スポーツ選手やチームをブロックチェーン応用の投げ銭で応援するEngateが正式ローンチ、競技場でキャンペーンを展開

エンゲートは、スポーツ選手やチームを、ブロックチェーン上で発行したデジタルの「投げ銭」で応援するサービス「Engate(エンゲート)」(関連記事)をこの10月20日より開始する。まずWebアプリケーションの形態から開始する。スマートフォンアプリ版も追って投入する方向だ。スポーツ選手、スポーツチームにとって「ファンの応援と資金」はとても重要だ。Engateが目指すビジネスは、選手やチームを応援するファンの応援の可視化、コミュニティ形成、そして投げ銭という形での収入を選手とチームにもたらすことだ。

サービス開始にあたり、複数のプロスポーツの試合の場でキャンペーンを展開する。キャンペーン対象となる試合当日、競技場への来場者にURLを配布、そのURL経由で新規ユーザーアカウントを作ると100ポイントを付与する。100ポイントの範囲でギフトの投げ銭(「ギフティング」と呼んでいる)の体験を無料でしてもらう。もっと応援したければ、クレジットカードでポイントを購入してもらう仕組みだ。

キャンペーン対象の最初のゲームは、10月20、21日開催の横浜ビー・コルセアーズ(バスケットボール)の滋賀レイクスターズ戦である。会場は横浜国際プール。続いて、野球の徳島インディゴソックス、女子サッカーのINAC神戸レオネッサ、サッカーの湘南ベルマーレ、ハンドボールの琉球コラソン、フットサルのフウガドールすみだ、以上の各チームの試合でのキャンペーンを予定する。さらに「サッカーの横浜マリノスでのサービス活用ももほぼ本決まり」(同社)とのことだ。

サッカーJ1リーグ所属の湘南ベルマーレの運営会社で代表取締役を務める水谷尚人氏は、「1990年代には、我々のチーム名はベルマーレ平塚だった。親会社が撤退し、地域の人々に支えられた。そのような経験から収入源には常に気を配っている」と話し、「我々とサポーター(ファン)の距離をもっと近くしていきたい」とサービス参加への狙いを話す。

記者会見の会場には、前出の湘南ベルマーレ水谷氏をはじめ、計5チームの経営者が出席した。横浜ビー・コルセアーズ(バスケットボール)代表取締役CEOの岡本尚博氏、徳島インディゴソックス(野球)運営のパブリック・ベースボールクラブ徳島 代表取締役社長の南啓介氏、フウガドールすみだ(フットサル)運営の風雅プロモーション代表取締役社長 安藤弘之氏、琉球コラソン(ハンドボール)代表取締役/CEOの水野裕矢氏である。

各チームとも、ファンとチームを結ぶ新サービスへの期待を口々に語った。目を引いたのは「異なる競技のチームと知見を共有したい」というコメントが目立ったことだ。エンゲートの城戸幸一郎CEOは、「日本のスポーツファンは一つのスポーツのファン、野球ファンやサッカーファンのような人たちが多い。仕事で目にした欧州では、2種類以上の競技のファンであることは普通だった。今後は、サッカーのファンがハンドボールの面白さに気がついたり、野球ファンがバスケットボールも見始めたり、ファンが環流するよう仕掛けていきたい」と抱負を語る。

サービス設計では、「投げ銭」としてデジタルなギフトを送るだけでなく、スポーツチームからファンへのお返し(リワード)も重要な役割を果たす。例えば選手との食事会、始球式へのファンの起用、記念グッズなどの検討を進めている。

収益モデルはレベニューシェアだ。利用者が購入するデジタルなギフトの売上げを、エンゲートと各スポーツチームで分配する。「スポーツ以外のギフティングサービスに比べても大きな割合をチームに分配する予定だ」(城戸CEO)としている。

3種のブロックチェーン技術を比較検討しNEMを選択

記者会見の場では、サービスが利用するブロックチェーン技術についても説明があった。エンゲートは、ブロックチェーン技術に関するセミナー事業も展開していることもあり、ビットコイン、Ethereum、NEMと複数のブロックチェーン技術のリサーチを行ったと語る。

今回のサービスでは、ポイントを表現するトークン発行の基盤技術として仮想通貨NEMのパブリックブロックチェーンを採用した。その理由として、エンゲートBlockchain PRの藤田綾子氏は「ビットコイン、Ethereumのトークンはアプリケーションにより発行する。NEMのトークン(モザイク)はブロックチェーンの核となるプロトコルそのものが発行するので安全性が高く、またAPIから利用でき簡単だ。またEthereumに比べ手数料が約1/40で安いという特徴もある」と説明。「安全、簡単、安いという理由でNEMを選択した」(藤田氏)。

Engateのポイントはパブリックブロックチェーン上のトークン(NEMのモザイク)を使ってはいるが、サービスの外部では価値を持たない設計とした。「仮想通貨と異なり、サービス外で価値がなければ盗難などの恐れも少ない」(藤田氏)。

ここまでの話を聞けば、ブロックチェーンを使わなくても似たサービスは実現できそうに思える。だが、パブリックブロックチェーンならではの特徴がいくつかある。一つは、ある種の公共財といえるパブリックブロックチェーンを上手に活用することでシステム構築コストを抑えられる可能性があること。もう一つは、ブロックチェーン上の記録は誰でも読み出せる記録として永続的に残ることだ。Engateのサービスが使われる度に、改ざんがほぼ不可能なパブリックブロックチェーン上にファンと選手、チームの応援の記録が刻まれる。「ファンの思い、『熱量』が恒久的にデータとして残る。このデータの上の多様なサービス展開も考えている」(藤田氏)と同社は思いを語っている。

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TechCrunch Japan

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