要産業だが、オースティンを本拠とする他の多くのVCと違って、スミス氏はソフトウェアをそれほど重視していない。「消費者向け製品の製造に挑んでいるチームのほうが好きです」と同氏はいう。「それに、ソフトウェア企業は多様性に欠けており、ソフトウェア産業で就業できるのは社会のほんのわずかな人たちにすぎません。対照的に、製造業の仕事には、高卒資格者から博士号取得者まで、すべての人が就くことができる幅広い多様性があります」。

ライブオーク・ベンチャー・パートナーズは、ほぼすべての産業にくまなく投資している。2020年は、不動産テック、フィンテック、小売、サプライチェーン、ビジネスコンプライアンス、サイバーセキュリティ、EdTechの各分野の企業を支援してきた。

ライブオークはとりわけ不動産テックに期待を寄せており、オースティンでもOpcity(オプシティ)やOJO Labs(OJOラボ)といった企業が成功を収めている。もう1つ高い潜在力を持つ分野として、法務 / コンプライアンス関連のスタートアップがある。オースティンには、Disco(ディスコ)やMitratech(ミトラテック)といった大企業の本社があり、Osano(オサノ)、Eventus(イベンタス)、Litlingo(リトリンゴ)など、急成長中の新規参入組も今後が楽しみだ。

ネクスト・コーストのフロレアーニ氏にとって、オースティンで成功しているB2Cスタートアップの数が急増しているのは「半導体とSaaSの町として知られていたオースティンの初期の頃を上回る人材プールと秘密兵器が確保される」ため、良い兆候だ。

「今でもすばらしいソフトウェア企業家はいますが、オースティンには、Everlywell(エバリーウェル)、Literati(リテラティ)、FloSports、(フロスポーツ)、 Atmosphere(アトモスフィア)など、消費者向け製品を扱う企業やメディア企業も存在しています」と同氏はいう。

オースティンで貴社が直面している、または創業者たちが苦戦している課題は何ですか。一般に、オースティンで採用活動や投資を行ったり、オースティンに移住してくる人たちは、この都市でのビジネスのやり方についてどのように考えればよいでしょうか。

オースティンのテックコミュニティは、心地よく協力的で、この都市への移住を考えているすべての人たちのリソースとしての機能を果たしてきたというのが、オースティンを本拠とする投資家たちの共通の意見だ。S3ベンチャーズのエンジニア氏によると、東海岸と西海岸から最近移住してきた人たちが、彼らがそれまで慣れてきた文化と比べて、このオースティンの文化に良い意味で驚いたと言っているという。

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シルバートンのフラジャー氏は、通常でも移住には困難が付きものだが、パンデミック期間の移住となるとその困難さは通常の比ではない、と語る。

「パンデミックの最中にオースティンに移住してきて、コミュニティでの強いつながりを見つけるのに苦戦している創業者たちを見てきました」と同氏はいう。「ほとんどすべてのものがバーチャルであるために、新しいエコシステムとの統合がより困難になっているのです。投資家でありオースティンエコシステムの管理人としての私の役割は、創業者コミュニティ内でのつながりを促進することです。ワクチンの接種が続き、対面での接触が安全になってきている中、当社はオースティンに移住してくる創業者たちが容易に溶け込めるように一連のコミュニティ構築イベントを開催する予定です」。

キャピトル・ファクトリーのベーア氏は、テキサスの投資家はシリコンバレーの投資家よりも損失防止に対する意識が強いと考えている。テキサスでビジネスをする企業家へのアドバイスとしては、2つの異なるプレゼンを用意して、プレゼンする相手によって使い分けることを勧める。「テキサスの投資家相手にプレゼンするときは、ビジネスのリスクを軽減する方法について話し、シリコンバレーの投資家相手にプレゼンするときは、このアイデアが軌道に乗ればどれほど大きなビジネスになるかについて話すのがよいでしょう」。

アンオーソドクス・ベンチャーズのスミス氏は、創業者たちに、オースティンに限らず、起業家を支援すると見せかけて「株式を取得しておいて、相応の見返りも与えようとしない」組織には注意するように助言している。

「創業者は、支援を受ける投資家やアドバイザーを慎重に選び、資金以外のプラスアルファを提供してくれる投資家を選択する必要があります」。

ライブオーク・ベンチャーズのスリニバサン氏は、オースティンの人たちは取引を好まないため、取引的で、対人関係としてではなく取引関係として相手と厳格にやり取りするという印象を与えてしまうと「相手を不愉快な気持ちにさせてしまう」と警告する。

「オースティンに移住してくる起業家はこの点に注意する必要があります」と同氏はいう。「採用時には、文化的な適合度が高い人材を選ぶことが重要です。履歴書のみを見て判断してはなりません。投資家の視点からすると、オースティンでビジネスをするなら、魅力的な取引条件を提示するだけでなく、強い人間関係を構築することに注力することが重要です」。

ネクスト・コースト・ベンチャーズのフロリアーニ氏は、同社のポートフォリオ企業において成長を牽引できるリーダーを雇用することの難しさについて言及し「オースティンに有能なマーケティング販売のリーダーとなる豊富な人材があればすばらしいと思います」と述べる。

地元で成功を収めたスタートアップ業界の主要人物を挙げていただけますか。投資家や創業者だけでなく、弁護士、デザイナー、グロースエキスパートなど、スタートアップのエコシステムで別の役割を果たす人たちでも構いません。地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。

S3:創業者 / CEOとしては、AtmosphereのLeo Resig(レオ・レッシグ)氏、FavorのJag Bath(ジャグ・バス)氏、AcessaのKim Rodriguez(キム・ロドリゲス)氏、 Interplay LearningのDoug Donovan(ダグ・ドノバン)氏、LeanDNAのRichard Lebovitz(リチャード・レボヴィッツ)氏、EternevaのAdelle Archer(アデレ・アーチャー)氏、LiveOak TechnologyのAndy Ambrose(アンディ・アンブローズ)氏、TVA MedicalのAdam Berman(アダム・バーマン)氏、LiquibaseのDion Cornett(ディオン・コーネット)氏。

投資家としては、Wild Basin(ワイルド・ベイスン)のRosa McCormick(ロザ・マコーミック)氏、Sputnik(スプートニク)のOksana Malysheva(オクサナ・マリシェバ)氏、Ecliptic CapitalのAdam Lipman(アダム・リップマン)氏、キャピタル・ファクトリーのJosh Baer(ジョッシュ・ベア)氏とBryan Chambers(ブライアン・チェンバース)氏。

サービスプロバイダーとしては、 E/NのMarc Nathan(マーク・ネイサン)氏、CBREのJohn Gump(ジョン・ガンプ)氏、MLRのLathrop Smith(ラスロップ・スミス)氏、SVBのAustin Willis(オースティン・ウィルズ)氏、Mediatech(メディアテック)のPaul O’Brien(ポール・オブライエン)氏。

シルバートン:WP EngineのHeather Brunner(ヘザー・ブルーナー)氏とJason Cohen(ジェソン・コーヘン)氏、SparefootのChuck Gordon(チャック・ゴードン)氏とMario Feghali(マリオ・フェガリ)氏、LiteratiのJess Ewing(ジェス・アーヴィング)氏、AceableのBlake Garrett(ブレイク・ガレット)氏、Self FinancialのJames Garvey(ジェイムス・ガーベイ)氏、Alert MediaのBrian Cruver(ブライアン・クルーバー)氏、TurnKeyのJohn Banczak(ジョン・バンクザック)氏とT.J. Clark(T.J.クラーク)氏、WheelのMichelle Davey (ミシェル・デイビー)氏、ConveyのRob Taylor(ロブ・テイラー)氏など。

キャピタル・ファクトリー:http://baer.ly/austinabc

アンオーソドクス・ベンチャーズ:オースティン中心のスナックボックスで地元の40を超える食品起業家を支援するスタートアップATX Kit(ATXキット)を創業したChrista Freeland(クリスタ・フリーランド)氏。

環境、健康、社会正義など、深刻な社会問題の解決を目指すスタートアップを支援するSouthwest Angel Network(SWAN)のBob Bridge(ボブ・ブリッジ)氏。

ライブオーク:「当社のネットワークには、幸運にも、人を動かす能力のある多くの人が登録されています。誰か1人を取り上げるのは難しいのですが、その上で選ぶとすれば、Dan Graham(ダン・グラハム)氏とJim Breyer(ジム・ブレイヤー)氏でしょうか。グラハム氏は、Notley Ventures(ノトレー・ベンチャーズ)を介して社会的影響のあるスタートアップ向けに資金を調達したり、BEAM Angel Networkを介して女性起業家に投資するファンドを立ち上げたり、CPG(消費者向けパッケージ製品)の登場にも積極的な役割を果たしています。また、ジム・ブレイヤー氏はオースティンに移住してまだ1年ですが、その間に、さまざまな論評、ブログへの投稿、インタビューでオースティン、地元のスタートアップ、この町の活力を称賛してきました。そのプラス効果には絶大なものがあります」。

ネクスト・コースト・ベンチャーズ:「Everlywell(エブリウェル)、Upequity(アップエクイティ)、Steadily(ステディリィ)、Eterneva(エターネヴァ)、Literati(リテラリ)、BOXT、Enboarder(円ボーダー)などのスタートアップの創業者たちは、オースティンで成長していくためのすばらしい計画を立てています。ただし、これらの多くは当社が支援している企業なので、多少は私見が入っている可能性があることを申し添えておきます」。

シリコンバレーとの比較についてどう思われますか。大小含めテック企業が流入していることがオースティンのスタートアップシーンにどのような影響を与えているとお考えですか。

S3のエンジニア氏は、シリコンバレーは唯一無二であり、西側世界でシリコンバレーに匹敵する地域が現れる可能性は極めて低いと考えている。

同時に、今はまだ小規模だが、今後10年間このトレンドが継続すれば、テキサスのエコシステムは、ニューヨークやボストンを超えないまでも、それらに匹敵する規模に成長する活力があると考えている。

シルバートンのフラジャー氏はシリコンバレーで生まれ育った。シリコンバレーの学校に通い、就職先もシリコンバレーだった。そのため、オースティンとシリコンバレーを比較することはあまり好まない。

「どちらの地域についても賛否両論があります」と同氏はいう。「規模と活発さという点で今後オースティンがシリコンバレーを上回ることがあるかどうかは、正直分かりません。いずれにしてもまだまだ先の話です。それに、それが重要なことかどうかも分かりません」。

同氏が大切だと思っているのは、オースティンがその活気を維持すること、そして現在の成長によって、この都市の活力が希薄化されることなく、さらに豊かになることだ。「オースティンの文化はテクノロジー中心ではなかったことを認識することが重要です。オースティンは、ライブ音楽、美味しい食べ物、芸術、アウトドアライフなども盛んで、他にはない風変わりな土地柄を形成しています」とフラジャー氏は語る。

「私がシリコンバレーを称賛する理由や、オースティンがそのレベルに達するために何を行う必要があるのかについて考えるとき、シリコンバレーとは違ったやり方で何ができるのか、という点を考えることに多くの時間を割きます」。

アンオーソドクス・ベンチャーズのスミス氏は、誰もがシリコンバレーを離れたいと思っても不思議はないと考えている。

「皆、シリコンバレーは最悪だということにようやく気づいたのです」と同氏はいう。「知的で勤勉で好奇心に溢れた人たちがどんどんオースティンに集まってきています。それはオースティンにとっても、もっと広い意味ではVCにとっても良いことです。シリコンバレーの問題の1つは、VC資金のかなりの部分が、シリコンバレー、ニューヨーク、ボストンに滞留しているという点です。オースティン、およびその他の中部の革新的な都市の起業家たちは、平凡な米国人が抱える本当の問題を解決しようとしており、もっと多くの資金を必要としています。オースティンはシリコンバレーからの影響を強く感じているため、テック指向ではないプロジェクトに資金を供給することが重要です。ベンチャー投資家は人間の基本的なニーズに目を向ける必要があります」。

ライブオークのスリニバサン氏は、シリコンバレーと比較されるのは避けられないと認識しており、そのような比較コメントの多くを歓迎している。そうして比較されることで、国内外で広くオースティンが注目されるようになり、スタートアップシーンが活況を呈している都市としての評判が高まると考えているからだ。

「オースティンのスタートアップシーンには活力と勢いが溢れており、初期のシリコンバレーを彷彿とさせます。起業数、資金を調達する企業、オースティンのテックコミュニティに溶け込もうとして流入してくる人材の量は増え続けています。しかし、オースティンには他のテックハブにはない特徴があります。それは、人々のコラボレーション精神です。コミュニティはエネルギーとワクワク感で溢れています。オースティンは、シリコンバレーが生み出した成功に大いに敬意を払っており、独自の道を歩みながらも、シリコンバレーの良い点は取り込んでいこうとしています」と同氏はいう。

ネクスト・コーストのフロリアーニ氏は、この10年間、シリコンバレーとの比較が過剰に行われていると思っている。「オースティンはシリコンバレーではないし、今後シリコンバレーのようになることもありません」と同氏はいう。「これは決してネガティブな意味で言っているのではありません。ただ、企業の育て方がシリコンバレーとは異なっていると思っているだけです。シリコンバレーの人材や投資家が多数オースティンに入ってきていますが、だからといって、成長企業に対して、急にブリッツスケール(極めて短期間での爆発的な規模拡大)のようなシリコンバレー的なアプローチを採るようになるとは思いません。むしろ、急成長と持続性の両方の妥協点を探っていくことになると思います」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:オースティンテキサスインタビュー

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。