ステルス状態が続く元Appleのデザイナーとエンジニアが共同設立したHumaneが約110億円調達

元Apple(アップル)のシニアデザイナーとシニアソフトウェアエンジニアが共同で創業し、静かに活動するスタートアップが、事業拡大に向け多額の資金を調達した。1億ドル(約110億円)を調達したHumane(ヒューマン)は「デザインとエンジニアリングの真のコラボレーション」によって「人間とコンピューティングの間の次のシフト」を象徴するような、新しいクラスの消費者向けデバイスやテクノロジーの開発を目指している。

今回の調達はシリーズBで、非常に著名な資金提供者が揃った。Tiger Global Managementがこのラウンドをリードし、ソフトバンクグループ、BOND、Forerunner Ventures、Qualcomm Venturesも参加した。シリーズBには、他にもSam Altman(サム・アルトマン)氏、Lachy Groom(ラッチー・グルーム)氏、Kindred Ventures、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏のTIME Ventures、Valia Ventures、NEXT VENTŪRES、Plexo Capital、法律事務所のWilson Sonsini Goodrich & Rosatiなどが出資した。

Humaneは2017年の創業だが、シリーズAをクローズしたのは2020年のことだ。PitchBookによると、2020年9月に1億5000万ドル(約165億円)のバリュエーションで3000万ドル(約33億円)を調達した。それ以前には合計1200万ドル(約13億2000万円)弱を調達している。今回のラウンドの投資家の多くは、そうした初期の資金調達においてもHumaneに投資していた。

筆者が同社に確認したところ、今回のシリーズBでのバリュエーションは未公表だ。

Humaneはまだ何の製品もリリースしておらず、何に取り組んでいるのかについても多くを語っていない。また、一般的にハードウェアには固有の課題が多く、それゆえリスクの高い賭けと見なされることが多いことを考えると(昔から「ハードウェアは難しい」と言われている)、まだステルス状態にあるHumaneがなぜそれほどまでに投資家を集められたのか、不思議に思うかもしれない。

その理由の1つは、共同創業者であるImran Chaudhri(イムラン・チャウドリ)氏とBethany Bongiorno(ベサニー・ボンジョルノ)氏の夫妻が、それぞれアイコン的存在であることによる。HumaneのCEOであるボンジョルノ氏は、Appleでソフトウェア・エンジニアリング・ディレクターを務めていた。会長兼社長であるチャウドリ氏は、Appleの元デザインディレクターでiPhone、iPad、Macなど、Appleの最も重要な製品に20年間携わった。2人とも、当時の経験を生かして数十件の特許を取得しており、その後もいくつかの特許を取得した。

そうした最新の特許と、Humaneのサイトに掲載されている非常に広範な求人情報が、2人と彼らのスタートアップが何を作ろうとしているのかを知る最も近い手がかりとなるかもしれない。

特許の1つは「レーザー投影システムを備えたウェアラブル・マルチメディアデバイスおよびクラウドコンピューティングプラットフォーム」、もう1つは「不妊症およびホルモンサイクルを知るのに役立つシステムおよび装置」に関するものだ。

一方、同社では現在、カメラやコンピュータビジョンの経験を持つエンジニア、ハードウェアエンジニア、デザイナー、セキュリティの専門家など、約50件の求人情報を掲載している。また、同社にはすでに約60人のすばらしいチームが存在し、これも投資家をひきつけている点の1つだ。

「Humaneで働いている個々人の能力は信じられないほどすばらしいものです」とTiger GlobalのパートナーであるChase Coleman(チェイス・コールマン)氏は声明で述べた。「彼らは、世界中の何十億もの人々のために革新的な製品を作り、出荷してきた人々です。彼らが開発しているものは、今後のコンピューティングの標準となる可能性を秘めた画期的なものです」。

筆者は、この会社の製品ロードマップや会社の背景にある理念、そして潜在的な顧客が誰なのか、それは製品を設計する他の企業なのか、あるいは直接的にエンドユーザーなのか、などの詳細を尋ねた。

今のところ、ボンジョルノ氏とチャウドリ氏は、次のイノベーションの波の中でテクノロジーがどのような役割を果たすのかを再考することが、このビジネスを始めた動機の一部だと示唆した。これは多くの人が思いつく問いだが、その答えを見つけるために実際に投資しようとする人は多くない。それだけでも、Humaneが次に何をするのかに注目する価値がある(Humaneがそうさせてくれればの話だ。今はまだステルス状態だ)。

「Humaneは、デザインとエンジニアリングの真のコラボレーションによって、人々が真の意味で革新を起こすことができる場所です」と共同創業者らは共同声明で述べた。「我々は、人々の利益のために製品を作り、人を第一に考えたテクノロジー、つまり今日の常識を超えた、よりパーソナルなテクノロジーを作り上げるエクスペリエンスカンパニーです。我々はみんな、何か新しいもの、我々が生きてきた情報化時代を超越する何かを待っています。Humaneでは、情報時代と呼ぶもののためのデバイスとプラットフォームを開発しています。信頼、真実、喜びという我々の価値観に基づいて、これまでとは異なるタイプの企業を築くことを約束します。パートナーのみなさんのご支援のもと、コンピューターとの付き合い方に革命を起こすという我々が持つ情熱を共有しているだけでなく、どのように構築するかについて情熱を持つ人材を集め、チームの規模を拡大していきたいと考えています」。

【更新】記事公開後、Humaneの計画についてもう少し説明を受けた。同社の目的は「人間の経験を向上させ、善意から生まれるテクノロジー、自分自身、お互い、そして周りの世界とのつながりを取り戻す製品、そして魔法のように感じられ、喜びをもたらすインタラクションをともなう、信頼に基づいた経験」を開発することだ。これだけでは十分ではないが、一般的には、今日のサイクルから離れ、もっと心をこめて考えようとするアプローチだ。テクノロジーを全面的に否定するのではなく、むしろ構築しながらそれが実行できれば、何かが見えてくるかもしれない。

画像クレジット:peepo / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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