スマホと遺伝子検査で個人に合ったダイエットを指導する「FiNC」を使ってみた

語学から美容、ダイエットまで、いわゆる「コンプレックス産業」の市場は大きい。例えば語学ビジネスの市場規模(英会話教室やeラーニングなどの主要14分野の合計)は2012年度で7892億円、エステティックサロンの市場規模は2013年度で3554億円、メタボリックシンドローム関連市場(ダイエットや予防から治療まで含む)に至っては、2004年で7兆5000万円という数字が発表されている(いずれも矢野経済研究所調べ)。

そんな巨大市場に挑戦するスタートアップがFiNCだ。同社は3月から、オンラインでの指導を含めたダイエットサービス「REPUL」を提供。6月18日より名称を「FiNCダイエット家庭教師(FiNC) 」に変更して本格的にサービスを開始した。

FiNCではまず、遺伝子検査や血液検査、300項目にわたる生活習慣に関するアンケートを実施。検査結果に基づいて、管理栄養士が「ダイエット家庭教師」となり、60日間でダイエットの知識や食事のバランス、食べる順番、トレーニング方法といった体質に合ったダイエット方法を指導するほか、電話やSkypeで相談を受ける。上位プランでは同社が運営するスポーツジムや、提携する全国200のスポーツジムを自由に利用できる。栄養士に関してはクラウドソーシングを活用しており、サービス開始時点で50人をネットワークしている。

基本的なサービスとしては、毎日専用サイトで朝、昼、晩の食事と、朝晩の体重を専用のサイトに登録する。食事の内容に対しては栄養士から5段階での評価や、指導のコメントが付く。なお食事はもちろんのこと、体重計の写真までアップロードを求めることで、虚偽の申告を防いでいる。

先に言っておくと、僕は約1週間ほど有料サービスをモニターとして利用させてもらっている。その上での感想だが、これがなかなかよくできているのだ。炭水化物や脂質の多い食事だと栄養士から厳しい指導が入るし、毎日の体重を数字で意識することになるので、否が応でも体重を減らすよう意識をするようになる。これまで自分1人ではダイエットを継続できなかった人間にとっては、この“鬼コーチ”の存在は大きい。蕎麦と野菜天丼を食べたあと、「炭水化物×炭水化物、やってしまいましたね…」と栄養士からコメントがあった際にはさすがに参ってしまったが、実際1週間弱で1.5kgほど体重を落とすことができた。FiNCによると、これまで数百人が利用して、平均減量値は6.3kg、途中で脱落したのは2人ほどだそうだ。取締役COOの岡野求氏も7kgを落としたと語っていた。

また日々の行動によってポイントが貯まるようになっており、ダイエット終了時にAmazonのギフト券や同社の商品と交換できるという仕組みになっている。

価格は食事指導の回数やサプリメント提供の有無などで30日2万9800円〜60日9万9000円のプランまで3種類を用意する。プログラム終了後も約半数が月額1万円程度のサプリメントなどを購入しているそうだ。

スマートフォンがビジネスチャンス

「たとえジムに来てもらっても、1週間168時間のうち、2時間ほどしか指導できない。でもそこ以外をカバーしないと意味がない」そう語るのはFiNC代表取締役社長 CEOの溝口勇児氏。同氏は高校在学中からフィットネスクラブの運営・コンサルを手がける企業に入社したのちに独立。自身でフィットネスクラブの運営やコンサルティングを手がけてきた。

同氏が手がけるフィットネスクラブはすでに黒字経営。また、DNA検査やサプリメントなども独自に提供してきたとのことだったが、いざダイエットを成功できるかというと、意志の強い人間でもない限り、前述の“指導をしない166時間”をうまく使うことは難しい。そこで、スマートフォンを利用した指導で1週間168時間の指導を実現すべく、FiNCを立ち上げるに至ったそうだ。「スマートフォンによって、対面でしか提供できなかったサービスを非対面でも提供できるようになった」(溝口氏)

今後は、BtoCでのサービス展開のほか、BtoE(法人の福利厚生)、BtoBtoC(各種スポーツジムと提携してのサービス提供)でのビジネスも予定している。また、食事評価の機能だけをアプリ化し、今夏にもフリーミアムモデルで提供する予定もあるそうだ。将来的にはDNA検査や血液検査を無料にすることも予定する。さらには定期宅配なども予定で、溝口氏は「家庭の冷蔵庫をとっていく」と語る。

ダイエットというと、都市伝説のようなモノからFiNCのように科学的な検査をもとにしたものまで幅広く、ともすれば怪しく見られがちだ。だがネット、スマホと結びついて大きく飛躍する可能性を持つサービスは少なくない。

米国では、糖尿病予防プログラムを展開するOmada HealthがAndreesen Horowitzなどから2300万ドルを調達。ダイエット支援アプリのnoomも7億円を調達して話題になった。FiNCでも、事業シナジーのあるCVCを中心にした資金調達に動いているという。「競合は出てくると思っている。どうぞまねして下さいという気持ちだ。僕らは何歩も前に行く。あとはお金だけというところになってきたので、やりがいもある」(溝口氏)


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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。