スポティファイ、Hi-Fiサブスク提供の遅れがライセンス問題に関係していることを示唆

Spotify(スポティファイ)のCEOであるDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は、ストリーミングサービスのHi-Fiサブスクの開始延期が、ライセンス問題に関連していることをほのめかした。2月2日に行われたSpotifyの四半期および年間収益発表会で、エク氏はアナリストや投資家に対して、Hi-Fiサービスの計画についてあまり話すことはないとしながらも、議論は進行中であると述べた。

Spotifyが約束どおりHi-Fiサービスを一般に提供できなかったことに関する直接的な質問に対して、エク氏は曖昧な答えだけを述べ、次に進んだ。

「私たちが話している機能の多くは、特に音楽に関連するものでライセンスに行き着きます」と、エク氏は投資家に語った。「だから、これを市場に出すためにパートナーと常に対話をしているということ以外、これに関して具体的に発表することはできません」。

2021年2月、Spotifyは新しいハイエンドサブスクサービスを展開する計画を発表した。同社は、Spotify HiFiが2021年中に開始され、Spotify Premiumの加入者に「CD品質のロスレスオーディオ形式」で音楽を聴くオプションを提供すると発表していた。Spotifyはまた、Hi-FiサービスはSpotify Connect対応スピーカーを含む、デバイス間で動作すると述べていた。同社は、価格やどの市場がこの新しいサブスクをサポートするかなど、詳細な情報は提供しなかった。しかし、このサービスはPremiumの「add-on(アドオン)」として提供される予定だった。つまり、通常のPremiumサブスクよりも高い費用がかかるということだ。この計画は、競争環境の変化によって複雑になる可能性があった。

この延期された機能に関するエク氏のコメントは、2021年12月、この機能に関するスレッドが数百ページにもおよぶ怒りの書き込みに爆発した後、Spotifyの担当者が同社のコミュニティフォーラムに残したものに続くものだ。

「私たちは、Hi-Fi品質のオーディオがあなたにとって重要であることを知っています」と、コメントはいう。「私たちも同じように感じており、将来的にSpotifyのHi-Fi体験をPremiumユーザーに提供できることを楽しみにしています。しかし、まだ共有できるタイミングの詳細はありません。もちろん、可能な限りここでアップデートします」。

なお、Spotifyのロスレスサブスクの噂は、ストリーミングサービスがSpotify HiFiという新しい有料オプションの導入を考えていることが明らかにされていた2017年に遡る。当時、この機能は月々5〜10ドル(約570〜1150円)の追加料金がかかると噂されていた。

SpotifyのHi-Fi層の導入が遅れているのは、Apple Music(アップルミュージック)とAmazon Music(アマゾンミュージック)の両社がその顧客向けにハイファイストリーミング機能をリリースしているためだ。2021年6月、Apple(アップル)は追加料金なしでApple Musicのサブスクに、ロスレスオーディオストリーミングとDolby Atmos(ドルビーアトモス)をサポートするSpatial Audio(スペイシャルオーディオ)の提供を開始した。Apple Musicの7500万曲以上の全カタログがロスレスオーディオに対応している。ロスレスオーディオは、CDクオリティの16ビット/44.1 kHzから始まり、24ビット/48 kHzまで対応する。オーディオマニアは、24ビット/192kHzまでのハイレゾロスレスも選択できる。

一方、Amazonは2019年にロスレスオーディオストリーミングを備えたサブスクAmazon Music HDを月額5ドル(約570円)の追加料金で開始した。2021年5月には、対象となるAmazon Music Unlimitedの加入者全員に、Amazon Music HDを追加料金なしで提供するようにした。Amazon HDは、ビット深度16ビット、サンプルレート44.1kHz(CD品質程度)で楽曲をストリーミングする。一部の楽曲はUltra HD、つまり24ビット、最大192kHzのサンプルレート(CD品質以上)でストリーミング配信される。

ハイファイストリーミングの開始は、オーディオファン向けにより高品質なストリームでを提供してきた音楽ストリーミングサービスTidal(タイダル)の脅威に対抗する方法と考えられている。Tidalは、加入者数では業界トップの音楽ストリーミングサービスに及ばないが、その存在は、より質の高い音楽を求める需要があることを示している。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

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TechCrunch Japan

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